*政権に従わない宗教施設は”星ゼロ”とし、活動停止
中国中央部、河南省 の某県 で、2019年3月から、カトリックの”地上教会”など5つの公認宗教 に属する全施設に対し、”5つ星の評価”制度を導入した。同県の党統一戦線工作部が発行した文書『宗教活動施設の星評価の方策』によると、95ポイント以上を獲得した宗教施設のみに”星5つ”が与えられる、とされている。得点が90ポイントから94ポイントの施設には”星4つ”、85から89ポイントの施設には”星3つ”、80から84ポイントの施設には”星2つ”、75から79ポイントの施設には”星1つ“が与えられる。
得点が50ポイントから74ポイント以下の宗教施設は、1年間、全ての活動を停止させられ、「修正」を行わなければならない。施設の管理委員会の構成を変更する必要もある。この条件は、信者の投票で委員を選出する規定の手法と矛盾する。基督教両会と政府は委員の任命及び解任の権利を持たない。「修正」を拒む宗教施設、または2年連続でポイントが50を下回る宗教施設の登録証は取り消される。
河南省の県が発行した文書『宗教活動施設の星評価の方策』
この文書は、宗教施設の「活発な管理」を実施するため、「四半期ごとに星評価を行う」と規定している。信者にとっては、このような管理は実際には「活発な脅威」を意味する。教会を守るために常にプレッシャーに晒されるためだ。
*十字架撤去に抵抗など”不祥事”はアウト
宗教施設内にネオンの電灯、拡声器、照明つきの十字架が見つかった場合、あるいは、宗教色の濃い対聯やその他の物品が信者に配布されていることが判明した場合、“持ち点”から10ポイント差し引かれる。また、聖職者が正当な理由なく、政府や基督教両会が計画した学習会、会議、研修に出席しない場合も、同様だ。
信者が政府の宗教に関する政策、法律及び規制を適切に把握していない場合、5ないし10ポイント引かれる。中国共産党 の党員が仕事とは関係なく教会を訪れていたことが見つかった場合は、5ポイント引かれる。
一部の「不祥事」を起こすと、宗教施設の”持ち点”はゼロとされ、「直接否認」が発動される。この不祥事には、
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政府機関からの命令に背く ・十字架撤去及びその他の当局による懲罰に対して集団で抵抗する ・政府が「邪教」に指定した宗教団体の信者及び海外の宗教団体の信者と連絡を取り合う、または引き入れる ・日曜学校を運営する ・冬季/夏季キャンプを主催する-等が含まれる。
*”家庭教会”通報すれば加点
この文書はポイントを上げ、評価を改善することが可能な4つのケースを紹介している。まず、「積極的に違法な宗教活動、邪教の信者及び海外の潜入を通報」すると、1回の通報につき5ポイントが与えられる。要するに、教会が閉鎖に直面しても、活動中の 家庭教会 の集会所を通報すれば、閉鎖を免れる。これは、三自教会 と家庭教会及び外国が関連する教会との間で確執を誘発する中国共産党の方針と一致する。
河南省のある地域の三自教会。(写真:インターネットより)
宗教施設が地元の住民と良い関係を維持し、調査中に誰も問題を指摘しなかった場合、5ポイントが加算される可能性がある。宗教施設が法律及び規制に従い、上級の管理機関の命令に常に従い、さらに宗教事務を担当する現地の当局から良い評価を受けている場合、5-10ポイントが与えられることがある。
また、教会が『党を愛し、国を愛せよ』に関連する内容を説教に加え、活発に教会の「中国化」、つまり「積極的に社会主義社会への適応を推進」している場合、さらに5ポイントが加算される。
*”社会信用システム”と密接に関連
宗教施設の得点評価は、悪名高い社会信用システムと密接に関連しているようだ。2020年の完全な実施を目指すこのシステムは、全市民を追跡し、得点で社会的な評価を決めるものだ。このスコアは、移動、職場での昇進、車や不動産の購入、さらには子供が通学可能な学校の種類を決定する。
「品位のある文化」を作り、「社会全体の信頼度」を引き上げるためのツールと政府が表現するこのシステムは、実は中国政府が市民を常に監視し、管理するための新たな手段に過ぎない。
信仰を持つ者、そして、宗教の施設は中国では既に厳しい監視に晒されている。社会信用及び宗教施設の得点評価が実施されると、政権に反対していると少しでも示唆する行動は数値化及び記録され、最終的に政府公認の宗教施設ですら罰を受け、閉鎖に追い込まれる可能性がある。
中国共産党が、あらゆる類の登録及び得点評価システムを用いて、市民の全ての行動を管理し、航空券の購入等、許可されている行動に制限を課すことで、信仰を持つ者や反対派を弾圧していることは、多くの証拠で立証されている。
*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日8言語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。