・『聖書 聖書協会共同訳』の典礼での使用は「数年先に検討」と司教団

(2019.3.8 カトリック・あい)

 典礼にふさわしい美しい現代日本語訳を目指し、日本聖書協会が昨年12月、31年ぶりの新しい共同訳聖書となる「聖書 聖書協会共同訳」を発刊したことは、すでに報じているが、カトリック司教団は、教会の典礼での使用について「数年先」に検討する、という消極的対応に留まることが明らかになった。

 5日発行のカトリック中央協議会の会報2019年3月号が、1月10日に開いた定例常任司教委員会の決定として伝えた。それによると、同委員会は、「聖書 聖書協会共同訳」の扱いについて審議した結果、カトリック教会の典礼での使用については「数年先に検討する」こととし、「毎日のミサ」などの引用やミサの聖書朗読については「現時点では現行どおり『聖書 新共同訳』を使用する」ことを決定した。

 今回の共同訳作成は、カトリック教会を含む18の諸教派、団体の代表で構成する共同訳推進計画諮問会議が2009年10月に「翻訳方針前文」を採択。「過去の聖書翻訳の歴史には、意訳か、直訳が、という対立があったが、今回の翻訳では、最新の聖書学の成果を活用し、「読者対象と目的(礼拝で朗読される聖書)に合わせて翻訳する」との基本方針をもとに、2010年から、カトリック、プロテスタントの初の共通の聖書「聖書 新共同訳」(1987年刊行)の次世代版として、カトリック、プロテスタントが力を合わせて、完成させたものだ。

 1987年に発刊された「聖書 新共同訳」は、日常的に使われている今の日本語から見ても不完全で、時代遅れの死語、あるいは”差別用語”に近いと思われる言葉も使用され、イスラエルには存在しない動植物が”登場”するなど、正確さにも欠ける。

 これをもとにしたカトリック教会で現在使用されている典礼文、聖書朗読文を、「聖書 聖書協会共同訳」を反映した「美しく、現代口語に合った典礼文」「ミサにおける聖書朗読文」に改める作業を急ぐことは、福音宣教の見地からも必要と思われる。

 教皇フランシスコは一昨年9月に「典礼書の翻訳に関する権限のバチカンから現地の司教協議会への重要な移行」を明確に意味する自発教令を出し、教会法の部分改正を実施、各国語の典礼文の表現について、バチカンから現地の司教団に権限の比重を移す決定をされている。今回の共同訳は、事実上、そうした教皇の「現地化」の意図を受けた形となっており、カトリック教会からは岡田、高見両大司教らも関与している。

 にもかかわらず、典礼での使用については「数年先に検討」と、採用するかどうかも数年先にならないと決められない、ミサでの引用や聖書朗読は「現時点では現行通り」という曖昧な姿勢では、何のためにこの翻訳プロジェクトに、大司教が二人も関与したのか、理解に苦しむ。積極的に採用に取り組むことを改めて求めたい。

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2019年3月8日