(2020.2.11 BitterWinte】Editor Massimo Introvigne)
チベットの尼僧、photoルカ・ガルッツィによる写真
先月末、ドイツ外務省が作成した「”教育収容所”による中国・新疆ウイグル自治区の変革」に関する機密報告書が、一部のドイツ・メディアに流出した。
それによると、中国共産党・政府は収容所を「職業訓練校」だ、と主張しているが、実際には拷問や裁判なしの殺害に加え、女性収容者を性的虐待が定期的に報告されている恐ろしい”刑務所”になっている。
New York Timesは先月29日付けの特集で、新疆ウイグルの収容所から脱出したカザフスタンとウイグルの女性たちのインタビューを掲載した。語られたのは、中国共産党・政府が主張するような”職業訓練学校”とは、かけ離れた実態だった。
女性は「ある男性は、警察署の地下に閉じ込められ、片耳の聴力を失うまで暴行されました。別の男性たちは、足枷をされ、十字架刑のように吊るされました。収容された人たちが”虎のベンチ”に鎖でつながれ、睡眠を奪われるのが日常化しています」と惨状を訴えた。
そして、「信仰を捨てることを強要され、”啓発の機会”をくださった習(近平)に毎晩、感謝しなければならないのです」と恐怖を語った。
インタビューにあたった女性記者は、性的暴行がされていることについても報告を受けた。
このような告発はどの程度の信ぴょう性があるのだろうか。先週、ニューヨークのコロンビア大学で、学生が大学が発行する雑誌を批判して、議論を呼んだ。他のケースでは性的虐待を批判する論調を展開しているのに、新疆ウイグル自治区で起きているとされている拷問や性的暴行の報告は無視している、というのが、批判の内容だった。
この主張に欠けているのは、中国共産党・政府の”再教育”の一環としての性的虐待は、今、新疆ウイグル自治区で始まったことではない、ということだ。チベットの人々は、チベットの”教育収容所”について、これまで長い間、訴え続けてきた。チベット語では、その収容所をlobao yosang teyney khang(སློབ་གསོ་ཡོ་བསྲང་ལྟེ་གནས་ཁང་)ーaojiaoyu zhuanhua(教育転化)を意味し、「教育による改造キャンプ」と翻訳される。
驚くことではないが、新疆ウイグル自治区からもたらされたものと同じ恐ろしい報告がチベット自治区からも寄せられている。
昨年、活動が高く評価されているチベット人権・民主主義センターが、ソグにある教育キャンプの収容されていた仏教僧についての報告を公開した。一般信徒も僧侶や尼僧とともに収容され、軍事訓練をさせられ、ダライ・ラマを批判し、中国共産党の歌を歌うことを強要された。ある僧侶によると、軍事訓練の後、女性、特に尼僧たちは、彼女たちが疲れて抵抗力を失っているのをいいことに虐待され、性的暴行を受けた。
「訓練中に多くの尼僧たちが、失神してしまいます。刑吏たちは、意識の無い尼僧たちを建物の中に連れて行き、胸や体中を撫でまわし… 夜になると、彼らは尼僧たちの房で夜を過ごすのです」と訴えた。この僧侶は、女性の収容者たちから「刑吏たちが尼僧の寝室で、意識の無いに彼女たちの上に乗るのです」と告げられたという。
このような刑吏たちの行為に対して抗議しようとした男女の受刑者は厳しく処罰された。「ひどい拷問を受けました。刑吏たちは、彼らが気絶すると、顔に水をかけて目を覚まさせ、また拷問する。それを繰り返した後で、ホースで体中に高圧の水をかけ、電気棒を使って、体に黒や青の斑点ができるまでたたき、半死状態にしてしまうのです」。
性的暴行は、刑吏たちの欲望を満たすためだけではない。カトリックのLa Croix International が報じたように、思想改造のための手段とされているのだ。チベット自治区では、尼僧に対する組織的な性的暴行が何十年も続いている。
それだけではない。中国では、活動が禁止された宗教団体の”女性囚人”も”性的暴行を受けている。「法輪功」は、中国の刑務所で女性活動家に対する組織的な性的虐待が行われている、と報告している。「全能神教会」についても、私の著作の中で、警察官に性的暴行を加えられ、虐待されて死亡した女性信者について、信頼できる情報をもとに書いている。新疆ウイグル自治区のイスラム教徒の女性が同じような形で犠牲となりつつある兆候がいくつもある。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日6言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。