・香港での民主化デモの影響恐れ、当局が”愛国会”加入拒む聖職者への弾圧を強化(BW)

(2019.10.1 BitterWinter 

 香港の民主主義を推進するデモによってカトリック教徒が愛国教会加入を拒む機運が高まるのを恐れ、中国共産党は規制を広めている。

 香港のカトリックの聖職者の何人かは、6月の逃亡犯条例改正案の反対運動から発展した民主主義推進運動を積極的に支持している。香港教区のヨセフ夏志誠(ハー・チーシン)補助司教もその一人。運動の精神的指導者とみなされている。長く人権 擁護運動に関わってきた香港名誉司教のヨセフ陳日君(ジェン・ジェキュン)枢機卿は9月に香港の人々の人権擁護のために3度の祈祷会を開いた

 枢機卿はフェイスブックに「今この瞬間、私たちの自由、尊厳、そして正義が、ここ香港で奪われつつあります。3つの教会を巡礼し、悲しみの意味を理解する聖母に、この苦難の旅を共にし、とりなしてくださるよう祈りましょう」と書いている。

9月15日、カルメル山聖母教会で香港のための祈りを主導する陳日君枢機卿。(写真はUCAnewsから)9月15日、カルメル山聖母教会で香港のための祈りを主導する陳日君枢機卿。(写真はUCAnewsから)

 中国共産党 は、香港の抵抗の気運が党の管理・監督下にある 中国天主教愛国会 加入を拒む良心の反対者の闘志に火をつけるのを恐れ、彼らを強制的に統制する取り組みを強化している。何人かの司祭は逮捕の標的になり、カトリックの礼拝所の閉鎖が以前よりも頻繁に起きるようになった。

*バチカンの指針は無視され、”愛国会”加入拒否の司祭が地下潜伏を強いられる

 中国南東部、江西  の余江教区の教会員によると、中国天主教愛国会加入を拒んだ司祭は、9月の初め、政府が「中国本土の カトリック地下教会 が香港のカトリック教会と結びつくのを防ぐ」ため、彼の逮捕を計画しているという知らせを受けた。

 以来、彼は潜伏せざるを得なくなった。携帯電話を使えず、自宅にも戻ろうともしない。かなり以前から国から迫害を受けるのを予期していたかのようだ。かつて会衆に「備えていなさい」と語ったこともあった。「いつか私が自宅軟禁下に置かれても、信仰を守り、ロザリオを唱えて祈りなさい」と。

 先にバチカンが中国国内の聖職者に示した指針 は、良心から中国天主教愛国会加入を拒んだ司祭と司教の選択は「尊重される」べきだと述べているが、中国共産党は彼らに対する迫害を止めようとしていない

 江西省鷹潭  轄の  にあるカトリック教会の責任者が中国天主教愛国会加入を強いられたのも、香港が一因だ。8月13日、政府当局は、彼の逮捕と村内の全カトリック教徒の生活保護取り消しをちらつかせ、加入合意書への署名を迫った。責任者は役人に、中国天主教愛国会に加わるよりも逮捕されたほうがましだと言った。

*陳枢機卿から招かれた香港訪問を司祭が禁じられた

  地下教会の司教や司祭を中国天主教愛国会に加入させ、本土と香港の教会連携のあらゆるの試みを妨害するため、中国政権は彼らの香港訪問も禁止している。

 余江教区のある聖職者は、陳枢機卿から8月に香港の教会活動参加の招きを受けていたことをBitter Winterに話した。しかし、抗議運動が起こり、当局の統制が強化されたために、彼は行けなくなってしまった、という。

 「陳枢機卿は中国本土の私たちの地下教会に大きな懸念を示しています。おそらく、彼は香港の苦境を知らせようと私を呼んだのでしょうが、中国共産党は私が旅行することを禁じています。どうしようもありません」。聖職者は残念がった。

 地元の教区民によると、7月から8月にかけて、余江教区で、少なくとも5か所のカトリック集会所が、中国天主教愛国会加入を拒んで強制的に閉鎖されたという。地域のある司祭は、政府がカトリック教徒を無理やり天主教愛国会に加入させようとしているのは、さらに統制を強めて、外界との接触を絶たせるためだと言った。

*”愛国会”の教会も活動が監視されている

 「政府は中国天主教愛国会の教会内にスパイを派遣して、特に司祭が説教で何を言っているか、どのような活動をしているかを監視してい中国のあるカトリック教会(写真はUCAnewsから)ます」と司祭は説明した。「毎日、何時に出かけ、何時に戻り、何日間旅行に出ているか、その目的は何か。すべてが政府に報告されています。基本的に、国は司祭について何でも知っている状態です」。

 この司祭は、中国天主教愛国会が非常に官僚的で、バチカンとは別ものであり、カトリック教会のヒエラルキーに違反していることも付け加えた。「愛国会が神の承認を受けることはないでしょう。私たちは神を信じ、神に承認されています。もし、愛国会に加われば、私たちの神への信仰は意味を失います」と司祭は説明した。

*海外の人権団体に「”良心的拒否者”支援の声をもっと上げて欲しい」

 また、彼は、海外の人権擁護団体が、中国共産党に譲歩して沈黙せず、中国本土に暮らす カトリックの良心に従う「拒否者 」に代わって、はっきりと声を上げることに希望した。「そうすれば、中国で信仰を守っている私たちは、政府に抵抗できる力を持っている、と信じることができます」。

 ある余江教区の信徒は「カトリック教会は、自分たちと中国天主教愛国会の間に一線を引き、迷わないようにしなければならない」と語った。

 「中国天主教愛国会は単なる政治の道具です。宗教団体ではありません。なぜなら共産党の管理に従っているからです。愛国会にとって、党が第一なのです」と彼は言った。「中国共産党は国際的に愛国会の存在を利用し、中国に信教の自由があるかのように見せかけて世界を欺いています」。

中国のあるカトリック教会(写真はUCAnewsから)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日8言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

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2019年10月2日