・ソウルで、アジアの教会指導者も参加して「平和分かち合いフォーラム」-日本の教会は?

(2018.9.8 「カトリック・あい」)

 ソウル平和民族分かち合い研究所主催によるカトリック・ソウル大司教区国民和解委員会「2018年平和分かち合いフォーラム」が1日から4日にかけ、韓国・ソウルで開かれた。

 今年で3回目を迎えるフォーラムには、国外から、アジア司教連合会長のオズワルド・グラシアス=インド・ムンバイ大司教、国際カリタス議長のルイス・タグレ=フィリピン・マニラ大司教、チャールズ・マウン・ボー=ミヤンマー・ヤンゴン大司教の各枢機卿、セバスチャン・フランシス・ショー=パキスタン・ラホール大司教など、アジア各国から教会リーダーが招待され、貧困と差別の環境の中で愛と正義を実現し、迫害の中で和解と平和を達成するためのアジアのカトリック教会の努力を共有する場となった

  31 日の前夜祭で幕を開けたフォーラムは、9月1日の人間の尊厳と平和韓半島の道」をテーマとした本会議で、ソウル大司教のヨム・スジョン枢機卿が基調演説を行い、「2014 年に訪韓された教皇フランシスコは、民族の和解と一致のために祈りと対話、対北朝鮮人道支援に一層努力するよう励まされました。その努力の一環として、ソウル大教区は祈りの運動、世界青年平和巡礼、そして今回のフォーラムを開催しました」とし、「今回の会合がアジアにおける人間化、福音化のための教会の連帯と協力の場になることを期待します」と語った。

 続いて開かれた「人間らしい生活をテーマにした第1-2 のセッションでは、アジア各国の教会指導者たちが、貧困と差別の環境の中で愛と正義を実現して迫害の中で和解と平和を達成するための各国教会の取り組みを紹介した。

 さらに「共に生きる」「平和な暮らしをテーマにした第3-4 セッションでは、この分野の学者や専門家活動家が、人間の尊厳が保障される真の平和を作るために、国際社会と教会がどのような役割をすべきかを議論

  日は「ともに見る平和の夢をテーマに、各国の教会指導者が対立と葛藤の現場で、教会が平和と人権を拡大しキリストの精神を実践するためにどのように努力してきたのか、朝鮮半島での経験から得た教訓と共有できるものは何か-について特別対談が行われた。

 また、4日には、海外から参加したグラシアス、ボー両枢機卿とショー大司教が南北朝鮮国境の板門店を訪問、南北首脳が同地で会談し、記念植樹した場所などを見て回った。夕には、参加者全員で民族の和解と一致のためのミサを捧げ、半島の平和のためアジアの教会全体の願いを込めて祈った。

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 また、9.7付けのucanewsによれば、今回のフォーラムの一連の会議で取り上げられた問題は、ミヤンマーからバングラデシュに脱出する大量のロヒンギア・イスラム教徒難民の問題から、パキスタンにおける過激派宗教集団による暴力、朝鮮半島の和平の動きまで、現在起きている多岐の問題にわたり、とくに不利な立場に置かれている少数派の差別、対立をなくすにはどのような努力が出来るか、について議論が集中した。

 パキスタンのショー大司教は、国内で起きている異宗派や少数派に対して振るわれている暴力、イスラム教徒が国民の大部分を占める同国で何十年にもわたって繰り返されているキリスト教徒迫害、教会放火、最近でも4月にキリスト教徒の家族4人がイスラム武装集団に殺害されたことなど、現状を説明しつつ、教会が、平和を作り、人々を癒す存在として、宗教間対話を推進し、少数派を守る社会の実現に努めている、と説明。

 インドのグラシアス枢機卿はこれを受ける形で、「平和は、すべての人と国が追求すべき普遍的な価値を持つ…イエスの弟子として、私たちは、私たちの社会に秩序を取り戻すために橋を架け、調停者として働く必要がある」と述べた。フィリピンのタグレ枢機卿は、平和は人間の尊厳に対する大きな敬意を伴うもの、と指摘し、「このような視点で、(人と人、国と国の)関係構築が極めて重要になります。『私はあなたを必要としない』と言ったら、戦争になってしまう。真の平和を作るために、私たちは忍耐強く、赦しの姿勢を持たねばなりません」と強調した。

 民主政府成立後も軍部のイスラム教徒少数派への弾圧など強権政治が正されないミヤンマーのボー枢機卿は「キリスト教徒は、平和のために声を上げるのを、恐れるべきではない」とし、「弱く、傷つきやすい人々の代弁者として、キリスト教共同体は、不都合な真実を明らかにする必要がある…。持続可能な平和のために、私たちは人々の人間的な尊厳を守り、社会の不正と不合理を無くすために戦わねばならないのです」と訴えた。

  (写真はカトリック・ソウル大司教区国民和解委員会)

(以上の記事は、ソウル大司教区広報委員会の発表と、ucanewsの9月7日付けの報道をもとに、「カトリック・あい」が編集しました)

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「カトリック・あい」評論:韓国のカトリック教会が、アジア地域の平和のために、各国教会指導者の連帯と協調の場を作っているのに、日本のカトリック教会はそうした地域平和のための主導的役割を果たすどころか、この隣国で行われたフォーラムでも存在が伝えられていない。

 少なくとも報道されていない。日本の教会関係者の中には、「教会法では一国の司教団が他国の問題に口出すようなことを禁じている」との説明もあるようだが、その根拠としていると思われる教会法459条では「司教協議会の関係、とくに隣接する司教協議会との関係は、より大きな善(the greater good)を推進し、保護するように、育てられねばならない」としているだけだ。

 現在のような、国境を越えたテロ、暴力、迫害、宗教弾圧などが深刻化している世界で、他国の、他地域の、人々、教会、信徒が危機に瀕している時に、「他国のことだから」といって、ひたすら”干渉”と見られるのを避け、何もしないのが、「the greater good」なのだろうか。お互いの抱えている問題を率直に分かち合い、互いに助言し、人権の保護と平和な社会実現へ可能な分野で協力し合うことこそ、「the greater good」であると思う。今回のフォーラム開催もその第一歩だろう。

 生半可な政治・社会の現状認識のもとに、内外の環境が激変する現在もなお、十年一日のごとく「反憲法改正」「反現政権」など政治問題に踏み込み、実現可能な具体的対案もなく、それが教会の総意であるかのように叫ぶ方が、よほど、”greater good”とかけ離れているように思われるが、どうだろうか。

 

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2018年9月8日