・ミャンマーのボー枢機卿、復活祭声明で民族紛争の終結を呼びかけ(Tablet)

(2018.3.27 Tablet  Megan Cornwell)ミャンマーのカトリック教会指導者、チャールズ・ボー枢機卿(ヤンゴン大司教)が復活祭を前に、国内外に向けた「死から生へ―希望と平和の国の建設」と題する声明を発表、多文化主義の重要性を強調するとともに、(「カトリック・あい」注:文化的、宗教的、民族的な)違いを受け入れるのを拒むことは東南アジアのこの国を"民族紛争"に陥らせることだ、と警告。カトリック信徒たちに対しては、教皇フランシスコが先にミャンマーを訪問されたときの言葉を思い起こし、復讐ではなく和解の道を選び、宗教的な忍耐を持ち続けるように願った。

写真は、食料の配給を待つ、バングラデシュ側に身を寄せるロヒンギア難民の子供たちImage/AAP)Cardinal Bo calls for end to ethnic conflict in Myanmar

 枢機卿は声明で、「ロヒンギア」という言葉を使うことを避けたが、その内容は、彼らに対して最近なされた襲撃を暗に指している。昨年8月以来、ミャンマー北部のロヒンギアの回教徒の住む村々が政府軍の襲撃を受け、50万人に上る住民が国外に脱出を余儀なくされている。枢機卿は復活祭メッセージを使って、60年以上にわたって内戦状態が続くミャンマーの政治的、経済的状態をイエスが埋葬された墓になぞらえ、(注:イエスの墓からの蘇り・復活につながる)和平の実現を呼びかけた。

 同国の国民は七つの民族に分かれ、その大部分は仏教徒だが、キリスト教徒や回教徒もいる。少数派の信徒たちは、軍事独裁政権の下で、何十年にわたって深刻な差別を受け、迫害されてきた。声明で、枢機卿は「私たちの心と国民の中の、希望を失っている墓から取り除かねばならない絶望の石がたくさんあります」とし、これらの「石」には、「嫌悪」「不正」「紛争」が含まれており、何百万の人が「この国の経済的な不正の墓に埋められ」、何千もの人が「隣接国に安全を保障されない移動を余儀なくされ、"現代の奴隷"として埋められている」と悲惨な状態を告発した。

 声明は最後に、キリスト教徒たちに「人造の墓に人々を閉じ込めている石を取り除く隊列」に加わるよう求め、和平実現への努力を呼びかけた。「私たちの国は膨大な希望を必要としています。和平は前に進む唯一の道です」と。

 ミャンマーは2015年に民主主義を標榜する国民民主連盟(NLD)は総選挙で地滑り的な勝利をおさめ、2016年の政権を獲得したが、軍による少数派民族に対する襲撃、虐待行為は止まらず、 民主政権の実質的指導者であるアウンサン・スーチーNLD党首は、ロヒンギアの人々に対する人権侵害を無くす力がない、と国際社会から批判を受けている。

 Christian Solidarity Worldwide(キリスト教徒世界連帯)の東アジア地域代表のベネディクト・ロジャース氏は、枢機卿の声明を「力強く、聴く人を奮い立たせるメッセージだ」と歓迎し、「嫌悪を批判し、不正に対峙し、真正な平和を進めることに力点を置いたのは、全く正しい」としたうえで、ボー枢機卿を「少数民族と宗教的少数者を含めた一人ひとりの権利を訴え続ける、ミャンマーで数少ないリーダーの一人」と称えた。

(翻訳・「カトリック・アイ」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

 

 

 

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2018年4月2日