・インド枢機卿、”強姦司教”の問題をバチカンと連携して取り上げへ(CRUX)

(2018.9.13 

ムンバイ(インド)-インドでカトリック司教が修道女を強姦した事件が大きな問題になっているが、同国のカトリック教会の最高責任者が、バチカンの担当者とともにこの問題に対処することを明らかにした。

 ボンベイ大司教でインド・カトリック司教協議会会長のオズワルド・グラシアス枢機卿が13日、Cruxとのインタビューで明らかにしたもので、近く、バチカン福音宣教省のフェルナンド・フィローニ長官とこの問題について話し合う予定だ。グラシアス枢機卿は教皇の枢機卿顧問会議のメンバーの一人で、前日まで開かれた同会議に出席のため、ローマに滞在している。

 インタビューで枢機卿は「(フィローニ長官とは)フランコ・ムラッカイ司教の問題を話し合う」と述べた。ムラッカイ司教は、2014年から2016年にかけて一人の修道女を繰り返し強姦した、として訴えられている。被害者の修道女は6月29日に彼女が住むケララ州の警察に被害を届け出、警察が捜査を開始しており、「私には司法権がないが、インドのカトリック教会にかかわる問題なので、バチカンの福音宣教省で取り上げられることになるでしょう」と説明した。グラシアス枢機卿はインド司教協議会のトップだが、個々の司教の規律に関する問題はバチカンに権限があるからだ。

 ムラッカイは北西部、パンジャブ州のジャランダ―司教。修道女が所属するイエス宣教修道女会の本部も同州にあるが、性的暴行があったとされるのは、ケララ州の同会修道院だった。彼は容疑を強く否認し、「彼女は自分が既婚男性と関係をもったという苦情を調べられた腹いせに、私を訴えたのだ」と主張している。

 ケララ州はインドで最もキリスト教徒が占める割合の高い州で、多くの司祭や修道女などを輩出している。問題の修道院は、同州出身の司祭が宿泊する施設を持っており、ムラッカイも同州を訪れた時に利用していた。

 ムラッカイは8月13日に居住地のジャランダ―で警察当局の捜査班から事情聴取を受けているが、警察当局は12日、ムラッカイに対して19日に出頭するよう求めた。担当刑事は「この事件には多くの矛盾があります。口頭の証言がもとになった古い事件です。多くの矛盾を検証しています。私たちの仕事は被害者と証人を保護することです」と語っている。

 ムラッカイはまた、11日のある会見で、訴えた修道女を「嘘つき」と呼び、警察当局の捜査には協力する、と述べた。ケララ州最大の都市、コチ市では被害者の仲間の修道女たちが、8日以来、ムラッカイに抗議する活動を続けているが、被害者が所属する修道会は10日に声明を発表し、ムラッカイを「申し立てで十字架につけられた『無実の魂』」として擁護している。

 被害者の修道女は今月初め、警察に被害を届け出るため、修道院の彼女のオートバイに乗ろうとして、ブレーキが壊されているのを発見した。また、届け出の後、電話で繰り返し殺害予告の脅しを受け、彼女の姉妹も脅された、という。このため、警察は12日に、彼女を保護下に置く措置をとっている。ケララ州政府の高官は「州政府は被害者の側に立ちます。心配する必要はない。適当な時に正しい判断をします。警察は証拠を集め、犯人たちを特定します。捜査は進んでいます。女性の謙虚さを損なうようなことは、誰にもさせません」と言明した。

 なお、グラシアス枢機卿はCruxに対して、自分がインドに帰国した後、司教団がこの問題について協議、調査することになる、と述べた。

 ムラッカイの問題は、現在、世界のカトリック教会に深刻な打撃を与えている一連のスキャンダルーチリでの多くの高位聖職者が関与した性的虐待隠ぺい問題、米ペンシルバニア州の大陪審が発表した何十年にもわたる多くの聖職者による性的虐待の調査結果、そして先に枢機卿の称号をはく奪されたセオドール・マカリックに対する司祭や神学生との性的関係の噂に加えての、幼児性的虐待の訴えーの一つに過ぎない。

 グラシアス枢機卿は12日まで行われた枢機卿顧問会議での聖職者による性的虐待の問題に関する議論に加わったが、教皇はこの会議の終わりに、全世界の司教協議会の会長たちによるこの問題についての会議を来年2月21日から24日まで開くことを提案し、決定した。

 枢機卿は、会議ですべきこととして「まず、この問題の深刻さを認識すること。次に、これまでの問題がどのように扱われ、被害者をどのようにケアしてきたのか、を議論し、最後に、これが最も重要ですが、今後、このような事態が起こらないようにする対策を考えることです」とCruxに語った。現在も生存している被害者のケアに関する文書の発出も話し合われるだろう、としている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

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2018年9月13日