・「米朝合意はとん挫する」が7割超-米朝首脳会談・有識者アンケート(言論NPO)

6月12日、シンガポールで歴史的な米朝会談が行われ、米朝両国は朝鮮半島での永続的かつ安定した平和体制の構築に向けて共同で取り組むこと、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化向けて努力することにコミットするなど、4項目について合意しました。そこで、言論NPOは13日から14日かけて、米朝会談に関する有識者アンケートを実施しました。

調査の概要

これまで言論NPOの活動や議論形成に参加した経験のある有識者3000人を対象に、2018年6月13日から14日かけてアンケートの回答を依頼し、回答のあった285人の回答内容を分析しました。

回答者の属性

米朝会談に関する有識者アン.gif

※各属性で示されている数値以外は無回答の割合。この頁以降、数値は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%とならない場合があります。

今回の米朝会談の成否について、過半数が「どちらともいえない」と回答

まず、今回の米朝会談が、北朝鮮の完全な非核化に向けて成功したかを尋ねたところ、「どちらともいえない」との回答が51.9%と半数を越え、多くの有識者は今回の会談の成否を保留しました。
一方で、「成功した」との回答も29.8%と一定程度存在しています。

【今回の米朝会談の成否】
問1.米朝会談を前にトランプ米大統領は、北朝鮮の完全な非核化に向け「チャンスは1回限りだ」と発言していました。あなたは、朝鮮半島の完全な非核化に向け、今回の米朝会談は成功したと思いますか。【単数回答】

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多くの有識者は何らかの進展を感じつつも、「完全な非核化」に対しては懐疑的

次に、今回の米朝間で署名された合意文書によって、朝鮮半島の完全な非核化の道筋を描けたかとの問いに対しては、「解決の一歩とはなったが、最終的な解決は今後の協議次第で先行きが見えない」(48.4%)との回答が最多となり、「前身はあったが、完全な非核化は未解決のまま」(27.0%)が続き、多くの有識者は何らかの進展を感じつつ、完全な非核化に懐疑的です。
一方で、「完全なる非核化に向けて大きく前進した」との回答は6.3%にとどまりました。

【米朝会談での合意は朝鮮半島の完全な非核化の道筋を描けたか】
問2.今回の合意文書で、米朝両国は朝鮮半島での永続的かつ安定した平和体制の構築に向けて共同で取り組むこと、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化向けて努力することにコミットするなど、4項目について合意しました。あなたは、この合意によって朝鮮半島の完全な非核化の道筋を描けたと思いますか。【単数回答】

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「何らかの理由で今回の合意はとん挫する」との回答が7割を超える

続いて、トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長(以下、「委員長」)が、今回の合意を責任を持って実現させることができるかとの問いには、「途中までは動くものの、トランプ米大統領の任期中に解決の目途はつかないと思う」(44.6%)との回答が最多で、「非核化に向けた作業は進むが、途中でうまく行かなくなると思う」(26.7%)と回答が続き、7割を超える人が、今回の合意は何らかの理由でとん挫すると考えている人が圧倒的でした。
「最後まで責任を持って解決のめどをつけると思う」との回答は14.0%にすぎません。

【米朝両首脳は今回の合意を実現させることができるか】
問3.あなたは、トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長は今回の合意を責任をもって実現させると思いますか。次の中から【1つだけ】選んでください。【単数回答】

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「金正恩委員長がトランプ米大統領よりも有利に交渉を進めた」と考える人が半数

今回の合意交渉では、金正恩委員長の方がトランプ米大統領よりも有利に交渉を進めたと考えている人が50.5%と5割を超え、トランプ米大統領の9.1%を大きく上回りました。
一方で、「どちらも歩み寄り玉虫色の合意」(33.3%)と考える人も3割を超えました。

【米朝両首脳のどちらが交渉を有利に進めたか】
問4.今回の合意交渉で、トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長のどちらが交渉を有利に進めたと思いますか。【単数回答】

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北朝鮮の核兵器開発問題について、「解決は困難」が4割、「10年以内に解決するだろう」との楽観的な意見も4割弱

北朝鮮の核兵器開発問題は、最終的に解決するのかと尋ねたところ、4割を超える人が「解決は難しいと思う」(42.8%)と答えました。
一方、「今年中の解決に向けて目途が見える局面になると思う」との回答は6.3%にとどまったものの、2年度、5年後、10年後と10年以内には目途がつくだろうと考えている人は合計で38.6%と4割弱おり、いずれは解決するだろうと考える人も同程度存在しています。

【北朝鮮の核兵器開発問題の解決】
問5.あなたは、北朝鮮の核兵器開発問題は、最終的に解決すると思いますか。【単数回答】

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米朝会談について、「両首脳の評価が上がった」と回答する人が4割に迫る

今回の米朝会談を受けて、トランプ大統領、金正恩委員長の「両者の評価が上がった」と回答した人は39.3%と4割に迫りました。
一方で、「金正恩委員長の評価が上がった」(24.2%)との回答は、「トランプ米大統領の評価は上がった」(3.5%)を大きく上回っており、今回の米朝会談については、全体的に金正恩委員長の評価が上がったとの声が多数となりました。
但し、「はじめから評価していない」(27.7%)も一定数存在し、「両者の評価はむしろ下がった」との回答は3.5%にとどまりました。

【米朝会談後の米朝両首脳の評価】
問6.今回の合意交渉で、トランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の評価は上がりましたか。【単数回答】

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日本としては「拉致の解決を前提としつつ、日朝国交正常化に向けて動く」との回答が最多

今回の合意文書の実現に向けた日本の取るべき対応としては、「拉致の解決を前提としつつ、日朝国交正常化に向けて動く」(26.7%)が最多となり、「目的実現のために、多国間協議の提案をする」(21.8%)、「完全なる非核化に向けて、米国の強い姿勢をサポートする」(17.2%)が続きました。
一方で、「非核化に向けた費用の負担などの経済面でのバックアップ」については5.3%にとどまりました。

【合意文書の実現に向けた日本の対応】
問7.あなたは、今回の合意文書の実現に向けて、日本はどのような対応を取るべきだと思いますか。【単数回答】

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2018年6月14日