「『敗戦』と言え」という人がいる。
「多大の人的物的犠牲を払った無謀な開戦の結果を直視せよ。誤魔化しを許してはならぬ。責任の所在に頬冠りするな」と叱責するのである。
しかし、「終戦」にはそれなりの意味合いがある。
「敗戦」は事実であるが、「終戦」にはこの詞でなければ言い表せない、それなりの含意がある。交戦状態に終止符を打ったのである。敗戦状態にあった国際紛争を終結させたのである。国家の最高意思決定の結果であった。
その意味で「『終戦』と言うな、『敗戦』と言え」という主張=提言は、「終戦」という詞の重要な含意を見落しており、受け入れることは出来ないのである。
(2019・8・15記)
(三輪公忠=みわ・きみただ=上智大学名誉教授、元上智大学国際関係研究所所長)