・三輪先生の時々の思い ⑪権力の座が男性に与える魅力と危険性

 たしか数日前のNewYorkTimes、アメリカ大統領トランプ氏が民主党が連邦議会に諮る弾劾決議に関して、「トランプがなぜ欠陥だらけに見えても、それなりのも区民的支持を維持できているのか」について、心理学的というか、一応の説得力のある論説を載せていた。昨日10月29日付けの日本経済新聞にも、トランプ氏の権力基盤について、似たような記事があった。

 ”Sovereign masculinity”-学界でどのような日本語になっているのか、詳らかでないが、「最高権力者なるがゆえに体現して見える、並び無き魅力的な男らしさ」とても言おうか。それがアメリカ大統領の責務をトランプに付与している権力基盤、つまり、超法規的な権力の根源だ、と言う。

 男性特有の暴力的言動すらが、「男性ホルモン、テストステロンの一大効果」の一つである「即断即決」ゆえに是認され、拍手で迎えられたりする、と言うのである。

 中国との貿易摩擦においても、「強硬」な姿勢こそが、トランプ氏の人気に貢献する。これが彼の”Sovereign masculinity”として大衆に迎えられ、アメリカの民主主義政治は運行されている、と見ることができるのだ。

 ムッソリーニは「大衆は羊の群れである」と言った。差し当たって、今すぐアメリカ合衆国がどうなる、というのではない。言いたいことは、一介の政治家であろうとも、最高権力の座に登り詰めれば、風の吹き回しで、とんでもない独裁者になってしまうかもしれない、ということだけである。

(2019.10.31記)

(三輪公忠=みわ・きみただ=上智大学名誉教授、元上智大学国際関係研究所長)

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2019年10月31日