☩「キリスト教徒のいない中東は、中東ではない」-キリスト教諸教会指導者と祈りの集い

 教皇フランシスコと中東のキリスト教指導者たち、南イタリア・バーリ、サン・ニコラ聖堂 – AP

(2018.7.7  バチカン放送)

  教皇が呼びかけたこの祈りの集いには、正教会のエキュメニカル総主教バルソロメオス1世をはじめ、中東地域のキリスト教諸教会の総主教および指導者たちが招かれた。

 7日朝、教皇は、バーリに到着したバルソロメオス1世はじめ総主教たちをサン・ニコラ聖堂前で出迎え、兄弟的な抱擁を交わされた後、ともに教会のクリプタ(地下聖堂)に降り、聖ニコラスの聖遺物の前で祈りを捧げた。

 教皇は聖ニコラスの聖遺物の前にある、祭壇上のランプに火をともされた。船の形をしたこのランプには、教皇ピオ11世の時代から、カトリック教会と正教会の共通の信仰のしるしとして、唯一の火がともされてきた。聖遺物前で祈った後、教皇と総主教たちは、バーリ市内の海岸通りの広場で、中東の平和のための祈りの集いをもち、多くの市民とともに、若者たちのオーケストラや合唱、また東方教会の聖歌の調べが流れる中で、海を隔てた中東への思いを一つにした。

 集いの中で、教皇は様々な文明が交差する地、一神教の諸宗教の揺籃の地、特に「主がわたしたちを訪れ、そこから信仰の光を全世界に輝かせた地」としての中東に思いをはせられ、「修道生活、古来からの典礼、豊かな宗教美術と神学、偉大な教父たちを育て、霊性の源泉、キリスト者の魂のルーツである、中東の伝統を全力で守らなねばなりません」と述べられた。

 そして、「この輝ける中東の地が、今や、紛争や、暴力、破壊、占領、原理主義、強制的移住、放棄などによって荒らされている」と現状を指摘し、こうした荒廃が「多くの人の沈黙と共犯性のうちに進んでいる」ことを危惧され、さらに、中東からのキリスト教徒たちの流出に深い憂慮を示し、「キリスト教徒は同地域を構成する大切な要素であり、キリスト教徒のいない中東は、中東ではない」と訴えらえた。

 さらに、「キリスト者は世の光」であることを強調され、「歴史の闇に包まれる中でも、キリスト者は祈りと愛の油をもって、希望の火をともし続けるでしょう」と語られた。

祈りの集いの後、教皇と総主教たちは聖ニコラスのバシリカに戻り、対話の時を持った後、バーリの大司教館で昼食を共にした。中東平和のための祈りの一日を終えられた教皇は、総主教たち一人ひとりに深い感謝を述べた後、同日夕方、ローマに戻られた。

 プーリア州の州都、アドリア海に面した港湾都市バーリは、「東方に開いた窓」として、古くからギリシャや中東との交易・交流に大きな役割を果たし、カトリック・正教会の双方から深い崇敬を受ける、3世紀から4世紀にかけてのミラ(小アジア・リュキア)の司教、聖ニコラス(ニコラウス)の聖遺物によっても知られる。こうしたことから、バーリは、正教会の信徒たちの巡礼地でもあり、エキュメニカルな出会いに恵まれた都市となっている。

(「カトリック・あい」が編集)

このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年7月8日