・自己の地位保全を優先する中国の官僚、党員、その間にコロナウイルスの感染が拡大(LaCroix)

(2020 . 1 . 30  LaCroix Hong Kong Elizabeth Lam)

 昨年の12月初旬以来、中国・武漢市の一部の医療施設は原因不明の肺炎患者を診てきた。その後、数百のインフルエンザ関連疾患のサーベイランスを実施し、ウイルス性肺炎であると確認した。

 そして、今年に入って1月20日、中国国家衛生健康委員会が、コロナウイルスの人から人への感染を確認した、と発表した。最初の症例が治療されて約1か月後のことだ。そして、この一か月の間に、コロナウイルスは急速に広がった。当初、2002-03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)ほど深刻ではないとされていたが、そうした当局の対応が状況を悪化させた。

 2002年11月に香港と境を接する中国・広東省で発生したSARは、2003年6月までの8か月の間に世界中で約8400人が感染し、800人が死亡した。

*対応のまずさが感染拡大に

 これに対し、武漢市から始まったコロナウイルスは、わずか1か月で6,000人以上に感染し、少なくとも134人が死亡した。この感染の速さと多くの死者の発生は、中国共産党政権が人命に抱いている尊厳と価値の程度を示している。

 コロナウイルスの発症までの潜伏期間は最大2週間と言われているが、武漢市当局は、1ヶ月近くも適切な対応を怠り、感染の拡大を招いた。その後も、彼らは感染者の数を隠し、それが事態をさらに悪化させた。自己の対応のまずさから、感染が急速に広がり、都市全体の封鎖を余儀なくされたが、その時点で、ウイルスは既に中国全土に広がり、さらに、いくつかの国でも感染が確認され始めた。

 中国本土から香港にもたらされる情報は不安をかきたてるー現地当局は、感染者をまるで死んでいるように扱っている。救助を求める市民が多くいるが、そのほとんどは診断と治療のために病院に行くことができない。医師の診察を受けられない。感染した市民は自宅で隔離された後、死亡することが疑われている。一部の感染者は、家の中にいて家族に感染することを恐れ、路上で寝ている、という。このような悲惨な日常は、武漢市だけでなく、多くの都市でも見られると言われる。

 武漢市当局は、当初、現場からあがってくる報告を隠し、無視しただけでなく、そうして情報をインターネットで公開した市民を逮捕した、という。情報の拡散が、社会不安やパニックを引き起こすのを恐れたのだ。そして、ようやく感染の事実を明らかにした際にも、市長は、適切な医療と物資を提供している、と嘘の主張をした。

*医療スタッフも感染の危険

 本当は、感染に対処する準備が政府にできていなかったのだ。医療スタッフ、病院施設、医療機器が不足していた。適切な防護具がないため、最前線の医療スタッフは感染しやすく、死亡の危険にさらされた。政府が武漢市を封鎖した時も、医療スタッフの安全を無視し、彼らをウイルスの渦に投げ込んだ。満足に扱ってもらえない患者とその家族は、医療スタッフに怒りをぶつけ、一部の患者は、医療スタッフの防護服を引き裂いた。

 共産党政府の職員にとって、自分のキャリアは人の命よりも重要だった。彼らは、相変わらず、「人間の基本的権利を尊重した記録」のない中国共産党の立場をとっていた。感染が広がり続けているにもかかわらず、党の政策と行動が、日常的に人々の権利を踏みにじっている。このような重要な瞬間にも、彼らの責任転嫁と不作為が、市民と人権に対する完全な軽視を世界に見せつけている。武漢市から発生したコロナウイルスが中国共産党政権の”真実”を白日の下にさらしているのだ。

 コロナウイルスが広がり始めたとき、マスクの価格は高騰した。人々は、医療マスクを手に入れるために、武漢市の街路や他の都市で互いに争った。それは、「自由、平等、友愛」という共産党の誇り高い”社会主義的価値”を完全に覆した。災害が起きた時に初めて、その社会とその体制がいかに脆いものであるかが、分かるだろう。

 中国共産党は、コロナウイルス経の対処に当たって、政治的宣伝を進めるための通常のやり方をした-まず、真実を暴露する人々を抑圧し、次に刑務所に閉じ込める。それから、バラ色の嘘、歌と踊りでメディアを制御し、満足させる… 共産党がこのようなやり方でウイルスに対処しようとしなければ、ウイルスを制御できたはずだ。メディアが自由に監視と報道するのを許可されたら、事実の隠蔽はなく、感染がこれほど広がることは、なかっただろう。人々は真実を知って、防御策を講じていただろう。

*カトリック教会の対応は…

 パニックが広まり始めると、カトリック教会は不測の事態への対策を講じた。一部の教区と教会は、政府の指示に協力するために、祈りの集まりを一時停止するように求める通知を各教会に送った。

 だが、しかし、広州市の教区の司教は、これとは違う声明を各教会、信徒たちに出した。教会の扉を開くように、と。「教会の扉を開き、ミサやその他の秘跡で祈りを捧げ、司牧奉仕に努めようとする教会員は、常に喜んで受け入れるべきです」と言明している。

 このような行為は、ウイルスの感染拡大を加速する恐れがあるが、教会が人々の心の安らぎの場となり、パニックや争いの中で暖かさと安らぎを与えることができる。 扉を閉める代わりに、今、最も精神的な安らぎを必要とするかもしれない人々を受け入れることが求められているのだ。

 一方で、新たな恐れを抱く教会関係者もいるー教会を抑圧することに常に熱心な中国共産党が、キリスト教の集会を禁止し、教会が秘跡を行うのを防ぎ、教会の閉鎖さえ求める口実として、コロナウイルスの流行を使うのではないか、と。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。

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2020年2月3日