◎教皇連続講話「十戒」①「私たち、特に若者の人生における最大の危険は『平凡』と『小心』」

(2018.6.13 バチカン放送)

 教皇フランシスコは13日、バチカンでの水曜恒例の一般謁見を行われた。謁見中のカテケーシス(教会の教えの解説)で、先週までの「堅信の秘跡」に続いて、新たに「十戒」をテーマにした考察を始められた。

 まず、教皇はマルコ福音書の「金持ちの男」のエピソード(10章17-21節)を取り上げられた。―ある金持ちの青年がイエスに走り寄り、ひざまずき、「永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいでしょうか」と尋ねる。イエスが「殺すな、姦淫するな、盗むな、偽証するな、奪い取るな、父母を敬え」という掟を示されると、彼は「そういうことは子供の時から守ってきました」と答えた。イエスは「あなたに欠けているものが一つある」と言われ、「行って、持っているものを売り払い、貧しい人に施す」ように勧められると、多くの財産をもつこの男は悲しみながら去っていった―。

 教皇は、この青年が発した「永遠の命を受け継ぐには、何をすればよいのか」という問いは「満ち満ちた永遠の命を望む全ての人にとっての挑戦」とされたうえで、「どれほど多くの若者たちが『真に生きる』ことを求めながらも、はかないことにとらわれ、道を誤ってしまうことでしょう」と問いかけ、「私たち、特に若者たちにとって、人生における最大の危険は、(様々な課題に)適応しようとする心の乏しさにあります-『柔和』と『謙遜』ではなく、『mediocrity(平凡)』と『 pusillanimity(小心)』にあるのです」と強調された。

 そして、福者ピエール・ジョルジョ・フラッサーティの「適当に生きるのではなく、生きなくてはならない」という言葉を思い起こしつつ、「今日の若者たちには、健全な意味での『安定を求めない心』『真の人生に飢えた心』が必要」と述べられた。

 また、イエスは出会ったこの若者に「あなたは掟を知っているはずだ」として、十戒の一部を示されたが、そうした基本的な掟を示しながら、「この若者に欠けているものに、たどり着こうとされました」と指摘され、「実際、『持っているものを売り払い、貧しい人に施し、自分に従うように』とのイエスの言葉は、『貧しさへの招き』ではなく、むしろ『真の豊かさへの招き』だったのです」と説明された。

 さらに、「ある人が『本物とコピー品のどちらかを選びなさい』と言われたら、偽物の方を選ぶでしょうか」と問われ、「イエスは代用品を決してお与えにはなりません。お与えになるのは、真のいのち、真の愛です」と話された。そして、イエスは、ご自分が来たのは「律法や預言者を廃止するためでなく、完成するためである」(マタイ福音書5章17節)と言っておられるように、「私たちもまた『自分に欠けているもの』から出発し、『普通の人生を特別なもの』とするために、揺さぶりをかけなくてはなりません」と強調された。

 最後に教皇は、このカテケーシスを通して、「私たちはイエスと手を取り合いながら、モーセの石版をキリスト者として受け取り、古く叡智に満ちた一つ一つの掟を再発見したい」と話された。

(バチカン公式発表文をもとに「カトリック・あい」が編集)

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2018年6月14日 | カテゴリー :