菊地新潟司教の日記から③キルギスへ新潟へ

Laudatosi1601

2016年10月29日 (土)

  この数年、この時期になると、新潟地区の信徒の方々を主な対象に、連続でお話をさせていただいています。新潟地区の主催行事として、「新潟地区信仰養成講座」(参考リンク先:新潟地区信仰養成講座)というタイトルで、連続講座を開いています。スケジュールの都合で、毎年二回のみですが、市内の信徒の方々に、多数参加いただいています。

  もちろん二回程度のお話で、しかも一度が一時間強ですから、その程度で信仰が養成できるなどと甘いことを考えているわけではありませんが、普段、それぞれの小教区で行われている様々な講座を補完する意味で、一年に二回くらいは、司教がお話をする機会を持つこと自体には意味があろうと、信じています。

  今年のテーマは、もちろん先日日本語訳が出版されたばかりの「ラウダート・シ」について。ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、「『ラウダート・シ』に学ぶキリスト者の生きる道」と題して、今日の土曜日と、来週の土曜日(11月5日)に、午後1時半から3時までの予定で、新潟教会のセンター二階を会場に、お話をいたします。来週も、もう一度ありますから、どうぞご参加ください。
  今回のお話の肝は、「ラウダート・シ」は単に環境問題について警告を発している文書なのではなく、キリスト者が、ひいては人間が、どのように生きるのがふさわしいのかを説いている文書である、という点です。確かに環境問題の様々な課題を教皇様は取り上げていますが、同時にどういった課題を、技術で解決するのでは足りないとも言います。

 冒頭部分にこう記されています。

「罪によって傷ついたわたしたちの心に潜む暴力は、土壌や水や大気、そしてあらゆる種類の生き物に見て取れる病的徴候にも映し出されています。(2)」

  つまり環境の破壊は、わたしたち人類がしばしば神を裏切り続けてきたことによって心に蓄積し続ける暴力が、そのまま反映している現実であると指摘するのです。従って、小手先のテクノロジーに頼って解決を図っても、本当の解決は得られない。環境問題は、究極的には、人類の回心なしには成し遂げられないのです。

 加えて、環境問題は、結局は平和問題でもあると指摘します。すなわち、わたしたちが考える平和は、例えば聖ヨハネ23世教皇の、『地上の平和』の冒頭にこう記されています。

「すべての時代にわたり人々が絶え間なく切望してきた地上の平和は、神の定めた秩序が全面的に尊重されなければ、達成されることも保障されることもありません」(「ヨハネ23世地上の平和

  神は無秩序にこの世界を創造されたのではなく、ご自身のよしとされる秩序に基づいて、その秩序を持って世界を創造されています。その秩序が保たれている状態が平和です。戦争や殺人や対立など生命の尊重をないがしろにする行動は、当然この神の秩序を乱しているので、平和を乱しているのです。同じように、被造物を混乱に陥れる環境の乱れも、同じように平和を乱しているのです。それぞれの人ができる限りで、個々の課題に取り組むことは大切ですが、同時に教会共同体は、世界の平和を乱している、つまり神の秩序への挑戦である様々な課題に広く取り組まなくてはならない。教会がシングルイシューにのみ固執することは出来ない。だから環境問題にも取り組むのだと指摘されています。 

