・米国司教団、「正しく、断固とした意志を示したもの」と教皇の決定に感謝(Crux)

ローマ発-教皇の判断は、聖職者による性的虐待に関わる広範な教会刷新への重要な一歩だーセオドア・マカリック元枢機卿の司祭職を剥奪するという16日の教皇フランシスコによる歴史的決断は、米国の司教団から大きな支持を持って迎えられた。

 マカリックが司教、そして大司教を務めたニュージャージー州のメツチェン、ニューアーク両教区の教区長は17日、声明を発表、このうち、ニューアークのジョセフ・トービン枢機卿は「我々の教区の大司教を14年にわたって務めた教会指導者がイエス・キリストの司祭としての使命とキリスト教徒としての生き方に反する行為をしたことを知って、深い悲しみと動揺を覚えます」と強く遺憾の意を表明。

 そのうえで、「教皇フランシスコが指導者として、このような困難な真相究明と決断をなさったことを感謝します。教皇の決断は、弱く、傷つきやすい人々を守り、人間としての尊厳を大切にし、責任を取り、教会の犠牲者たちへの癒し、和解、連帯を図る決意を再確認することで、問題解決を図ろうとする断固とした決意を示したものです」と教皇の決断を讃え、「苦しみの中にある私たちの兄弟姉妹を慰めるために、私たちは、教皇と一致して祈り、支え、奉仕します」と決意を表明した。

 そして、「教会によって聖職をはく奪されたという発表は、彼が実際に行った、隠されてきた破滅的生き方に対する正しい対応であり、教会の全ての人々に福音の示す高潔さが求められていることを全世界の教会に示す合図です。教皇フランシスコの指導者としての決然とした行為、問題に速やかに対応され、適切な結論を導かれたことに、感謝します」と教皇の決定に賛意を示した。

 また、マカリックが2006年に枢機卿・大司教としての現役を終えたワシントン大司教区も声明を発表し、教皇の決定は「教皇の行為の重大さを示すもの」と評価したものの、声明に具体的な人物の署名はなかった。これは、署名者であるべき教区長ポストが、ドナルド・ワール枢機卿が1980年代から1990年代にかけたピッツバーグ司教の時代の性的虐待問題への対応の誤りを批判され、教皇に教区長辞任を申し出、昨年10月に受理されて以来、空白になっているためだ。

 全米司教協議会会長のダニエル・ディナルド枢機卿は声明で、今回の教皇の対応は「虐待は容認できない、という明確な意思表明です。どの司教であろうと、どれほど影響力のある者であろうと、教会の掟を超える存在ではありません」と語り、「マカリックに虐待を受けたすべての方々のために、私は祈ります-今回の決定が、癒しに向けた多くの歩みの中の、一つの小さな一歩であるように。私たち司教にとって、イエス・キリストの福音に自分たちがふさわしい者となるように私たちの決意を強めてくれます。教会の対応を指導される教皇フランシスコの決然とした姿勢に、感謝します」と述べた。

 また、教皇が設置した未成年者保護委員会の長を務めるボストン教区長のショーン・オマリー枢機卿は「今回の最終的な(マカリックに対する)処分はとても重大なものですが、それ自体が、彼の司祭としての務めを踏み外した行為で酷く傷つけられた方々とその家族に癒しをもたらすことはありません」「教皇の行動はそれ自体、カトリック教会共同体と一般社会に必要な癒しをもたらしません。前大司教が教会生活で傷つきやすい未成年者たちと若い成人たちにこれほど長期間、害を及ぼしたことに、教会共同体も一般社会も愕然とし、強い怒りを感じているのです」と自戒を込めて語り、「教会の指導的立場にある枢機卿、司教として、私たちは、自らの言葉ではなく、行為によって正当に裁かれるのです」と気持ちを引き締めた。

 オマリー、ディナルド両枢機卿は、21日からバチカンで開かれる聖職者性的虐待問題に関する全世界司教協議会会長たちによる会議に出席する予定で、全米の他の司教たちも強い関心を会議に寄せている。

 テキサス州フォートワースのマイケル・オルソン司教は「セオドア・マカリックの司祭職はく奪という決定的な判断を教皇フランシスコが下されたことを支持し、感謝しています。こうした(マカリックの)行為を助け、あるいは隠蔽した者は皆、情報公開が求められることになる」と述べ、ミネソタ州セント・クラウドのドン・ケラー司教は「バチカンのこの決定が性的虐待の犠牲者と傷ついたすべての人の癒しにつながることを希望します。これは、教皇が”性的虐待サミット”を開く準備として情報公開の促進に向けた前向きな一歩です」

 また、全米で最も優れたカトリック大学とされているノートルダム大学は、マカリックに対して2008年に授与した名誉博士号を撤回した。

 マカリックの犠牲者の1人、ジェームズ・グレイン氏は声明で、「この問題で、勝者はいません。でも、教皇が私を信じてくださってうれしいです」と語り、「教皇の偉大な歴史的で聖なる業は、世界中の虐待犠牲者と全てのカトリック信者に安心感を与えています」と評価している。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

 

 

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2019年2月18日