教皇フランシスコは、バチカンで5月1日、水曜恒例の一般謁見を行われ、謁見中のカテケーシス(教会の教えの解説)で、先週に続いて「主の祈り」を考察。今回は「lead us not into temptation(英語公式訳=現在の日本語訳は『わたしたちを誘惑におちいらせず』となっている)の箇所を取り上げられた。
この個所について、教皇は、現在の世界各国の訳は(注:日本語訳も含めて)と言えず、あたかも神が人間の歩みを脅かす誘惑の主役であるような誤解を与えている、とされ、主への嘆願の表現を、例えば「abandon us not when in temptation(誘惑に遭った時、私たちを見捨てないでください)」というように改める必要を改めて示された。
*2017年12月8日付けのイエズス会ロンドンのインターネット・ニュースTabletでは、教皇フランシスコがイタリアのテレビ放送TV2000のインタビューに答え、カトリック教会の祈りの中で最も重要な「主の祈り」にある「non ci indurre in tentazione」 (英語公式訳はこの直訳の『lead us not into temptation』 、日本語公式訳は『わたしたちを誘惑におちいらせず」)は、より正確に神学的な見方に従って、「don’t let me fall into temptation」あるいは「Do not let us into temptation」などとするのが適当、との考えを明らかにされた、と伝えていた。
この箇所をどのように改めるべきかについて教皇は、より正確にこうした神学的な見方に従って、「don’t let me fall into temptation」とするのが適当、とし、フランスの司教団がこのほど主の祈りを見直し、英訳した場合、「Do not submit us to temptation」としていたのを「Do not let us into temptation」と改めたのを「妥当」とされた。
Tabletによれば、現在の主の祈りの言葉は、ギリシャ語訳をラテン語に翻訳したものを元にしており、そのギリシャ訳の元になっているのは イエスが実際に語られていたアラム語(ヘブライ語の古語)だ。教皇庁立グレゴリアン大学のマッシモ・グリリ教授は「ギリシャ語のこの箇所は『eisenenkês』で、文字通り訳すと『don’t take us inside』であり、そのように訳し直すべきだ、としている。