・インドの二つの教会が復活祭の夜に襲撃、マリア像など破壊される(CRUX)

(2018.4.4  Nirmala Carvalho)

A vandalized statue of the Virgin Mary in Bihabandh, India. (Credit: Father Albert Xess.)

  ムンバイ(インド)発―インドのオリッサ州ルールケラーで、復活祭の日曜日1日夜 、二つのカトリック教会が事前に準備された計画的な襲撃を受けた。

 このうち、ビハバンド村の教会では、聖具室に隣接する教区事務所が焼き討ちにあい、マリア像が破壊された。サランガバハールの教会では入口の門のそばの聖母洞窟が破壊され、マリア像が持ち去られ、幼きイエスの像が壊された。Churches vandalized in India on Easter Sunday

 オリッサ州の住民の93パーセント以上がヒンドゥー教徒で占められいる。キリスト教徒は3パーセントでカトリック教徒の大部分がカースト制度の外側にあって 差別を受けている人々だ。

 ルールケラー教区のキショレ・クマール・クジュール司教はCruxに対して「今回の襲撃は周到に計画されたもので、二つの教会は7,8キロメートルほど離れていますが、1日夜のほぼ同時刻に襲われました。キリスト教徒の共同体に反対する同じグループの犯行です」と説明した。

 オリッサ州の同僚司教への手紙で、クジュール司教は、襲撃は「この野蛮な事件に関与した人々がこの地域の平和を妨げ、キリスト教共同体に対する嫌悪をあおるために行ったのは明白です」とし、「他の人を愛しなさい、というイエスの戒めを守って、キリスト教徒の共同体は平和と愛の中で暮らし、地域の人々、とくに社会の片隅で恵まれない、貧しい生活をしている人々を、慈しみと同情をもって助けてきました。特に貧しい人々の教育支援、病いなどで苦しんでいる人々の世話、慈善活動をしてきました」と理不尽な襲撃を嘆いた。

 司教によると、ルールケラー教区でこのような教会襲撃はこれまで一度もなかった、と言い、「この地域では、様々な宗教、文化、言語の人々が何年も、ともに平和に暮らしてきました。今回のような悪意に満ちた行為が二度と繰り返されないように希望し、信じます」と訴えている。

 ルールケラーはこれまで平和を続けてきたが、オリッサ州そのものは、インドの歴史の中でキリスト教徒を狙った暴動が頻発してきた地域だ。2008年には、東部のカンダマルでヒンドゥー過激派が主導する暴動が相次ぎ、約100人が死亡、数千人が負傷し、300の教会と6000の家屋が破壊され、5万人が家を追い出され、近くの森などに逃げ込んで、飢えや蛇にかまれるなどしてさらに多くの人が命を落としている。

 今回の暴力行為について、カタック・ブンバネシュワール大司教のジョン・バルワ師は「このような襲撃はインド社会では起きてはならない行為であり、私たちの宗教心を傷つける冒涜は続いてはならない」と批判、今年はカンダマル暴動から10周年にあたっていることを指摘したうえ、Cruxに対して、「インドに住む一人ひとりがインド社会の特質を堅持するように力を合わせる必要があります」「インドの片田舎のささやかな地域であっても、宗教の自由、礼拝の自由は尊重されねばならず、人間の尊厳と正義は守られねばなりません。今回のような出来事は、私たちの国の恥であり、不名誉なことでしかないし、絶対に繰り返されてはならない」と強調した。

 大司教によると、4月3日にオリッサ州のナヴィーン・パトナイク知事らと会談の結果、保安部隊がそれぞれの教会に送られた、といい、「また、私は教区の信徒たちに平和を祈るようにお願いしました。私たちは裁判所とインド市民に認められた様々な方法を通して正義を追求し、平和を祈ります」と大司教は語った。

 大司教はまた、今回の惨事を受けクジュール司教に送った手紙で、「苦痛を苦悶の時を通して」ともに祈ることを約束し、「聖なる日に行われた蛮行は、私たちが信仰において成長することで、悪魔が敗北し、あきらめを感じるのを確かなものとするのです」と励ました。

  Cruxに対して、大司教は現在のポストについて7年の間に、信徒たちが苦難と試練を受けながらも信仰を育てているのを目の当たりにしてきた、と述べ、「聖金曜日の教会での儀式には1万5000人を超える信徒が参加し、キリストの受難を黙想して、静寂の時を過ごしました」「私たちの信仰が強まっていくのを見て、サタンは羨望に身を焼かれたことでしょう」と語った。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2018年4月5日