・言論NPO 第14回日中共同世論調査」結果

(2018. 10.9 言論NPO)

調査の概要

日本の言論NPOと中国国際出版集団は、日中の両国民を対象とした共同世論調査を今年9月に実施した。この調査は、最も日中関係が深刻な状況だった2005年から毎年継続的に行われているものであり、今回で14回目となる。調査の目的は、日中両国民の相互理解・相互認識の状況やその変化を継続的に把握することにある。

日本側の世論調査は、全国の18歳以上の男女を対象に9月1日から22日にかけて訪問留置回収法により実施され、有効回収標本数は1000である。回答者の性別は、男性48.6%、女性51.4%。年齢は、20歳未満が2.5%、20~29歳が11.8%、30~39歳が14.8%、40~49歳が17.4%、50~59歳が14.6%、60歳以上が38.9%。最終学歴は、中学校以下が6.8%、高校卒が48.3%、短大・高専卒が20.8%、大学卒が22%、大学院卒が0.9%である。

これに対して、中国側の世論調査は、北京・上海・広州・成都・瀋陽・武漢・南京・西安・青島・鄭州の10都市で18歳以上の男女を対象に、8月27日から9月11日にかけて調査員による面接聴取法により実施された。有効回収標本は1548である。回答者の性別は、男性49%、女性51%。年齢は、20歳未満が2.5%、20~29歳が20.9%、30~39歳が21.6%、40~49歳が26.7%、50~59歳が21.3%、60歳以上が6.6%。最終学歴は中学校以下が12%、高校・職業高校卒が32.8%、専門学校卒が31.3%、大学卒が21.9%、ダブルディグリーが0.8%、大学院卒が0.5%である。

なお、この調査と別に、言論NPOと中国国際出版集団は有識者アンケートを世論調査と同じ内容で実施した。専門家や知識層の見方と世論調査結果を比較することで、全体的な日本人や中国人の認識を補完しようと考えたからである。日中両国の有識者の多くは、相手国に関する情報取得を自国のメディアだけに依存しておらず、実際に渡航したり、相手国の友人や知人から直接的な情報を得ているなど、一般世論とは異なる傾向がみられる。

日本ではこれまで言論NPOが行った議論や調査に参加した国内の企業経営者、学者、メディア関係者、公務員など約2000人を対象に9月5日から10月6日にかけて世論調査と同内容のアンケートをメール送付して回答を依頼し、うち404人から回答を得た。回答者の性別は男性86.4%、女性11.6%。年齢は、20歳未満が1%、20~29歳が2.2%、30~39歳が5.2%、40~49歳が11.6%、50~59歳が26%、60歳以上が52.5%。最終学歴は、中学校以下が0%、高校卒が3%、短大・高専卒が2%、大学卒が59.9%、大学院卒が31.4%である。

中国側の有識者調査は、10月9日現在、零点研究コンサルティンググループが調査中である。
※ここでの数値は小数点第二位以下を四捨五入しており、また無回答を除いているため、合計が100%にならない場合がある。


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日中両国民の相手国に対する印象

 中国人の日本に対する印象の改善は進み、日本の印象を「良い」とする人は昨年から11ポイント増加して42.2%となり、2005年の調査開始以降で最も高い数値となった。これに対して、「良くない」が11ポイント減少し、56.1%にまで下がっている。 日本人の中国に対する印象はわずかに改善しているが、中国に「良くない」印象を持っている人は86.3%と依然9割近く、対照的な状況となっている。中国に「良い」印象を持っている人は13.1%にすぎない。

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相手国に対する印象の理由

 日本人が中国に「良い」印象を持つ理由で最も多いのは、「観光客の増加や民間交流により中国人の存在が身近になっているから」だが、昨年からは15ポイント減少している。昨年からの増加が目立ったのは、「中国は国際社会で世界の大国として行動し始めたから」で10.4%から25.2%に増加している。 中国人が日本に「良い」印象を持つ理由は、「日本は経済発展を遂げ、国民の生活水準も高いから」が51.6%で最も多い回答となった。昨年最も多かった「日本人は礼儀があり、マナーを重んじ、民度が高いから」は61.8%から49.2%に減少したが、依然半数近くがそれを選んでいる。「日本は自然が風光明媚で温泉等の観光地が多いから」も45.3%と根強い。ただ、「日本製品の質が高いから」は44%で昨年の53.5%から減少、「日本の技術は先進的だから」も25%と、昨年の44.9%を大きく下回るなど日本の技術力の高さを好印象の理由とする回答は減少傾向にある。

