・インドの司教が修道女強姦で、検察当局に起訴される(Crux)

(2019.4.10

 ムンバイ(インド)発ー修道女に繰り返し性的暴行を加えていたとして訴えられ、検察当局から取り調べを受けていたインドのカトリック司教が9日、強姦その他の罪で起訴された。起訴されたのは、インド北部パンジャブ州のジャランダール教区長、フランコ・ムラッカイ司教で、罪状は強姦罪の他、不法監禁、脅迫、異常性交、権限の不当使用の罪を犯した、というもの。起訴までに、検察当局は司祭11人、修道女24人、司教3人を含む83人から事情を聴取した。

 ムラッカイが警察当局に逮捕されたのは昨年9月。2014年から2016年にかけて13回にわたって強姦された、との訴えを修道女本人から受けた警察当局が一か月の捜査の後、強姦容疑で逮捕した。修道女はパンジャブ州に本部のある「Missionaries of Jesus」に所属しているが、修道会のケララ州にある修道院で強姦された。ムラッカイはケララ州出身だ。

 彼は逮捕された当初から容疑を否認し、逆に、「自分が、既婚男性と関係したという彼女の問題を調査し始めたことに、復讐しようとしている」と主張、警察当局はこれを否定し、彼女の家族も司教を相手に訴えを起こしていたが、昨年10月にいったん釈放されていた。(教皇フランシスコは昨年9月にムラッカイのジャランダール教区の司牧責任者としての職務を一時解除し、同教区の司牧をムンバイ教区の引退補佐司教に任せる措置をとった。)

 ムラッカイは、インド国内で裁判に付される初の司教となり、裁判は、カトリック信徒が総人口の3パーセント以下というこの国の教会に注目を集めることになりそうだ。

 「Save Our Sisters」の支援を受けた修道女のグループが、ケララ州の司教にこの問題に対する教会の対応に抗議しており、グループの一人の修道女は9日、記者団に対して「大きな騒ぎが起きない限り、今回のような起訴に持ち込むこともできませんでした。私たちは正義が行われることを信じています」と語った。

 また、現地のある司祭は地元テレビの取材に対し、「これは勝利ではありません。『Save Our Sisters』は、訴えられた人は、宗教によって守られるのでなく、訴えらえた人として扱われることをいつも信じてきた… 今回の起訴は、修道女たちに賛同し、正義を求めるケララ州の人々の支持を受けて実現したのです」と説明した。

 訴えを起こした修道女は現在、警察の保護下にある修道院で生活しているが、現地のオンライン・ニュース Scroll.in が昨年12月に公開した彼女とのインタビューによると、警察に訴えたのは「これまで、どの修道女もそうせばならないことがなかった」ためだった、という。

 インタビューは彼女を支持し、同じ修道院で生活する数人の修道女に対しても行われ、44歳になる修道女は、彼女が度重なる被害を受けてから訴えるまで長い時間がかかったことについて、「急いで助けようとしたのですが、当初は(注:訴えに必要な証拠が)何も見つからなかったのです」とし、自分自身は警察に行きたくなかったが、教会が彼女を助けてくれなかった、と事情を説明した。そして「今でも、私たちの苦情を訴えることにできる制度が教会の中に作られるべきだ、と思っています。そうすることで、教会は公に恥をさらすことはなくなるでしょう」と訴えた。

 一方、 Missionaries of Jesus 自体は、ムラッカイを強く支援しており、彼を「”無実 の魂“であり、訴えは根拠がない」と主張している。

 ケララ州には総人口の18パーセントに当たる610万人のキリスト教徒がおり、うち60パーセントがカトリック。ローマ・カトリック教会と東方典礼のシリア=マラバル典礼カトリック教会シリア=マランカラ典礼カトリック教会に分かれているが、ケララ州出身の司祭や修道士がインドの他の地域にも多く活動していることから、同州のカトリック教会はインド全土に強い影響力を持っている。

 今年2月には、ケララ・カトリック司教会議が、安全な環境を確保することについての指針をまとめ、州内の全ての教会、修道会などに通達した。指針では、未成年や成年の弱者に対する性的攻撃やハラスメントに対して、司教たちは、例外なく厳格な措置をとること(”zero torelance”)、事前防止の措置をとること、違反者に対して聖職者としての罰を与えること、未成年に対する虐待は法に従って当局に通報すること、被害者には注意と同情をもって対応すること、性的虐待事案を扱う制度を作ること、を約束している。

 ただ、教会当局は、指針の発表は、ムラッカイの問題を受けたものではない、とし「私たちは、この問題が起きる前から、指針策定の作業を始めていた。指針は、個々の司教、教区に通達されました」と現地テレビ局に語っている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

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2019年4月11日