・フィリピンでまた司祭が殺害される―半年で3人の犠牲者

(2018.6.11 Vatican News  Robin Gomes)

  司祭の殺害が続いているフィリピンのルソン島中部、カバナトゥアンの教会で10日夕、日曜のミサを捧げようとしていたリッチモンド・ニロ神父が射殺された。このわずか数日前にもやはりルソン島のラグナ州で司祭が負傷する事件が起きたばかり。同国のカトリック司教協議会会長、ロムロ・バレス大司教は11日、声明を発表し、「司祭がまた一人、残酷な殺され方をしたことを深く悲しみ、強い衝撃を受けている」としたうえで、「私たちは、今回のきわめて邪悪な行為を強く断罪する」と非難した。

 ニロ神父は司祭叙階17年の教会の中堅で、カバナトゥアン教区のバランガイ・マヤモット教会で夕方のミサを捧げようとした際に、複数の犯人に襲われた。犯人たちは殺害の後、車で逃走した、という。司祭の犠牲者は、昨年12月4日にルソン島中部のヌエバ・エシハ州で射殺されたマルチェリト・パエズ神父、4月29日に同島のカガヤン州で射殺されたマーク・ベンツラ神父に次いで、この半年で3人目。バレス大司教は、警察当局に対して「速やかに捜査を進め、この憎むべき罪を犯した悪人を追い、裁判にかける」ように強く求めた。

 今月に入って、6日には、ラグナ州の観光地、カランバ市の聖ミカエル教会で、レイ・ウルメネタ神父が何者かに狙撃された。元警察付き司祭だった神父は、左背中と左手を撃たれ、近くの病院に搬送されて一命をとりとめた。

 司祭の犠牲者が相次いでいることについて、カバナトゥアン教区のソフロニオ・バンクド司教も、同僚のニロ神父の殺害を強く非難し、「この国における『暴力のエスカレート』と『刑罰逃れの文化』は、身を守るすべのない聖職者にも向けられている」と訴えた。そして、教区の信徒たちに、愛するニロ神父の霊と教会共同体の癒しと安全、そして、聖職者たちのために祈るように求めた。さらに、「司祭も人も、誰一人として、残虐で、無礼な、犯罪逃れの行為で殺されることがあってはならない」「どの司祭も、不完全な存在であっても、教会に与えられた神の賜物であり、『キリストから遣わされた者』として敬意をはらわねばならない」「司祭を殺害することは、どのような動機や理由であろうとも、非キリスト教徒、非人間であるだけでなく、『非フィリピン人』だ」と批判した。

 また、フィリピンの人権団体Karapatanも11日に声明を発表し、カトリック司祭、ジャーナリスト、そして検事に対する襲撃を「フィリピン国民の間に、犯罪逃れの気風が強まっていることの明確なしるし」と強く批判している。今月4日、マドンナ・ジョイ・タンヤグ検事が首都マニラ近郊のケソン市で、刃物で刺し殺された。妊娠中だった。7日にはダバオ・デル・ノルテのパナボ市で、コミュニティ新聞の発行者、デニス・デノラ氏が射殺されている。Karapatanのスポークスウーマン、クリスティーナ・パラバイ女史は「当局が(麻薬犯罪に関係する人間の殺害を進めている最中に)これらの一連の殺人・凶悪犯罪の真相を究明するか、極めて疑わしい」「政府は自分の過失のとがめを受けることを拒んでおり、政府の汚職、残虐、傭兵によって、さらに事態を悪化させている」と政府、捜査当局の対応を非難した。

 こうした批判に応えて、フィリピン国家警察はニロ神父殺害事件捜査のための特別チームを編成。オスカル・アルバヤルデ長官は11日の記者会見で、「全国の地方警察の責任者に、すべての司祭と『協力』するように命じた」とし、各地の教会の司祭たちを訪ね、命の危険に去られているかどうかを聞いて回れ、と指示した、と説明した。

(翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

 

 

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2018年6月13日