一方、日本人が中国に「良くない」印象を持つ最も大きな理由は、「尖閣諸島周辺の侵犯」の58.6%である。これに次ぐのは「国際的なルールと異なる行動をするから」の48%で昨年を8ポイントも上回っている。このほか、昨年を上回ったのは「中国の大国的な行動が強引で違和感を覚えるから」の36.6%(昨年34.4%)、「軍事力の増強や不透明さが目に付くから」の33.5%(昨年30.4%)である。

中国人が日本に「良くない」印象を持つ理由は、その多くが昨年より減少している。「歴史をきちんと謝罪し反省していないから」で5割を超え最も多い回答となったが、昨年からは13ポイント減少した。これまで上位にあった「尖閣諸島の国有化」や「日本が米国その他の国と連携して中国を包囲しようとしているから」を理由として挙げる人もそれぞれ12~13ポイント減少している。

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昨年から両国の国民感情は変化したか

 両国国民の相手方への感情が、昨年からどのように変化したのかを尋ねると、日本人は「変化していない」が40.3%と最も多く、「わからない」が37.6%で続いている。 一方、中国人では、「悪化した」が49.7%から26.4%へと23ポイント減少するとともに、「好転した」が20.4%から40%へとほぼ倍増しているなど、改善傾向が顕著である。

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日中関係の現在と将来

 両国民の間に、現状の日中関係に対する判断で改善傾向が顕著となり、いずれも「悪い」が半数を下回った。これは尖閣諸島問題以前の傾向である。特に中国の改善が際立っている。 現在の日中関係を「悪い」と判断している日本人は39%となり、8年ぶりに4割を切る水準となった。中国人では「悪い」という判断が昨年からは19ポイントも減少して45.1%となった。

この一年間の日中関係の変化については、両国民ともに「特に変化していない」が最も多い。ただ、「良くなった」との見方は、日本人では1割程度にとどまっているが、中国人では昨年からほぼ倍増して30.2%と3割を超えている。

今後の日中関係の見通しについても、日本人では「良くなっていく」と見ている人は15.6%と1割台だが、中国人では昨年から10ポイント増加して38.2%と4割近くになるなど、日本人と比較すると楽観的な見通しを持っている。

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日中関係の発展を妨げるもの

 日中関係の発展を妨げるものでは、依然として「領土をめぐる対立」を挙げる人が日中両国で最も多いが、いずれも昨年を下回っている。中国人では、それに続くのは「経済摩擦」、「国民間に信頼関係がないこと」などだが、昨年と比較すると、「政府間に信頼がないこと」を課題に挙げる人は減少し、国民間に信頼がないことを障害と認識する人が昨年よりも増加している。昨年2番目に多かった「日本の歴史認識や歴史教育」を挙げる回答は34.8%から25.2%へと10ポイント減少している。 日本人では、「政府間」や「国民間」に信頼関係がないことを挙げる人がそれぞれ4割近くあり、それぞれ昨年よりも上回っている。

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日中関係向上のために有効なこと

 日本人は、日中関係向上のために有効だと考えているのは、「政府間レベルの関係強化」が39.1%で最も多い。これに「首脳間交流の活発化」を加えると6割が政府レベルでの関係強化を期待している。中国も同じ傾向があり、この2つを加えると57.1%で、特に首脳外交の効果に期待が高まっている。日本ではこれに加えて、「尖閣問題の解決」が28.7%で昨年より増えており、「歴史問題での和解」が25.5%で続いている。中国では、最も多いのは、「歴史問題の和解」の42.8%で昨年よりも増加している。これに対して尖閣問題については30.6%と、昨年よりも11ポイント減少している。民間レベルでの交流を有効だと考えているのはどちらも1割だが、中国で昨年よりも期待が高まっている。

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世界経済の安定した発展と東アジアの平和のため、新たな協力関係を構築すべきか

 日本人の5割、中国人の6割が、世界経済の安定した発展と東アジアの平和を実現するために、日中両国はより強い新たな協力関係を構築すべきだと考えている。ただ、その割合は両国で減少している。

