*教皇フランシスコの2019年は-”性的虐待対策サミット”、外国訪問、諸課題への取り組み

(2018.12.31 カトリック・あい)

*2月下旬の全世界司教協議会会長会議で性的虐待対策協議-だが、チリのトップは欠席

 2019年を教皇フランシスコはどのように過ごされるのだろうか。年明けにまず、待ち構えているのは、ご自身が招集される2月の聖職者性的虐待への対応を話し合う全世界司教協議会会長会議だ。

 2月21日から24日にかけてバチカンで開かれるこの会議で重要なのは、この問題が、性的虐待が司法当局も介入して深刻な信用失墜を招いている米国、カナダ、チリ、アイルランド、ドイツ、そしてオーストラリアに限らず、世界の教会全体の問題だ、という認識を共有することであり、そのうえで、全世界の教会が一致して具体的な対応に踏み出すことを決めることだ。

 2018年10月の「若者シノドス」でも、この問題が取り上げられ、教皇がかねてから言われている “zero tolerance”(加害者に対する容赦のない処罰)の原則が議決寸前までいったものの、「性的虐待は欧米の問題、自分たちのところでは問題になっていない」などとするアフリカやアジアの司教たちの抵抗で、見送られている。米国の司教協議会はシノドスの後、独自の具体的な対応策を決めようとした学校、バチカンから「2月のサミット後にするように」とのストップがかかり、棚上げしている。

 さらに年末ぎりぎりになって、全司教が聖職者の性的虐待への対応の誤りの責任を取って辞表を出し、対応への責任が最も重いはずのチリ司教協議会会長のリカルド・エザッティ枢機卿がサミットを欠席する、と30日付けのCruxで伝えた。枢機卿は性的虐待に関与した疑いで同国の司法当局の捜査を受けていながら、現在も協議会長と首都サンチャゴの教区長のポストに留まり続けている。

 このような中でのサミット。教皇は、厳しい具体策を決め、実施を宣言することで教会の信頼回復の足がかりとすることを強く望まれて、会議を教習したのだが、期待通りの成果が得られるかどうか、前途は容易でないようだ。

 

*外国訪問は引き続き精力的に

 教皇は2019年も精力的な外国訪問をなさることになりそうだ。

 バチカンがこれまでに発表している外国訪問の予定は、まず1月は23日から27日までパナマで開かれるWorld Youth Dayに出席され、2月は3日から5日までアブダビで開かれる宗教間対話への出席と現地のカトリック教会共同体訪問。3月は30、31の両日、モロッコへ。5月は5日から7日までブルガリア、マケドニアを訪問される。10月にはアマゾン地域の司教たちが集まる地域シノドスもある。

 さらに、まだ噂の段階だが、夏に、アフリカの司教会議発足50周年記念を機に、同地の何か国かを訪問すると言われており、日本についても教皇ご自身が、日本の関係者に「年末までに広島、長崎などに行きたい」との希望を表明されている。ただし、教皇もすでに82歳の高齢になられており、心身にストレスのある外国訪問のペースを落とすことも、バチカン関係者の間で取りざたされているようだ。

 バチカンのお仕事でも、水曜定例の一般謁見に加えて、個別の謁見も精力的に続けられる見通しである。財政金融を中心としたバチカン改革、教会における女性と若者たちの役割向上なども、2018年に引き続き、大きな課題となるに違いない。

 教皇フランシスコのために、主のご加護と導きを祈ろう-民主主義国家のリーダーたちが大きな揺らぎを見せ、一方で全体主義の独裁国家のリーダーが少なくとも外見上は支配・権力を強める世界にあって、地上の平和と一人ひとりの人間の権利を守り、発展させようと揺らぐことのない努力を続けておられる82歳のカトリック教会のリーダーが、2019年も健康で、的確な識別力を働かせ、主のみ旨にかなう業を続けることができますように!合わせて、次世代のリーダーをしっかりと育てることができますように!

(「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2018年12月30日