☩「現代の奴隷制度追放へ教会各派のさらなる一致と連帯を」

In new video, Pope applauds ecumenical push against modern-day slavery

In this file photo, Pope Francis holds a sheet of paper reading in Italian “Stop Slavery, let’s pray so that every child can be free and loved by his parents” as he meets participants in the “World Day of Prayer, Reflection and Action Against Human Trafficking”, at the Vatican, Monday, Feb. 12, 2018. (Credit: L’Osservatore Romano/Pool Photo via AP.)

( 2018.5.7 Crux VATICAN CORRESPONDENT Inés San Martín

ローマ発 – 教皇フランシスコは7日、母国アルゼンチンに向けてビデオ放送を行い、その中で”現代の奴隷制度”への戦いの重要性を改めて訴えるとともに、この戦いにキリスト教各派が一致した努力をしていることを称賛した。

 教皇は「奴隷制度は過去からのものではありません。深く根を張り、今日もはっきりと、様々な形で存在しています―人身売買、債務を負わせることを通しての搾取、児童搾取、性的搾取、そして家内労働の強制は、そうしたものの一部です」と現状に目を見開くよう訴えた。

 そして、フランスの最新の統計によれば、現在、全世界で4000万人以上の男性、それ以上に女性や子供たちが奴隷状態に置かれている、というが、「これは恐らく、過小評価された数字です」と指摘。大部分の専門家の見解では、こうした奴隷商売の犠牲者は歴史上、かつてなかったほどの数に上っており、しかも、麻薬売買、武器取引と並んで「最も儲かる」違法”産業”となっている、と述べた。

 現代の奴隷問題についてのフォーラムが5月5日から8日にかけて、コンスタンディヌーポリ総主教ヴァルソロメオス1世の主催で開かれたが、教皇のビデオ放送はこの会議へのメッセージとして出された。ビデオで教皇ははまず、フォーラムに参加したヴァルソロメオス総主教と英国国教会国教会のジャスティン・ウエブリ-・ウエストミンスター大司教に感謝の言葉を述べ、「現代の奴隷制度の犠牲者たちに対する懸念をともに分かち合うことに、心が慰められます」としたうえで、「現在の悲劇的な現実を目にして、このような人間性に対する犯罪の共犯になりたくないなら、誰一人として、自分の責任を放棄することはできません」と強調した。

 教皇は、現代の奴隷制度への戦いの第一歩は、この問題に関する詳しい知識を得る戦略を進め、「苦しんでいる人々を覆い隠すような”無関心のベール”を破る」こと、と指摘。この問題の全体像を把握することを望まない者がいるが、これは恐らく、「彼らがそうした犯罪組織に直接に関係しているために、そのことを表沙汰にしたくないのか、あるいは単に新しい形の奴隷制度から大きな利益を得ているから」であり、また、問題を把握していても公けにしようとしない者もいるが、それは「男性、女性、子供たちを奴隷として売ろう」とする”消費チェーン”の末端にいて、消費者を喜ばせているからだ、と糾弾。「私たちはこうした現実から目を背けることはできません。あらゆる形の偽善を捨て、私たちが問題の一部になっているという事実に勇気をもって立ち向かうように求められています。そっぽを向いたり、無知や無実を装うことは許されません」と訴えた。

  さらに、奴隷制度への戦いの次の一歩について、教皇は、犠牲者のために働くこと、腐敗した人々や犯罪者が刑罰を逃れられないようにすること、を挙げた。ただ、「この問題の深い根、根本原因に対処」しなければ、厳しい罰則を設けるだけで十分な成果は上げることができない、極度の貧困にある国々では、国民は安全や権利の保障を受けられず、容易に組織犯罪の食い物にされてしまう、という問題も指摘した。

 そして、教皇は「組織犯罪と違法な人身売買の犠牲者は、生きる手立てが十分でなく、未来に希望を持てない人々の中から”選ばれ”ています。もっとはっきり言えば、一番貧しい人々、一番底辺に落とされた人々、社会から一番切り捨てられた人々の中からです」と述べ、根本的な問題解決のための答えは、人が成長し続けることのできる機会を造ること―教育から初めて、雇用機会を造り続けることだ、とし、このために求められるのは「勇気、我慢、忍耐力、社会のすべての関係者による共同の、地球的な努力です」と、根本的解決への参加を呼び掛けた。

 教会のこの問題への責任についても触れ、「教会も、この問題で働かねばなりません。他者を奴隷にしてしまうあらゆる種類の不平等、差別に打ち勝てるように、私たちキリスト教徒は皆、この問題解決へ、常により広範な協力を進めるように求められているのです」と努力を強く求めた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2018年5月9日