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日中関係の重要性をどう見ているか

 日中関係を「重要」だと考える人は両国で7割を超えている。特に中国でそう思う人が昨年よりも増加し、回復傾向が見える。 「重要」と考える理由では、日本人の5割以上が「アジアの平和と発展には日中両国の共同の協力が必要だから」を選んでいるが、中国ではこれを選択したのは3割程度である。中国人では「隣国同士だから」や「中国の重要な貿易相手だから」と考える人が多い。

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日中関係と対米関係の重要性、親近感

 日中関係と対米関係の重要性を比較すると、日本人、中国人ともに「どちらも同程度に重要」と考える人がそれぞれ半数程度で最も多い。同時に、両国で「対米関係の方が重要」と考える人が減少している。ただ、中国では、「日中関係の方が重要」が昨年よりも増加したのに対して、日本では4.5%程度と低迷している。 また、日中双方に対する親近感と米国に対する親近感を比較すると、日本人では「米国により親近感」を覚える人が46.9%と、昨年よりは減少したがまだ半数近い。中国人では「どちらにも親近感を感じない」という人が半数近い。ただ、米国に対する親近感が減少し、日本に対する親近感が昨年比ではわずかに増加している。

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日中関係と対韓関係の重要性、親近感

 日中関係と対韓関係の重要性を比較すると、両国民ともに「どちらも同程度に重要」が昨年同様半数程度で最も多い。日本人では「日韓」よりも「日中」を重要視する人が多いが、中国人では「中韓」関係を選ぶ人がわずかに回復し、「日中」と「中韓」は20%程度でほぼ同水準である。 親近感の比較では、「どちらにも親近感を感じない」という人が両国民で最も多い。両国ともに、日本や中国よりも「韓国により親近感を感じる」という人が続いており、それぞれ昨年から増加している。

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最も自国との関係が重要な国

 自国の将来を考える上で、世界の中で最も重要な国であると判断したのは、日本人では「アメリカ」が6割近くで突出しているが、昨年からは減少している。中国人では「ロシア」が30.9%で最も多く、「アメリカ」の23.3%を上回り、昨年よりも差を広げている。日本人で「中国」を選んだ人は8.2%と1割に満たないが、中国人で「日本」を選んだ人は昨年の12%から18.2%に増加して2割近くになっている。

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日中平和友好条約に関する評価

 今年は日中平和友好条約締結から40周年にあたる。そこで今回の調査では、この日中平和友好条約に関する設問を加えた。まず、日中平和友好条約の項目の中で、どの項目を今後も発展させるべきかを尋ねた。 これに対し日本人では、第一条第1項の「両国は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等、および互恵並びに平和共存の諸原則のもとに、恒久的な平和友好関係を発展させる」という恒久的な平和友好関係の発展を現在も支持する声が51.8%と半数を超えて最も多い。

中国人でもこの項目を選択した回答が64.9%で最も多い。ただ、中国人では、第一条第2項の「全ての紛争を平和的な手段により解決し、武力または武力により威嚇に訴えない」という不戦を求める声が64.2%で並んでおり、さらに第二条の「両国はいずれの地域においても覇権を求めるべきではなく、他のいかなる国または国の集団による試みにも反対する」という反覇権を支持する声も53%と半数を超えている。

日本人では、今後も発展させるべき項目として、この”不戦”条項を選択した回答は38.8%と4割弱、反覇権は19.7%である。
次に、こうした日中平和友好条約の様々な条文の理念は、現在の日中間で実現できていると思うかを尋ねた。

これに対し、日本人では「実現できていない」という評価が、40.4%と4割を超え、「実現できている」という評価は14.8%と1割台にとどまっている。ただ、「わからない」が44.6%ある。中国人でも、「実現できていない」が46.2%で最も多い。ただ、「実現できている」も44.8%と4割を超え、評価が拮抗している。

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改革開放は交流を促進したか

 今年は中国の改革開放政策の実施からも40周年である。そこで、この改革開放政策が日中の政府間関係の友好発展や、経済、文化、民間での交流を促進したと思うかについても質問した。 中国人では、「促進した」という見方が71.4%と7割を超えている。
一方、日本人では、「促進した」(25.2%)と「促進していない」(29.2%)で見方が分かれている。また、「わからない」が42.5%と4割を超えている。

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相手国の社会・政治体制に対する理解

 日本人では中国を依然として「社会主義・共産主義」と見ている人が49.4%と最も多く、これに「全体主義(一党独裁)」が、32.6%と続いている。 中国人では、日本を「資本主義」と認識している人が48.9%と最も多く、これに「覇権主義」の39.5%が続いている。いずれも昨年よりも増えている。「軍国主義」という認識は36%から25.7%へと10ポイント減少し、2005年の調査開始以来初めて2割台となった。日本を「民主主義」の国と考える人は7.6%、「平和主義」は3%しか存在しない。

