・”暫定合意”に希望をかける中国のカトリック教徒もいる、と中国通の修道会前総長(Tablet)

(2018.11.12 Tablet  Tablet  Christopher Lamb)

Chinese Catholics ‘hopeful’ following Vatican deal with Beijing

A Chinese priest celebrates Mass

 バチカンと中国政府の暫定合意を受けた教会の新設許可で、中国のカトリック信徒たちに”希望”が生まれている。

 9月にバチカンと中国政府の間でなされた中国国内での司教任命に関する暫定合意は、話す人によって評価が割れている-いわく、「カトリック教会に、世界最大の人口を抱える国で福音宣教の基盤が与えらえる、素晴らしい外交的な成功」、そしていわく、「お人好しの教皇フランシスコの、中国共産党指導者に対する勇気を欠いた屈服」…

 米有力紙ニューヨークタイムスは先月、陳日君・枢機卿(86)-中国との合意に長い間反対を続けてきた前香港司教-のために一面をさき、暫定合意が「中国における真の教会の絶滅」への一歩だ、という判断について説明の場を提供した。中国共産党内部の派閥の権力闘争が行われる中で複数の司祭が逮捕されたという報道もあった。

 だが、暫定合意の影響を公平に評価するためには、実際に現場で何が起きているのかを知る必要がある。中国という広大で多様な国で正確で信頼できる情報を得るのが困難だ、という前提付きだが。

 現在、香港在住で、台湾と中国本土で布教経験を持ち、中国全土に幅広い情報網をもつケビン・オニール前聖コロンバン会総長がTabletに語ったところでは、彼が接触した人々は、教会が「絶滅」するとは見ておらず、暫定合意はまだされたばかりであるものの、総じて希望を持っている、という。

 彼は最近、教皇に忠誠を誓い、中国政府の監視・統制を拒否する”地下教会”に属しながら、最近、中国政府の指示に従って登録をしたある教区の管理者と連絡を取り合ったが、「その教区では、近年、政府から教会のために5か所の敷地を与えられ、聖堂四つと司牧センター一つを建てた」「近いうちに五つ目の聖堂の建設を始める予定」との説明を受け、これは素晴らしい前進だ、とその管理者は言っていた、という。

 そして、「中国のカトリック信徒たちは、先のバチカンとの合意をどのように実行していくのかについて、当然ながら気にかけています」とオニール師は語った。

 最近中国政府が導入した政策によって、中国全土の教会は目立つ場所に中国国旗を掲げ、さらに習近平国家主席の意向で、教会の門かフェンスにも国旗を掲示するように指示されている。オニール師の友人のような教会指導者たちにとって、この指示は、教会の使命を損なうことなく”シーザーのものはシーザーに”と”神のものは神に”の間の均衡を図るのを難しくしている。例えば、共産党職員が国旗が十分に目立つ場所に立てられているかの点検をする、というようなことだ。

 オニール師は記者に対して、彼が連絡を取った現地教会の指導者は「国旗がはためき、聖堂の前のフェンスに掲示されることで、(注:それと引き換えに)イエスが証しされ宣言された神の統治のよき知らせを分かち合う教会の福音宣教の使命が前に進むことができることを希望している」とし、陳枢機卿は悲観的な展望を語っているが、中国の現場で働いしている彼の友人は「楽観的で希望を持ち続ける必要が、自分たちにはある、と言っていました」と語った。

 中国のカトリック教会について、「愛国、あるいは共産党の教会」と「ローマに忠誠を誓った」地下教会、という言われ方がされているが、彼は「中国に(共産党の)教会というものは存在しない」と言う。

 前教皇のベネディクト16世は2007年に、中国のカトリック信徒たちに手紙を出した。その中で、ベネディクト16世は、教皇の同意を得ずに叙階され、その後に教皇の承認を求め、認められた司教たちがおり、教皇の同意なしに叙階され、その後も教皇の承認を望まず、ローマの権威の外で活動している司教もおり、そして、中国政府の圧力や脅しを受けないように「内密に聖別」を受けた”地下司教”がいる、としたうえで、「内密に、というのは、教会活動の正常な姿ではない」「通常のバチカンの承認なしに司教を叙階する選択肢も含めて、地下教会が秘密に活動する特別の承認を取り消す」とし、そうした措置はもはや必要がない、との判断を下した。

 前教皇は、中国における統一された教会への期待が強く、2007年には、破門された司教たちが「教皇と全司教との霊的交わり」に加われば、「素晴らしい霊的な豊かさが生まれるでしょう」とも述べていた。

 中国のカトリック信徒たちにとっての未来がどうなるにせよ、「ローマの承認を望まなかった司教たちの破門を解除する」という中国政府との合意に署名することで、教皇フランシスコは、ベネディクト16世が2007年に示した希望を満たしたのだ。

(翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

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2018年11月14日