2016年10月27日 (木)キルギスの首都ビシュケクへ

 先週の金曜日から日曜の朝にかけて、中央アジアのキルギス共和国(キルギスタン)の首都ビシュケクを訪問する機会に恵まれました。旧ソ連の一部であったキルギスは、周囲をカザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、中国に囲まれている内陸国です。日本からは、モスクワで乗り換えたり、中国国内を乗り継いだりして行くことができますが、今回はターキッシュ航空でイスタンブール経由。日本からイスタンブールまで11時間。そしてイスタンブールからビシュケクまで4時間強。さらに今回は前後の予定に合わせるため、早朝に羽田を発ってソウルに行き、ソウルからターキッシュの昼便でイスタンブールへ飛びましたが、行きも帰りも二日がかかりました。
 目的は、私が責任者を務めるカリタスアジアの主催する、中央アジア地域のカリタスのワークショップに出席するためです。カリタスアジアの中央アジア地域には、モンゴル、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンにカリタス組織が存在しています。その多くがまだできたばかりで、正式な国際カリタスのメンバーにはなっていませんが、これからが期待される組織ばかりです。今回はビザの関係でモンゴルの代表が参加できませんでした。ちなみに日本のパスポートはビザなしで入国することができました。
 キルギスの首都ビシュケクは周囲を高い山に囲まれた平野にあり、現地で働く司祭によればトレッキングなどで訪れる観光客が多いとのこと。550万人ほどの全人口の中でカトリック信者は500人ほどと統計にあります。小教区は3カ所。そして国全体の宣教はイエズス会に任されていて、全国に司祭は5人。そのうちのひとり、ヤネス・ミハエリチック神父が使徒座管理者に任じられています。この方は20年ほど前まで上智大学でロシア語を教えておられたとのことで、日本語がペラペラ。現在はキルギスの大学で日本語を教えておられるとのこと。この7月にそれまで知牧区長だったメスマー司教が病気のため61歳で急逝し、そのために75歳になるミハエリチック神父が管理者に任命されています。全人口の7割がイスラム教。残りの大半はロシア正教。カトリック教会にとって、なかなか厳しい環境です。

 市内のホテルで行われたワークショップは、現在カリタスアジアが2017年から3年間の戦略計画と活動計画を策定するためにアジア全域で進めているプログラムの一環です。まだカリタスの活動が始まったばかりの地域ですが、将来はこうありたいという理想について、そしてその挑戦にどう答えるかについて、熱い議論が交わされました。
 

シリアの和平のために

 教皇様は混乱が続くシリアの和平のため、しばしばメッセージを発表されてきました。さらにはシリア難民の受け入れについても、各国に寛容な態度で臨むように要望され、またご自分から具体的に、昨年の4月16日にギリシアのレスボス島を訪問した際には、シリア難民の三家族12人を一緒にローマへ連れ帰ったりしてきました。

 国際カリタスも、世界中のカリタスや司教団に呼びかけて、「シリアに平和は可能だ」と題した和平を求めるキャンペーンを現在も行っています。昨年の7月5日にこのキャンペーンに対してビデオメッセージを寄せた教皇は、その中で次のように呼びかけました。

 「市民の苦しみの一方で、大量の資金が武器に費やされている。・・・平和を説く国々の間には、武器を供給している国もあり、右手で人を慰めながら、左手で人を打つ人をどうして信用することができるだろうか。・・・この『いつくしみの特別聖年』に、無関心に打ち勝ち、シリアの平和を力強く唱えよう」

 このたび教皇様は、10月31日にスウェーデンで行われる超教派の祈祷集会に参加され、そこでシリアの和平のために祈りを捧げられます。この祈祷集会は、宗教改革500年を記念するもので、初めてカトリックとルーテル派の指導者が一緒に祈る機会となります。教皇フランシスコとともに、ルーテル世界連盟(LWF)議長のムニブ・A・ヨウナン博士、LWF総幹事のマルティン・ユンゲ博士が祈りを捧げます。

 シリアの和平のためにキャンペーンを続けている国際カリタスも、ミシェル・ロワ事務局長をはじめとした代表団をこの祈祷集会に派遣します。同時に国際カリタスでは、全世界のカリタスメンバーを通じて、多くの人がこの10月31日に一緒に心を合わせて、シリアの和平のために祈ることを呼びかけています。

 是非、10月31日、またはその前後に、個人で、共同体で、教皇様と心を合わせて、シリアの和平のために祈りを捧げてくださるようにお願いいたします。

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