・外国人宣教師たちを中国から追放-カトリックもエホバの証人も-「法律違反」が理由(BW)

(2019.12.21 Bitter Winter Cai Congxin)

 「外国人の宗教」の浸透を防ごうとする中国共産党の下で、中国国内の外国人宣教師への監視が強化され、帰国を余儀なくされる者も出ている。中国共産党はこれまでも、国内の外国人宣教師を「人々に影響を与え、政権を転覆しようとする勢力」として扱ってきたが、習近平国家主席が政権を握って以来、全国的に弾圧が激しくなってきた。

*アイルランドと米国からの宣教師たちが帰国を余儀なくされた

 湖北省の仙桃市では 7月14日、5人の警官がカトリック教会を強制捜査し、アイルランド人司祭に対して、パスポートなどの提示、個人情報の提供を要求したうえ、警官の1人が「外国人は中国の教会で説教をすることは許されていない」と通告した。この教会は新しく施行された宗教関係規制第5条に定めた「宗教団体、組織、宗教活動の施設は、外国の勢力による支配を受けないこと」に違反しているというのだ。

 警官は、尋問のためにアイルランド人司祭と中国人聖職者の1人を検挙し、現地の公安当局に連行した。司祭に対して、教会の信徒の子供たちに英語を無料で教えていた、という理由で、母国に即刻帰国を命じた。命令に従わないなら、パスボートを取り上げ、強制退去させる、と脅かされた司祭は、翌日、中国を去った。

The plane is taking off

 信徒によると、48歳のアイルランド人司祭が連れ去られる3日前まで、私服警察が連日、教会を訪れ、彼の活動を監視していたという。

 別の教会関係者は「習近平が宗教の中国化政策を進めていることから、最終的に、すべての宗教が国内から排除されるでしょう‥当局は、外国と絆を持つ教会を厳しく取り締まり、外国人宣教師を国外追放することで、信仰を持つ人々が本当の宗教にアクセスできないようにしているのです」と語った。

 これと前後して、70代の中国系アメリカ人の司祭が、雲南省南西部の雲南德宏傣族景頗族自治州を訪れ、貧困家庭の子供たちのための教育プログラム実施を計画した。司祭は地元の教会の信者と一緒に、香港のキリスト教徒が提供したが収集したコンピューター、衣服、その他のアイテムをこれらの子供たちに配布することも予定していた。

 だが、現地の自治州当局は、司祭が香港での民主化反対運動の主催者と関係があるの恐れ、「禁じられた宗教資料を援助ととも広めようとしている」として、計画の実施を禁じた。当局の厳しい監視にさらされ、司祭は米国への帰還を余儀なくされた。

 「共産党は策略と陰謀によって我々を支配しようとしています。私たちの活動を規制し、彼らに従うことを要求します。それは、多くの宗教的な人々が政権を脅かすかもしれない、と恐れているからです」と地元の信者は語った。

*「エホバの証人」の布教者も逮捕され強制送還に

 新たな規制に基づいて”外国製”のキリスト教の浸透を調べ、対処する全国的な作業計画の採択を受ける形で、「エホバの証人」は、他のいくつかの”外国製”の宗教グループとともに、布教者たちが厳しい迫害を受けている。多くの人が逮捕され、強制送還された。

 湖北省の国家安全局の職員が5月、日本から来たエホバの証人の布教者夫婦を、自宅から出たところで逮捕した。 2人は黒いフードを頭にかぶせられ、24時間続く尋問のために地元の警察署に連行された。睡眠を奪われた布教者は、中国での宣教活動の詳細を開示するよう求められた。釈放されたものの、出国する前に誰にも連絡をとらず、1週間以内に中国を離れるよう命令された。信徒によると、彼らは、これまで一年間、当局の監視下に置かれていたという。

 やはりエホバの証人の20代のオーストラリア人宣教師も、ほぼ同時期に逮捕された。彼女は湖北省の首都武漢にある学校で教えていて、その地域の新しいエホバの証人の布教者を務めていた。国家安全局の職員は、彼女が翌日の授業の準備のために自宅でコンピューターで作業していたところにやって来て、彼女が最近受け取った給料が机の上にあるのを見つけ、「これは教会の寄付金なのか、お前は教会の長老なのか」と詰問。給料を没収し、尋問のために連行したうえ、1週間以内に中国を離れるよう命じた。

 当局内部の情報筋によると、韓国、米国、スウェーデン、台湾、アフリカから中国に来ていた他のエホバの証人の関係者も、5月に国外追放されたという。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日7言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

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2019年12月25日