・「バチカンはなぜ”地下教会”の司教、司祭の釈放を求めないのか」被害者家族の悲痛な訴え(Tablet)

(2018.10.11 Tablet  Rose Gamble)・・11日付けTabletの「News Briefing: the Church in the World」から一部抜粋

 「中国政府と暫定合意書に署名する前に、バチカンはなぜ、不当に逮捕、拘禁されている”地下教会”の聖職者たちの釈放を求めなかったのでしょうか」ーバチカンが先日、中国政府と同国内の司教任命について暫定合意したが、教皇に忠誠を誓い、中国政府・共産党の支配を受けるのを拒否している”地下教会”に属し、当局によって拘禁されている司祭の家族はと、バチカンの姿勢に強い疑問を表明している。

 中国北部、河北省の”地下教会”保定教区の劉洪剛神父は3年前に当局に逮捕され、消息不明。同じ保定教区では、素志民・司教が20年前に、中国政府・共産党の支配下にある中国天主教愛国協会への参加を拒んだ、として逮捕され、15年前にある病院で一度だけ姿を見せて以来、消息不明のままだ。

 世界的な人権監視団体の調査部門World Watch Monitorによれば、キリスト教徒の人口が多い中国・浙江省の二つの学校で、300人のキリスト教徒の生徒たちが、「宗教に従わない」と文書で誓約するよう求められた。国内の宗教活動を監視・監督する中国共産党は今年2月、厳格な宗教活動規制法を施行し、18歳以下の若者に対して、教会に行くこと、宗教教育を受けることを禁じている。

(翻訳「カトリック・あい」)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

*「カトリック・あい」評論

 中国では宗教活動の監視・監督は、日本の政府に当たる国務院の宗教担当部門が行っていたが、最近、中国共産党の「統一戦線工作部」に移した。同部は、共産党の外にある機関・団体などを共産党の管理・支配下に取り込むことを主たる任務にしている機関で、権限移行以来、国内の宗教活動に対する規制が強まっており、先日、国際的に著名な女優の脱税を理由にした長期拘束も、脱税摘発を含む規制の対象を芸能活動などにも広げていることの表れ、と見る関係者もいる。

 このような動きについて、そして”地下教会”の悲痛な訴えについて、バチカンはどう受け止めているのだろうか。一党独裁政権のもと、日本や欧米の民主主義国とは「人権」「信教の自由」の考え方、優先順位が全く異なるこの国と、安易に妥協を図ることは、それ自体が国際政治に、国際的な人権保護の取り組みに、マイナスの影響を与えうる、との認識を十分にもっているのだろうか。こうした中国の現場の状況が、教皇フランシスコの耳に十分届いているのだろうか。

 先日の合意が、双方の相対的に低い立場の人物が署名した「暫定合意」にとどまり、合意の具体的内容も公表されないままになっていることに、教皇の、バチカンの賢明で慎重な判断が表れている、と思いたい。

 

 

 

 

 

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2018年10月13日