・2月の”性的虐待”全世界司教協議会会長会議受け、日本はようやく全国の司教にアンケート

(2019.6.26 カトリック・あい)

 日本カトリック中央協議会が25日発行した会報7月号によると、 5月9日の定例常任司教委員会で、中央協議会事務局の「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」に策定を求めていた「児童性虐待に対応」るための過去の事例と現在の状況についてのアンケート案を審議、正式なアンケートとして全国の各教区司教に送付し、6 月 30 日までに回答をもらうことを決めた。具体的なアンケートの内容は明らかにされていない。

 聖職者による性的虐待問題がいまだに世界中で問題となり、抜本的な信頼回復への手立てが思うように進まないこと深刻に受け止めている教皇フランシスコは今年2月、全世界の司教協議会会長を招集して抜本的な対応について協議を求めた。その結果を受けて、教皇が各国の司教協議会に聖職者による性的虐待・隠ぺい防止の新規範の策定・実施を求める自発教令を出され、米国など主要国の司教協議会で新規範の決定するなど、具体的な対応が始まっている。

 同会議に日本を代表して出席したのは、高見三明・司教協議会会長だったが、帰国から2か月後の4月に東京で開かれた「施設内虐待を許さない会」主催の「カトリック神父の子どもへの性虐待! 日本でも」と題する集会に参加、その席で、文芸春秋3月号の調査報道記事「カトリック神父『小児性的虐待』を実名告発する “バチカンの悪夢”が日本でもあった!」で実名を明らかにしていた性的虐待被害者に面前で謝罪するとともに、国内の実態調査を全国16の司教区で開始することを決めたことを明らかにしていた。

 高見会長は当時、「世界で起きているさまざまな性的虐待に教会は本来立ち向かっていかなければいけない。世論を高め、専門的な知識を結集して、改善に取り組みたい」とも語っていたが、いまだに一般信徒を含む関係者にはそのような決意を示し、協力を求めるようなメッセージは届いていない。加えて、「全国16教区で開始する」としていた司教対象のアンケートは今月末期限で回答を待っている段階だ。

 そもそも、日本の精神風土で、被害者が自ら相手を特定して名乗り出るということは、それが実名は公表しない、という条件付きであっても、極めて難しい。文春で実名を明かして訴えた被害者は例外中の例外といえるだろう。そのような中で、どれほど意味のある、真の実態を把握したアンケート回答がえられるのだろうか。

 司教協議会では、米国などで聖職者による未成年性的虐待問題が噴出し始めた2002年から二度にわたって、被害の実態調査をしているが、その結果は一般に公表されたとは聞いていない。被害の報告があったとされているが、教会や修道会での対応などは、いまだに明らかにされていない。そして、今回もようやくアンケートの締め切りが今月末だ。教皇が全世界の司教協議会に求めている性的虐待・隠ぺい防止の新規範を日本がまとめるのはいつのことになるのだろうか。

 このような対応の遅さの背景には、関係者の「事を荒立て、余計な不安と動揺を信徒に与えたくない」という”隠蔽”体質と、「日本社会では欧米のように同性の幼児や少年に対する性的虐待は極めてまれ。教会内部ではほとんどあり得ない」という安易な思いがあるように感じる。

 では、同性の幼児や少年に対する性的虐待でなければ、それ以外の性的な不適切行為には目をつぶってもいいのか。そうではないはずだ。聖職者の独身制は教会法にも規定されており、その「独身制」は単に結婚しなければいい、というものではなく、貞潔を守らねばならないことを意味する、厳しいものだ。

 そのような”聖職者”が信徒の教会への信頼を損なう例は、日本でも少なくないと思われる。実際に筆者が確認している限りでも、そのような”聖職者”が二人いる。そのうちの一人は、神学校に在籍中に不適切行為を繰り返し、何度か警告を受けても辞めることがなかったため、所属教区から絶縁されたものの、他教区の司教から「俺のところに来い。面倒を見てあげる」と言われて(本人から直接筆者が聞いた)その教区に移り、叙階に至ったものの、またしても、不適切行為を繰り返し、後任司教が頭を抱えている、と聞いている。

 教皇の強い思いをしっかりと受け止め、すみやかに真摯な対応を取ることが望まれる。

(「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年6月26日