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相手国の政治家の誰を知っているか

 日本人の中では依然として「毛沢東」が知名度が高く、9割近くが知っているが、「習近平」が8割を超えてそれに並び始めている。「李克強」は1割台にとどまっている。「安倍晋三」を知っている中国人は8割近い。

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相手国への訪問についての認識

 中国へ「行きたい」という日本人は29.2%にすぎず、7割が「行きたくない」と回答しており、この傾向は昨年と比べ変化はない。これに対し、中国人では43.8%の人が日本へ「行きたい」と答えている。 訪問を希望する理由としては、日本人では「歴史・文化遺産への訪問」、中国人では「景勝地や観光地への訪問」など、観光に関するものを挙げる人が最も多いが、中国人では「買い物」を挙げる人も昨年同様半数を超えている。

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民間交流に関する日中両国民の意識

 この一年の日中の民間交流を、中国人は半数が「活発だった」と感じている。日本人は半数が「わからない」と回答している。日中両国ともに「活発ではなかった」と判断している人は減少している。 民間交流が日中関係の発展や改善にとって「重要である」と考える人は、日本人では6割近く、中国人では7割を超えている。ただ、「どちらともいえない」と判断しかねている日本人が3割程度存在している。

民間交流を進めるべき分野としては、日本人では「民間対話」、「留学生の相互受け入れ」、「文化交流」の3つがその順で多い。中国人では「留学生の相互受け入れ」と「メディア間の交流」を選択する人が多い。「民間対話」は2割程度である。

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日中関係と歴史問題の関係

 日本人の6割、中国人の9割が、歴史問題は日中関係において今なお大きな障害だと考えている。ただ、中国側ではその中でも、歴史問題は大きな問題だとしつつも、「ある程度解決」したとの見方を示す人が昨年よりも12ポイント増加している。 解決すべき歴史問題として、日本人では「中国の反日教育や教科書」を問題視する人が6割を超えているが、36.6%が「侵略戦争に対する日本の認識」を選ぶなど、日本自身の問題を選択する人も少なくない。中国人では、日本側の「侵略戦争に対する認識」が62.2%と最も多いが、昨年よりも減少している。特に「謝罪の不足」を問題視する人は26.5%と、昨年の59.9%から大幅に減少している。「戦争賠償、慰安婦、強制労働」を問題視する割合は昨年から変化がない。そして、「日本のメディア報道」を問題視する人が増加している。

日中関係と歴史問題の関係について、日本人では「日中関係が発展するにつれ、歴史問題は徐々に解決する」という楽観的な見方と、「日中関係の状況に関わらず、歴史問題を解決することは困難」という悲観的な見方がそれぞれ3割近くで拮抗している。

一方、中国人では「日中関係発展につれ徐々に解決する」という楽観的な見方が昨年から10ポイントも増加し、43.9%と最も多い回答となった。これまで最も多かった「歴史問題が解決しなければ日中関係は発展しない」は43.5%と昨年より7ポイント近く減少した。

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軍事的脅威に関する認識

 自国にとっての軍事的脅威を感じる国が「ある」と感じている人は、日本人では昨年の80.5%から72.4%に減少したが、中国人では59.1%から68.7%へ大幅に増加している。 軍事的脅威を感じている人にその具体的な国を挙げてもらうと、日本人の8割が依然として「北朝鮮」を挙げている。「中国」が57.5%、「ロシア」が34%で続いているが、それぞれ昨年比で12ポイント増加している。これに対し、中国人では「日本」を選択した人が67.6%から79.4%に増加し、8割に迫っている。これに「米国」の67.7%が続いている。「北朝鮮」に脅威を感じるのは8.4%にすぎず、昨年の13.1%から減少した。

日本人が中国に対して軍事的脅威を感じる理由では、「日本の領海侵犯」が67.8%で最も多いが、「尖閣諸島や海洋資源で紛争があること」に加え、「南シナ海での強引な姿勢」を挙げる人も6割近い。中国人が日本に対して軍事的脅威を感じる理由では、「日本は米国と連携し軍事的に中国を包囲しているから」を挙げる人が70.1%で最も多い。

