「人類にとっての一つの敗北、命を守るのは義務」とバチカン
(2019.7.11 バチカン放送)
事故で脳に重度の障害を負い、長年病院での治療を受けていたフランス人男性、ヴァンサン・ランベール氏が、水分と栄養の補給の停止から9日後の11日朝、亡くなった。教皇庁立生命アカデミー(議長・ヴィンチェンツォ・パリア大司教)は、「ヴァンサン・ランベール氏の家族と、医師団、そしてすべての関係者のために祈ります。ヴァンサン・ランベール氏の死と彼がたどった道は、私たち人類にとって、一つの敗北です」とツィートした。
また、バチカンのアレッサンドロ・ジソッティ暫定広報局長は、次のような声明を発表した。
「ヴァンサン・ランベール氏の訃報を私たちは悲しみをもって受け取りました。主がランベール氏を迎え入れてくださるよう祈ります。また、最後まで彼に愛と献身をもって寄り添った、家族の方々をはじめすべての人々に精神的一致を表明します。この痛ましいケースをめぐり、考えを示されてきた教皇の次の言葉を私たちは思い起こし、強調したいと思います。『生命の最初から自然の死に至るまで、命の主は神だけです。命を守るためにできる限りのことをするのは、私たちの義務です。『切り捨ての文化』に屈してはなりません』」。
ヴァンサン・ランベール氏は、2008年、交通事故で脳に重度の損傷を負い、四肢麻痺で10年以上病院で治療を受けていた。彼の病状をめぐっては、「最小意識状態であり、治療の継続が必要」とする両親と、「慢性的植物状態であり、延命処置は本人の意に沿わない」との配偶者の主張が対立。本人が自己の意思を表明するものを残していなかったため、延命治療の是非を問い、長い法廷論争が続いていたが、6月28日、フランスの最高裁判所である破棄院が配偶者の主張を支持する判決を出し、これを受け、7月2日、担当医師団は同氏への水分・栄養補給を停止した。
(編集「カトリック・あい」)