♰「AIには情報と富の独占、民主主義の脅威となる危険」-生命アカデミー総会に

バチカンで開催された人工知能をテーマにした会議 2020年2月27日バチカンで開催された人工知能をテーマにした会議 2020年2月27日 

 教皇は前日からの軽い不調のため、予定されていた出席者と会見を見送られたため、メッセージは同アカデミー総裁のビンチェンツォ・パリア大司教が代読した。(28日のミサや他の謁見は教皇が通常どおり行われた)

 メッセージで教皇は、「AIなどのテクノロジーの倫理的活用」を希望され、「デジタル技術の発展の中でも、特にAIは今日の時代の変化の中心にあるもの」としたうえで、「この技術革新が、個人や社会生活の様々な側面に関わり、私たち自身や世界に対する考え方、人々の行動や決断をも左右する、その影響」に注意を向けられた。

 そして「デジタル化は、空間・時間・体の感覚を変え、自身の限界を忘れさせると共に、同一化を要求し、異なるものを評価することをより困難にさせます… 社会・経済において、人間は『消費者』という存在に矮小化され、知らないうちに、商業的・政治的目的で、習慣や傾向をめぐるデータをチェックされてしまいます」とAIの負の側面を指摘。

 さらに、「ある人々が、私たちのすべてを把握する一方、私たちは、彼らについて何も知らないまま、批判精神や自由に対する良心を摘み取られてしまう」危険を警告され、そのようにして「情報と豊かさを一部の人々に握らせ、社会の民主主義に重大なリスクをもたらす」不均衡に注意を促された。

 だが、そうした負の側面の一方で、「AIなどの最新技術が与える大きな可能性」に期待を述べられ、これらの技術を「善に用いることのできる一つの資源、一つの神の恵み」とされたうえで、「新しいテクノロジーについては、正しい使用法を伝えるだけでは十分でありません… たとえすぐに利益をもたらさなくても、共通善を忍耐強く追求させるための、広い教育的な努力が必要です」と強調された。

 最後に教皇は、今日の人間と技術の関係をより統合的なものとするために、「人間の尊厳」「正義」「支援」「連帯」を共通の倫理的指標として示された。

(編集「カトリック・あい」)

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2020年2月29日