・中国の福州大司教区で少なくとも60のカトリック教会など礼拝場が閉鎖(BW)

(2019.12.26 Bitter Winter AN XIN)

 中国では、中国政府・共産党の管理・監督下にある「中国愛国天主協会」(CPCA)への参加を拒否するカトリック司祭、信徒への圧力が一段と強まっている。推定によると、過去数ヶ月の間に中国福建省の福州大司教区だけで、福清市を中心に少なくとも60のカトリックの教会など礼拝場が閉鎖された。

 CPCAに参加させようとする聖職者への圧力は、この地域に限らず、中国全土で加速している。河南省中央部の地方政府の関係者によると、地方政府はいわゆる「5対1の管理システム」の採用を始めた。これは、これまで、「全能神教会(The Church of Almighty God)」のような公けに禁止された宗教団体や活動に適用されていたもの。

 カトリックの「良心的(CPCA参加)拒否者」については、中国共産党統一戦線工作部、公安局、民族宗教局、地方政府、村落委員会が、彼らを”再教育”するための共同作業のための担当者を指名する。担当者たちのグループは、定期的に問題司祭たちを集めて「対象を絞ったイデオロギーの変革」会議を開き、彼らの行動を注意深く監視する。

 バチカンは、昨年秋の司教任命に関する中国政府との暫定合意の後、中国国内のカトリック聖職者がCPCAに参加することを認める一方で、参加を拒否する良心的な反対者の意思も尊重される必要がある、との声明を出していたが、無視された格好だ。

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 CPCAへの参加を拒否するカトリック聖職者に加盟への圧力をかけるため、中国共産党統一戦線作業部(UFWD)と福建省・福州市の民族宗教局が 8月下旬、市内で会議を開いた。福州大司教区の福清市にある教会の司祭たちは会議への参加を拒否し、中国共産党に支配に屈しない姿勢を示した。これに対して当局は、「不従順な」司祭が働いていた教会に組織的な取り締まりを実施、集会場を閉鎖し、司祭と信徒たちを脅迫した。

*神学校も集会場も閉鎖、水と電気の供給が止められた

 11月初旬、福清市国家安全局と同市城頭の当局の職員が地元のカトリック神学校に来て、責任者に「違法な組織」であると告げ、水と電気の供給を止め、司祭と信徒を追放。信徒たちの集会場も入場できないように監視し、神学校に通じる道路の交差点にも監視カメラが設置された。

 さらに、これと前後して、福清市紅路区のカトリックの集会会場は、The seminary’s electric meter has been removed.電気と止められ、閉鎖された。その1週間後、市内のあるカトリック教会も同じ被害に遭った。城頭鎮のカトリック教会も閉鎖、入り口に監視カメラが設置され、「中に入ろうとする者は逮捕する」と警告された。福清市の龍田にあるカトリック教会も閉鎖され、当局は「中国人はバチカンの宗教を信じることが許されていない」とし、礼拝のための集会を開くなら、逮捕する、と司祭、信徒たちに通告した。

 やはり福清市内

A notice on the cutting of electricity supply to a Catholic meeting venue in the Honglu sub-district of Fuqing.

の玉屏の教会には、市の宗教局、都市管理局、その他の政府部門の12人以上の役人が立ち入り、写真撮影など調査を実施。信徒の1人はBitter Winterに「彼らは毎日曜日に、監視にやって来て、司祭がミサの為に来るのを待ち構えています。中国には宗教や言論の自由はありません。政府はすべてについて最終決定権を持ってます。ただ共産党の指示を聞き、従わねばならないのです」と語っている。

配電中止の通達                                    神学校の配電が破壊された

 福清の管轄下にある江京町の司祭は、CPCAへの参加申請書への署名を繰り返し拒否した後、地元の宗教局と町当局から呼ばれ、9時間拘束され、「署名をこれ以上拒めば、司祭としての活動を禁止する」と言われた。

                                                     閉鎖されたカトリック教会

A Catholic church has been closed in Beilin village under the jurisdiction of Yangxia town.

 現地の当局関係者によると、CPCAへの参加を拒否する司祭は反政府組織”axie jiao”の頭目と見なされるという。いくつかの町の当局は毎日曜に教会に監視のために人をおくり、CPCAに加盟していない司祭がミサを捧げている場合は警察に報告するよう指示されている。

 ある司祭は「共産党は無神論者です。信徒たちには、当局の脅しに屈せず、忍耐強く時を待つように励ましています。共産党とはゲリラ戦をしているようなものです」と語り、彼らに見つからないような場所を選んで礼拝を続ける、という。

 「魂の救いのために神を信じています」と語るある信徒は、 「共産党は私たちに、CPCAに参加するように強制します。CPCAは参加した司祭、信徒を管理し、国歌を歌い、教会に国旗を掲げます。これは神の意志に反しています。当局は、私たちに国に対する愛を証明し、共産党だけを信じるように要求しています」と訴えている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日7言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

 

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2019年12月28日