・「教皇がロヒンギア和平会議を検討」とミャンマーの枢機卿語る

Myanmar cardinal says Pope Francis considering Rohingya conference

Cardinal Charles Bo in a file photo. (Credit: Andrew Medichini/AP.)

 (2018.5.23 CRUX  Contributor Nirmala Carvalho
ムンバイ(インド)発―教皇フランシスコがミャンマーの「ロヒンギア危機」に対処する会議の開催実現に支援を検討している。同国のカトリック教会指導者、チャールズ・マウン・ボー枢機卿が今月初め、同国司教団を率いてバチカン定例訪問し、教皇と会見した結果を明らかにした。
 ボー枢機卿は2003年からヤンゴン大司教を務めており、2015年に人口5000万人の同国初の枢機卿に選ばれていた。同国では昨年8月以降、2015年の総選挙でノーベル平和賞受賞者のアウンサンスーチー女史が主導する民主政権が発足して以来最悪の政治・社会的危機が続いている。その中で、軍主導のロヒンギア地区に住むイスラム系少数民族に対する弾圧により、70万人以上が故郷を捨てることを余儀なくされ、難民となって隣国バングラデシュに逃げ込み、悲惨な生活をおくる事態が深刻化している。
 23日Cruxとの会見に応じたボー枢機卿は、バチカン定例訪問について語る中で、教皇がロヒンギア危機の解決を助けるための和平会議の実現を支援していることを示唆し、「ロヒンギア地区の深刻な状況について、教皇は憂慮されています。人々は国を追われ、ミャンマー、バングラデシュ、インド、インドネシア、そしてマレーシアをさまよっている。その数は全部で約200万人にもなる。どの国も彼らを進んで受け入れようとしません。イスラム系のメディアは強い影響力がある。しかし、彼らを受け入れるかどうか、と問われると、口をつぐんでしまう」と訴えた。
 そして、枢機卿は、教皇との会見で、現状打開のための教会としての取り組みについて、教皇に次のように問いかけたことを明らかにした。「バチカン国務省を通して、悲惨な状況に置かれている人々を支援するための、国連、欧州連合を含めた関係国、関係機関を含めた会合を招集することが可能でしょうか」。そして、「今のところ、誰もがミャンマー政府、軍と仏教徒を非難しているように見えますし、(紛争解決への)支援と提案を考える人は誰もいないのです」と訴えた。枢機卿がCruxに語ったところによれば、教皇は、国務省に、そのような会議の開催が可能かどうか、聞いてみる、と回答されたという。
 教皇はかねてから、ロヒンギアの状況について深く憂慮されており、公の場でたびたび、この問題について言及されている。昨年暮れのミャンマー、バングラデシュ訪問では、バングラデシュ領内で難民生活を送っているロヒンギアの人々の代表とお会いになり、彼らの置かれた悲惨な境遇に深く同情され、「すべての人々、あなた方を迫害している人々、誤ったことをしている人々、そして何よりも、この世界の無関心について、私はあなた方に赦しを乞います」「私たちが求める赦しを与えてくださるように、あなた方の寛大な心に訴えます」と彼らに呼びかけていた。
 ボー枢機卿によると、教皇はミャンマー司教団との会議で、昨年の訪問の際に示してくれた暖かい歓迎と気配りについて感謝を述べたが、枢機卿は「教皇の訪問は、聖霊の働きによるもの」とし、「もともとは、インドが訪問先に予定されていました。しかし、(インド政府から)前向きの反応が得られず、その時、ミャンマー訪問の必要性を直観されたのです。訪問先を変えたことを、教皇は喜んでおられた」という。そして、ミャンマー訪問にあたって、教皇は、軍の指導者や強硬派の仏僧を含めて誰との会見の拒まれなかった。
 また、「我が国の政治状況に関連して、ある司教はミャンマーのために、特にカチン県の紛争について祈るように希望しました」。カチン県はミャンマーの最北部にあり、キリスト教徒が人口の大半を占めているが、武装勢力が過去数十年にわたって、独立を目指す闘争を続けている。今年4月にも、少なくとも7400人が自宅を追われ、5月には国連が、同県で平和を求めるデモ隊が逮捕された問題を取り上げ、政府に警告する報告書を発表している。「教皇は、司教の希望を受け入れ、司教団にご自分に対する提案を文書にしてくれるように求められました」と枢機卿は説明した。さらに、枢機卿はこの会議で、教皇に「ご訪問は、ミャンマー全土に勇気を与えていただきましたが、今なお、教皇の支援と指導を必要としています」と訴え、ミャンマーの指導者たちに「あなた方には、この国の平和に責任があります」とする旨のメッセージを送ってくれるように希望を述べた。
 会議では、また教皇は中国における教会のおかれている状況について言及された。中国はミャンマーと国境を接しており、歴史的にミャンマーに影響力を持っている。「教皇は『いつの日か、中国で、苦しみを受けている兄弟姉妹と会えるように、と祈っています』と話された」という。枢機卿は、カトリック教会と中国の関係を進めるには、バチカン国務省を通した外交、個人的な友好関係、そして文化交流、の三つの道がある、とも述べた。

 最後に、この会議では、教皇の日常生活についても話題になり、ある司教が教皇に一日のスケジュールを聞いたところ、教皇は「ええ!毎時間、私がしていることを教えろ、というのですか?そう、私はとても元気です。夜の10時には電気を消し、朝の4時に起きます。私の歳では(睡眠6時間で)十分。ぐっすり眠り、一日、喜々として働いています。時には、よく眠れないことがありますが、そんな日は、ちょっと元気がありません」とお答えになった。

 別の司教は「教皇が居宅にされているサンタ・マルタの家での毎朝のミサでの説教が素晴らしい、よく、この説教を(自分の説教に)拝借しています」と述べたのに対しては、「霊感を受けたと感じる時に、お説教をします。でも、聖霊が私に働かない時には、黙っています」と答えつつ、「説教の拝借」の告白について「税金をかけますよ!」と冗談を言われた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2018年5月24日