・Sr.石野の思い出あれこれ ㉑ローマの修道院生活の日々…シスターたちの無事を祈る

 一日の日課はきちんと決まっていて、鐘が時を告げてくれる。だから、だらだらと過ごす時間はない。それでも、昼食後には午睡の時間、夕食後にはリクレーションの時間と、緊張から解放されてリラックスする時間があった。

 夜のリクレーションは楽しかった。冬はサロンで、夏は屋上で皆で円陣をつくって簡単なお縫物をしながら、一日を振り返っていろいろ話しあったり、小話や
笑い話が得手な人たちが毎晩いくつかをご披露してみなを笑いに誘ったりした。

 どんなに楽しく笑い興じていても、就寝の鐘が鳴るとピタッとやめて大沈黙に入る。40人くらいの志願者が(準修練期の私たちは人数が少なかったので、大部分の時間を志願者といっしょに過ごしていた)わいわいがやがや騒いでいるのに、鐘の合図とともに沈黙に入るのは、実に気持ちがよいものだった。

 志願者の寝室は大きな部屋で、一人一人のベッドがカーテンで仕切られていた。当番の志願者がマリア像の前で「イエズスの御母聖マリア、われらを聖ならしめたまえ」と、大きな声で100回唱えるうちに、ほかの志願者たちは皆、ベッドに入っていなければならない。唱え終わると電気は消され深い、深い沈黙。

 昼食の後は午睡をする代わりによく散歩にも行った。ローマは古代キリスト教に関係のある名所旧跡が豊かだ。修道院を出て西の方に15分も歩くと、ローマにある四大聖堂の一つで、聖パウロの遺体が保存されているといわれる聖パウロ大聖堂がある。また反対方向におしゃべりをしながらゆっくり歩いても25分くらい行くと、静かな森の中に有名なトゥレフォンターネがある。

 聖パウロが斬首されて殉教した場所といわれている。トゥレフォンターネとはイタリア語で三つの泉という意味。古くからの言い伝えによると、斬首されたパウロの頭は三回、地面にバウンドした、そして、その場所から泉が湧き出た。それで、この地のことをトゥレフォンターネと呼ぶとのこと。

 今は、泉は大理石で覆われていて、見ることはできない。覆っている大理石に、聖パウロの頭の彫像が刻まれている。

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 多くの楽しい思い出を私の心に刻んでくれた懐かしいローマの修道院も、今は新型コロナウイルスの脅威にさらされている。ローマからの便りによると、シスターたちは全員無事、もっぱら修道院の中に閉じこもっているとのこと。一日も早い終息を心から祈るばかりです。

( 石野澪子=いしの・みおこ=聖パウロ女子修道会修道女)

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2020年3月30日 | カテゴリー :