・国家管理を拒否するカトリック信徒への圧力さらに-中国で(BW)

(2020.2.2 BitterWinter Tang Zhe)

 バチカンが2018年9月に”中国国内での司教任命に関する暫定協定”を中国政府と調印して以来、中国共産党・政府による国家管理の中国愛国天主協会」(CPCA)への参加を参加を強要する動きが強まっているが、さらに最近では、参加を拒否するカトリック教会を閉鎖するなど、圧力をますます強めている。礼拝所の多くが世俗的な活動や中国共産党の思想改造の会場に改変されている。

 同国モンゴル自治区のシリンゴル盟(モンゴルの行政区画)では、昨年7月、現地当局が「宗教施設登録証明書の欠如」を理由に、カトリックの宗教施設の閉鎖通知を掲示した後、職員が繰り返し検査し、上級機関に報告した。

Believers are gathering in the churchyard.聖堂を追い出され、野外での礼拝を余儀なくされる信徒たち

 信徒たちは信仰を実践し続けるために、施設の中庭でいくつかの集会を開いたが、間もなくその場から追い出された。また、夜遅く、あるいは早朝に礼拝するために教会に入ることもあった。年配の信者は、BitterWinterの取材に対し、「秘密の早朝礼拝の機会を逃してはならない、と思い、夜明けに頻繁に目を覚まします。ですから、十分な睡眠が取れません。時とともに健康に影響を与えるのではないかと心配です」と信者は不平を言いました。

 地方政府は教会幹部を買収しようと試みる一方で、CPCAへの参加を強制し、教会に中国国旗を掲げるのを拒否したため、生計手当を奪われる者も出ている。こうした圧力が全て失敗すると、当局は40人以上の人員を派遣して、聖絵画、霊的な本、60を超えるベンチなど、教会の資産をすべて取り去った。

The church before and after it was emptied.信徒がいっぱいだった聖堂も”改造”された(写真右)

空になった前後の教会。

 襲撃を目撃した信徒に1人はBitterWinterの取材に対し、「役人の一人は『教皇に、お前たちに生活支援の金を恵むように頼もう』と私たちを嘲りました」と語り、別の信徒は「政府はすべての宗教書と聖母マリアの肖像画を取り上げました。私たちの宗教を排除し、神を信じることを禁じようとしているのです」と怒りを露わにした。

 また、江西省南東部、吉安市のカトリック教会の聖堂は昨年3月、共産党の思想教育用の”文化活動センター”に改造された。聖堂は、地元のカトリック教徒が集められた約10万元(約1万4000ドル)で2014年に建てられたものだ。

The church in Bixi has been repurposed for a cultural activity center.教会の聖堂は”文化活動センター”に改造された

 地元の信徒はBitterWinterに語った。「聖堂内に掛けられていた14点の聖画と十字架が取り去られ、中国共産党の宣伝スローガンと習近平”語録”が掲げられました… 十字架は収納庫に収容され、 「社会主義イデオロギーを学ぶための概要」「紅い遺伝子を継承し、意図と使命を実践する」などの思想本と世俗的な本が教会の棚に置かれました」。

“Red” books have been displayed on the shelves in the church.教会の書棚には思想改造の本と世俗本が

  また、「これらの宣伝スローガンを取り外そうとしたら、逮捕する」と当局の職員に脅された、といい、聖職者が”強引”に説教をすれば、逮捕・拘留される可能性もある。信徒の中には聖堂に”忍び込み”、キリスト像を収納庫から取り出して、祈りを捧げ、終わったら元に戻すこともある、という。

 Propaganda slogans replaced the church’s religious paintings.十字架と聖画が、共産党の宣伝スローガンに替えられた

  教会が”改造”されて以来、地方当局はそこでさまざまなパフォーマンスを組織し始めた。地方政府の幹部が、信徒の自宅を訪れ、信仰を捨てる声明に署名することを強要した。彼らは、何軒かで「最後の晩餐」の絵や典礼カレンダーを取り外し、ゴミ箱に捨てることまでした。

 昨年11月には、贔屓市のCPCAへの加盟を拒否するカトリック教会が、当局に占拠され、「文化活動室」という看板が聖堂入口に掲げられた。現地の信徒の1人はBitterWinterの取材に「当局の職員が全信徒の個人情報を登録し、自宅を訪れ、『CPCAへの参加を拒否した司祭を探している』と言いました。信徒たちがまた教会に行ったら『逮捕・投獄する』と脅されました」と語った。

 「当局は私たちが共産党に服従するように、CPCAへの参加を強要しています。そうしないと、神を信じることが許されないのです」と、ある”地下教会”の司祭は訴えたうえで、決意を語った。 「だが、当局が私たちの教会を占拠しても、私たちの信仰を奪うことはできません」。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日7言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

 

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2020年2月5日