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日中間での領土をめぐる軍事紛争の可能性

 日中間での尖閣諸島をめぐる軍事紛争について、日本人では「起こらないと思う」が33.2%で最も多い。これに対して中国人では「起こると思う」が56.1%と昨年同様に半数を超えている。 日中両国の領土をめぐる対立に関して、日本人では「両国間ですみやかに交渉して平和的解決を目指す」べきと考える人が44.5%で最も多い。中国人では「領土を守るため、中国側の実質的なコントロールを強化すべき」と考える人が61.7%で最も多く、「外交交渉を通じて日本に領土問題の存在を認めさせるべき」が57.9%で続いている。

6月に運用が開始された「海空連絡メカニズム」については、偶発的軍事衝突を避けるためにはこの措置だけで「十分だと思う」と積極的な評価をしている人は中国では50%いるのに対し、日本では3.5%にすぎない。「不十分」だと判断しているのは、日本では36.7%と4割近くいるが、中国でも26%存在する。日本人の6割は「わからない」と回答している。

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北東アジア安全保障の多国間枠組み

 北東アジアの安全保障を議論する多国間枠組みの必要性について、日本人の42.8%と4割、中国人は59.7%と6割近くが「必要である」と考え、いずれも昨年よりも増加している。特に、中国人では11ポイント増加している。 その多国間枠組みの参加国については、日本人では日中韓米が参加すべきと考えている人が7割以上いる。中国人では自国の「中国」以外では、「日米」が参加すべきと考える人が6割を超えており、この数字は昨年よりも15ポイント程度増加している。ロシアが5割台で続いている。

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朝鮮半島非核化に向けた外交努力の評価

 朝鮮半島の完全な非核化に向けた関係各国の様々な外交努力について、中国人の5割は「正しい」と判断しているが、36.6%が「正しいと思うが、不十分である」と感じている。 日本人は「正しいと思うが、不十分である」の40.2%が最も多いが、「外交努力では解決できないと思う」という見方も19%存在する。

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両国の経済関係について

 日本と中国の経済関係について、日本人では昨年と同様に「win-winの関係を築くことは難しい」との見方が多く、その見方がわずかだが増加している。逆に、中国人では「win-winの関係を築くことができる」との見方が6割を超えており、こちらの見方が昨年よりも増えている。 日中の経済・貿易関係の今後については、今後も「増加する」との楽観的な見通しが、日本人では26ポイント、中国人では31ポイントそれぞれ昨年から増加している。

日中経済、貿易関係を発展させるために必要なことについては、日中ともに「政府間関係の改善」が最も多く、これが最優先課題であるという点で両国民の認識は一致している。

日中が今後協力すべき自由貿易や経済連携の枠組みについては、中国人は「日中韓FTA」、「一帯一路」、「TPP11」、「AIIB」、「RCEP」の各選択肢が、この順で3割台後半から4割台で並んでいる。しかし、日本人では「わからない」が70.1%で突出している。

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「グローバル化」の是非

 「グローバル化」を「良いことだと思う」と評価する日本人は昨年から11ポイント増加し、49.9%と半数近くになっており、最も多い。中国人では「良いことだと思う」という人が6割を超えているが、その割合は昨年からはわずかに減少している。「良いことだとは思わない」は、日本では5.6%にすぎないが、中国では20.3%存在し、昨年よりも増加している。

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自由貿易とWTO改革

 日本人の6割超、中国人の8割が世界の自由貿易とWTOなど多国間主義に基づく国際協力は「重要」だと判断している。 現在動き始めているWTO改革については、日本人の4割、中国人では7割超が支持している。ただ、日本人では、その是非を判断できていない人が半数を超えている。

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世界をリードすべき国や地域

 日本人の半数は「アメリカ」がこれからも世界をリードすべきだと考えているが、昨年からはその割合は減少している。中国人の約7割は「中国」が世界をリードすべきと考えている。「アメリカ」を選ぶ中国人も3割いるが、昨年から10ポイント減少し、「ロシア」と同水準となった。

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東アジアが目指すべき価値観として最も重要なもの

 東アジアが目指すべき価値観として、日本人では6割が「平和」、4割近くが「協力発展」を重要であると考えている。中国人でも5割が「平和」と「協力発展」と回答しており、この2つの価値を重視する点で日中両国民の認識は一致している。

