・「”暫定合意”で、中国の”地下教会”は消滅の恐れ」と香港の宗教学者警告

HK scholar says underground China Church may vanish

Guest speakers Candy Chan (left), Cardinal Joseph Zen (midddle) and Professor Chan Shun-hing listen to a question from the floor during a question-and-answer session during a seminar held at the Baptist University of Hong Kong on March 15. (ucanews.com photo)

(2019.3.23 カトリック・あい=ucanews.comより)

 昨年9月にバチカンが中国政府と署名した司教の承認に関する”暫定合意”が引き起こした失望と憤りは、中国における”地下教会”の緩やかな消滅をもたらすだろうー

 アジア地域の有力カトリック系ニュース・ネットワークucanews.com の22日香港発報じたところによると、「中国・バチカン合意の下での中国のカトリック教会」をテーマにしたセミナーで、香港バプテスト大学宗教・哲学科の陳順馨教授が語ったもの。

 セミナーは15日に香港で、同学科と中国キリスト教研究センターの共催で開かれた。陳教授は、この暫定合意により「”地下教会”の人々は失望し、バチカンに裏切られた、と感じています」と述べ、刑務所で人生の大部分を過ごした多くの司祭たちが、高齢にもかかわらず、元の教会に戻って聖職者としての使命を果たしたい、と強く望んでおり、「それは彼らが自らの良心を強く保ち続けているから」だが、今や、そのような姿勢が尊重されることはない、と語った。

 そして、「彼らの献身と勇気を認めることなく、何をもって、彼らに迫害を耐えるように励ますのでしょう」と参加者に問いかけ、このような宗教的な認知が中国の”地下教会”をこれまで40年にわたって維持してきたが、長きにわたって辛酸をなめた末に、突然、「共産党政権と妥協が成立した」と言い渡された彼らの衝撃を思いやった。

 ucanews.comによると、このセミナーには、中国共産党政権によるキリスト教など宗教への規制強化など最近の動きに繰り返し警鐘を鳴らしている陳日君枢機卿と、暫定合意に関するテレビ番組のディレクター、キャンディ・チャン氏も、ゲスト・スピーカ-として参加した。

 この番組は香港の公共放送、香港ラジオ・テレビ(RTHK)が制作、1月に放送されたもので、中国本土の多数の司祭と教区信徒にインタビューし、暫定合意についてどう考えるか、を聞いた。チャン氏は、その答えを聞いて、暫定合意を契機に「教皇座の権威が弱くなった」と感じた、と語った。また、インタビューに答えた一人の司祭は、暫定合意の内容が公開されないことに疑問を表明したが、これは”地下教会”の司祭が「教皇が不可謬だ」という考え方に異議を申し立ていることの現れ、と指摘。

 陳教授も、同様の思いを中国の多くの司祭から聞いた、と語り、現在、暫定合意支持と拒否で”地下教会”の司祭、信徒たちの意見が大きく割れており、否定派は中国共産党と国の規制・監督下にある天主愛国協会(CPA)の指導を受けるのを拒否している、と説明。また、”地下教会”の司祭たちは教会での仕事を離れ、公開の共同体への参加を拒否する動きに出ており、地下教会の緩慢な消滅につながるだろう、と述べた。

 チャン氏は、このテレビ番組に出た若い人々が語っていたのは「もし、”地下教会”がバチカンの支援を得られなくなったら、司祭は誰も中国での教会活動を続けられなくなるだろう」ということだ、とし、またある若い信徒は「フィリピンで神学を学び、司祭として働くことを考えている」と語った、と説明した。

 陳教授は、中国で独立系のカトリック教会が勃興し、バチカンと関係を断ったらどうなるのか、と問い、地下教会の信徒の多くは「自分たちの信仰に誠実に、神に忠実であり続けるが、教会の既成の権威から離脱し、自分たち自身の教会を育てていくかも知れない」と述べた。

 

 

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2019年3月23日