漆原JLMM事務局長の共に生きるヒント ④「本音を伝えあうこと」

 

 東日本大震災からもうすぐ6年。

 発生が2011年の3月11日、被災地では16日に「仙台教区サポートセンター」の設立が決定し、私もJLMMのスタッフとともに19日に仙台に入り、センターの立ち上げやニーズの調査をお手伝いさせていただきました。その時からほぼ毎月仙台に通い、その後活動の中心が福島に移ってからも月2回ぐらいは東北の被災地での活動を続けさせていただいています。

 一昨日は仙台を訪ね、サポートセンターの6年前の設立時のスタッフが集合し、発災直後から支援活動を開始するまでの様々な動きを振り返りました。その中から教訓を引き出し、今後起こりうる災害時に支援活動を立ち上げる際に活かすためです。

 思い起こせばセンター立ち上げの時期は電話は鳴りっぱなし、昼夜問わず全国から駆けつけてくるボランティア希望者の対応に追われ、私たちスタッフも10日間全く風呂にも入れない状況でした。

 街にガソリン、食料、物資が不足し、インフラも壊滅的な状況下にありながら、みんなで精いっぱい力を合わせて支援活動に取り組んだことがあらためて思い起こされました。その一方で、スタッフの中にも6年経った今だから話せる、聞けるといったこともありました。確かに、目まぐるしく変化する日々の状況や緊急事態の中での特殊な精神状態の中では気づかない、意識できない、表現できない感情や思いというものがあったはずです。

 被災者、避難者の方々とお話をしていても、震災以降もう4、5年以上のお付き合いをさせていただいている方々からも今になってようやくうかがうことのできるお話というものがあります。人間関係がつくれた後だからうかがえるということもありますし、その方の心の痛みや苦しさが意識化され言葉になり、表現されるまでに長い時間が必要なこともあるのだと思います。

 私自身にも今、支援する側の人間としての反省が心の中で沸き起こってきました。6年前、被災地支援の拠点づくりのために、被災地各地の教会の建物を拝借して事務所にしたり支援物資を保管したりボランティアの宿泊スペースにさせてもらったのですが、その時の地元の教会の人たちの気持ちはどうだったのだろうか。かなり我慢をさせてしまったはずだ、という思い。サポートセンターが設置された元寺小路教会の建物の中を「安全靴でガチャガチャと音を立てながら走り回っていた自分が、地元の教会の方にとってはご迷惑だったかも知れず、申し訳なかった」と、元寺小路教会の信徒の方に、今回初めてお伝えすることができました。

 今までうっすらと、しかし消えることのなかった思いを、6年経ってやっとお話できました。

 そして、被災地で支援を受け入れる側の方々が、実際には当時どのような思いでおられたのかを伺い、多くの方々から提案を聞かせていただきました。これも6年経った今だから聞ける話かもしれません。同時に、被災された方々が自分たちの気持ち、不満、苦情や要望を伝えられるような環境やムードを、私たちがつくり、促していたか。そもそも支援する者が、積極的にお聞きする姿勢や態度でいたのかを振り返り、反省したいと思いました。

 これからも、支援する側、される側という関係を超えられない場面でこそ、対等な関係を目指していきたいと思います。(2017年2月26日)

(漆原比呂志=うるしばら・ひろし=日本カトリック信徒宣教者会(JLMM)事務局長)

***JLMMについて***

 JLMM は日本カトリック司教協議会公認団体、国際協力NGOセンター(JANIC)正会員で、主にアジア・太平洋地域にレイミッショナリー(信徒宣教者)を派遣しています。派遣されるレイミッショナリーは、派遣地において関わる人々とともに喜びや悲しみを分かち合い、地域の人々に向けたこどもの教育、衛生教育、栄養改善、女性の自立支援などの活動を実施しています。1982年の設立以降、アジア・太平洋、アフリカ諸国16か国に100名以上のレイミッショナリーを派遣されました。現在はカンボジアと東ティモールに3名を派遣しています。

 JLMMでは毎年、派遣候補者を募集しています。賛助会員としてのご支援やご寄付をお願いいたします。またカンボジアスタディツアーやチャリティコンサートの企画、活動報告会やカンボジアハンディクラフト販売にご協力いただけるグループや教会を募集しております。事務局(jlmm@jade.dti.ne.jp)までお問い合わせください。

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