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日中は将来、共存・共栄できるのか

 日本人の56.6%、中国人の53.7%と日中両国民の半数超が、日中関係の将来について「平和的な共存・共栄関係を期待するが、実現するかはわからない」と考えている。ただ、中国人の中には日中は「平和的な共存・共栄関係を実現できる」との見方が3割近くある。対立関係が続くと見る人は日本人で12.6%、中国人で9.4%存在するが、昨年よりも減少している。

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両国間やアジアの課題における協力関係の強化

 日中両国やアジア地域に存在する課題の解決に向けて、日中両国が協力を進めることについて、日本人の63.4%、中国人の70.4%が「賛成」している。特に、中国人では「賛成」が昨年の58.3%から12ポイント増加している。 その協力すべき分野では、日本人の74.6%が「北朝鮮と朝鮮半島の完全な非核化」、62.3%が「大気汚染や水質汚濁などの環境問題」を選んでいる。中国人でも最も多いのは「北朝鮮と朝鮮半島の完全な非核化」の40.4%であり、この点では両国民の認識は一致している。

「北東アジアにおける安定的な平和の構築」での協力を選んだのは、日本人が35.3%、中国人は22.2%である。

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今後10年間のアジアにおける各国の影響力の変化

 今後10年間のアジアにおける「日本」の影響力については、日中両国民共に半数程度が「変わらない」と見ているが、中国人では「増大する」という見方も4割近くあり、日本人(19.2%)よりも日本の将来の影響力を高く見る人が多い。 「中国」の影響力については、日本人の6割、中国人の9割近くが「増大する」と見ている。「米国」の影響力は、両国ともに「増大する」と「変わらない」との見方がそれぞれの国内で拮抗している。「韓国」の影響力は、両国ともに「変わらない」との見方が最も多い。両国民の見方が異なるのは「ロシア」と「インド」の影響力で、日本人は「ロシア」の影響力を「変わらない」とする見方が最も多いが、中国人では半数が「増大する」と見ており、その見方が最も多い。「インド」の影響力については、日本人では「増大する」と「変わらない」が国内で並んでいるが、中国人では「変わらない」が55.9%と半数を超えている。

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日中関係とメディアの評価

 中国人の86.6%が、中国メディアは日中関係の改善や両国民間の相互理解を促進していくことに「貢献している」と考えており、昨年の77.8%から9ポイント増加している。一方、日本メディアが「貢献している」との見方は日本人では30.2%にすぎない。 また、中国メディアの日中関係に関する報道を「客観的で公平」と感じている中国人は80.6%と8割を超える高水準である。これに対して、日本人で日本メディアの日中関係に関する報道を「客観的で公平」と感じている人は16.4%と2割を切っている。「客観的で公平ではない」は30.9%だった。

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ネット世論は民意を反映しているか

 日本人の33.5%は、日中関係に関するインターネット上の世論は民意を「適切に反映していない」と見ており、「適切に反映している」の21.8%を上回っている。ただ、44.4%が「わからない」としている。 これに対し、中国人では、「適切に反映している」という見方が86.9%と9割近くにのぼっている。

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日中両国民の交流の度合い

 日本人で中国への渡航経験が「ある」という人は13.5%となり、この数年大きな変化はない。一方、中国人では、日本への訪問経験が「ある」という人は18.6%となり、7年連続の増加となった。 その渡航理由は両国民ともに「観光」が突出している。渡航時期については、日本人では「11年以上前」が最も多く、現在に近くになるほど少なくなるが、中国人では「最近5年以内」との回答が9割を超えている。

相手国国民に知り合いがいるという人は、日本人では17.4%、中国人では7%にとどまり、昨年から大きな変化はない。

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日中両国民の情報源

 日本人の中国や日中関係に関する情報源として自国「日本のニュースメディア」を選ぶ人は圧倒的で、特に「テレビ」が突出している構造は例年と同様である。 中国人の日本や日中関係に関する情報源も、自国の「中国のニュースメディア」を選ぶ人が9割近い。中国の場合、「中国のテレビドラマや情報番組、映画作品」も半数近くが選んでいるが、昨年からは減少している。また、2割を超える人が「家族や知人・友人、ネット・SNSを通じた会話・情報」を選んでいる。

中国では、自国のニュースメディアの中で、「テレビ」を選んでいる人が6割を超えて最も多い点は日本と同様である。ただ、「携帯機器からのインターネット」が3割近くあり、7.3%にすぎない日本とは異なっている。

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2018年10月12日