「15年戦争」と呼ばれることもあった「近代日本が戦い続けたアジア太平洋における戦争」に敗北し、米英仏ソ連合国の軍門に下った時、男どもは震え上がった。
「占領軍は日本民族を、二度と再び平和を乱す軍国主義に陥らないようにと、改良を実施するだろう。日本男子は去勢され、日本の女子はアメリカの白人男子の精液で人工授精されるのだ」との噂が流れた。
他方、「被占領地化する日本国内では、大和民族の純潔を護るためにと、成年女子に青酸カリが配布される」とささやかれた。占領軍兵士に弄ばれないためであった。
だが占領軍の兵士は「文明のメッセンジャー」であった。清潔な軍服を身にまとい、満面の笑顔で群がる日本の子供らにチュ-インガムを配り与えた。NHKのラジオ放送は、平川…なんといったっけ…タダイチ先生だったかな… の英語会話が人気番組になり、「カムカム エブリボディ…」と口真似したものだ。
それから幾星霜、英語学習の需要は再燃しているようだ。あたかも令和2年の今年は東京オリンピックの年だ。観光需要に対応するためである。「国家主導」というよりは、いわゆる「グラスルーツ」的な振興である。
それだけ日本国民の国際化が自発的に進んできたということだろう。
(2020. 1. 30記)
(三輪公忠=みわ・きみただ=上智大学名誉教授、元上智大学国際関係研究所長)