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(2018.6.21 Crux National Corresponden Christopher White) ジュネーブからの帰途、教皇と同行の機上にて- キリスト教徒たちが大いなる一致を共有したジュネーブ一日訪問の後も、教会一致を進めるという公約が、教皇フランシスコがバチカンの教理の番人-プロテスタントとの相互交流の提案について慎重な態度をとるよう強く主張する-を支持しないようにすることはなかった。
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教皇は、ジュネーブで開かれた世界教会協議会(WCC)創設70周年のキリスト教諸教会の代表たちとの教会一致を祈る集いに参加するため、一日の教会一致の巡礼の旅をされたが、21日夕の帰国途上の機上会見で、バチカン教理省のルイス・ラダリア長官を支持する、と語った。ドイツ司教団がこのほど、バチカンに対して、「一定の条件付きでカトリック信者以外にも聖体拝領を認める」ことを希望する旨の提案を策定したが、ラダリア長官はこれについて、同司教団に考え直すように求めている。
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ドイツ司教団の提案は、今春開かれた司教団の会議で、全司教の4分の3の圧倒的多数の賛成を得ていたが、教理省は先月、その受け入れを拒否していた。その際の書簡は、今月になって公開され、その中で長官は、この提案は「まだ公開の機が熟していない」と述べている。
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この問題について、教皇は「長官は勝手にそうしたのではなく、教皇の許可を得ている」とするとともに、教会法の規定では、どのような条件で、非カトリック教徒に聖体拝領を認めることができるかの判断を、現地の司教団ではなく、現地の司教に任すことになっている、とし、「教会法の規定は、特定の教会-『特定』は重要な意味を持つ言葉で、『教区』を意味している-の司教が、これについての責任を持っている…彼の手の中にある、としています」と説明した。
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さらに、教皇は、司教団が全体としてこのような課題を扱うことの問題は、「司教会議として決められたことが、瞬く間に、教会全体に通用するようになる」ことにある、と指摘された。ただし、この一方で、教皇はドイツ司教団の努力を称え、その提案文書は「キリストの精神をもって良く考え抜かれたもの」としたうえで、ドイツの司教団がどのような結論に達したとしてもそれはあくまで一つの方向を示すものであり、「教区司教は教会法が認めるところに従って、自身の判断でどうするかを決められるでしょう」と改めて確認した。
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この30分間の機上会見では、他に世界の移民・難民の実情についても取り上げられ、教皇は、これについては、トランプ米大統領の移民・難民に対する強硬な対応を批判する米国の司教団を、核兵器の脅威への批判も含めて、支持する意向を強調した。
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米国とメキシコの国境における状況について、教皇は米国の司教団の対応を明確に支持して「私は彼らの側に立ちます」と感情を交えずに語り、ロイター通信が教皇との独占会見として20日に配信した内容を繰り返し、そして「私は、米国の司教たちが言明したことを誇りに思います」と付け加えた。
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さらに、移民・難民問題に言及し、「どの国も、統治の美徳、忍耐の美徳をもって(新たに入国しようとする人々を歓迎)すべきです。なぜなら、可能な限り多くの難民を歓迎し、教育し、受け入れ、飢えを無くし、職を見つけるのを助けるべきです」「これこそが、難民の人々のための穏健な計画であると言いたい。私たちは、戦争から逃れ、飢えから逃れようとする難民の人たちの波と共に生きているのです」と訴えた。
また、記者団からの「教会が『正義の戦争』論から距離を置く可能性があるか」との問いに対しては、直答を避けたが、「第三次世界大戦があれば、それは核兵器によって戦われることになる、と私たちは知っています」と語り、さらに、もしも第四次、というものがあれば、「棒を使っての戦いとなるでしょう」と第三次世界大戦で核兵器が使われれば(世界は)徹底的な破滅に追い込まれる、と見ていることを示唆した。
だが、地球的規模の多くの課題は解決可能だ、と強調し、「戦争、中東やナイジェリアでのキリスト教徒の迫害、飢えの問題は、解決することが可能です。多くの国が、こうした問題を抱えた国にどのように投資をしたらいいか、賢明な投資をするか…雇用と教育を提供するために、と考えています」と訴えた。教皇はまた、同日昼に世界中から集まったキリスト教諸教会の代表たちと食事をした時のことを振り返り、その席にいたある人が「最も大事な人権は、希望を持つ権利です」と語ったことを明らかにして、「私はまさにその通りだと思う」と語った。
記者会見の終わりに、教皇は、自身の”参謀総長”役を務めるアンジェロ・ベッキユ師に言及し、来週、彼を新任される13人と共に、枢機卿とすることを明らかにした。
(「カトリック・あい」南條俊二)
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