・11月の教皇訪日-公式発表の遅れは詳細な日程の詰めが終わらないため(Crux)

Francis casts his eyes to Asia for potential papal trips

Japanese teenagers Uchiyama Koshiro, from Nagasaki, left, and Matsuda Koharu, from Hiroshima, both 16, hold historical photos, including a photo by U.S. photographer Joseph Roger O’Donnell of child victims, bottom left, of the atomic bombings in Nagasaki and Hiroshima, as they pose with Pope Francis at his weekly general audience in St. Peter’s Square, at the Vatican, Wednesday, June 19, 2019. (Credict: AP Photo/Andrew Medichini.)

 ローマ発ー教皇フランシスコにとって、 アジアは今年後半と2021年の外国訪問の主眼となりそうだ。まだ公式発表はされていないが、今年11月にタイと日本を訪問されるだろうことは広く信じられている。

 両国とも、カトリック信徒の全人口に占める割合は0.5パーセントにすぎず、日本は神道の伝統が強く残っており、タイにはイスラム教徒とヒンズー教も少数ながら重要な地位を占めいる、という違いがあるものの、いずれも仏教徒が多数を占めている。

 また2021年には、教皇はフィリピン再訪を招待されている。同国はアジア最大、世界でもブラジル、メキシコに次ぐ第三のカトリック人口を持つ国だ。2015年に訪問された際には、熱帯の嵐に向かって飛行機で飛び、訪問中の最後のミサには、歴代教皇の歴史の中で最大の600万人が参加した。

 在ローマの関係筋がCruxに明らかにしたところによると、教皇の日本訪問は確実だが、公式発表が遅れているのは、日程と詳細な計画などが確定していないためだ。現時点の計画では、訪日は11月23日から26日までで、訪問地は東京、広島、長崎となっている。

 さらにここ何か月か噂に上ってきたのは、11月20日から23日にかけてのタイ訪問だ。この情報は、現地タイの新聞で広く報道されているが、これまでのところ、未確認である。

 バチカンのマッテオ・ブルーニ報道官はCruxに「年内の外国訪問で(注:すでに発表されている国を除いて)現在検討されているのは、日本訪問だけです」とし、2021年のフィリピン訪問に関しては「来年2020年の外国訪問の日程も決まっていないのに、2021年はとても」と語った。

 教皇は、キリスト教が急速に拡大しているアジアに特別の関心を常に持たれているが、日本訪問は教皇にとって長年の夢を実現するものだ。彼は、イエズス会士になりたての時、宣教師として日本に行くことを希望していたが、健康上の理由から実現できなかった。

 日本のカトリック教会は、21万人が亡くなった広島、長崎の原爆犠牲者追悼とともに、8月6日から15日までを平和旬間としているが、司教協議会会長の高見三明大司教は、今年のメッセージで、「今年11月、教皇フランシスコが日本を訪問され、新たな平和メッセージを世界に向けて発信してくださるものと期待しています」と述べ、教皇は就任以来、折に触れて平和と核兵器廃絶について発言してこられた、として、2017年7月の国連総会での「核兵器禁止条約」採択に先立って教皇が同年3月に国連総会に送られたメッセージの次の箇所を引用した。

 「テロ、軍事力の差のある者同士の紛争、情報の安全確保、環境の問題、貧困などは、複雑に絡み合って、現代世界の平和と安全を脅かしているが、核の脅威はそのような課題に効果的に応えることはできません」「恐怖に基づく安定は、実際には恐怖をさらに増し、諸国民の信頼関係を損なうだけです。もしそうなら、その安定をどれだけ維持できるか自問すべきです」「平和は、正義、人間の全人的発展、基本的人権の尊重、被造物の保護、すべての人の社会生活への参加、諸国民間の信頼、平和を重んじる制度の促進、教育と福祉の恩恵に浴すること、対話と連帯の上に築かれなければなりません」。

 教皇フランシスコは、聖ヨハネ・パウロ2世教皇以来39年ぶりとなる日本訪問で、同様の平和アピールを発表されると期待されている。

 教皇がタイを訪問されるなら、それは同国(当時の国名はシャム)への宣教350周年の記念の年の訪問、となる。タイのカトリック人口は全人口の0.46パーセントだ。2013年に当時のインラック首相がバチカンで教皇を表敬した際、自国訪問を招請したが、翌年に首相を辞任し、汚職を防ぐことができなかったとして有罪となり、国外に逃亡したため、招請も事実上の立ち消えとなっていた。 プラユット現首相が教皇招請を有効としているのか不明だ。2014年の軍事クーデター以来、政治不安が続いているこの国への訪問には慎重な対応が求められるだろう。

 だが、訪問を計画した場合、政治レベルの判断で最も込み入った問題になるのはタイではなく、フィリピンだろう。

 ある関係者は、「フィリピンの司教団が、同国へのカトリック宣教開始500年を記念する2012年に自国を訪問してくれるよう公式の招請状を送った」とするCruxの報道を確認した。同国のニュースサイトPhilstar Globalによると、500年祭は、ポルトガルの探検家、マゼランが1521年にサント・ニーニョ(Sto. Nino=幼きイエス・キリスト)像をもたらしたセブ島-同島から、フィリピン列島への宣教が始まったーが予定されている、という。

 だが、教皇が、カトリック教会への口頭での敵意をあらわにするドトゥルテ大統領の公式招待を受けるかどうか、という問題がある。大統領は2016年に就任以来、麻薬取引撲滅に強権をふるい、何千人もの容疑者を裁判なしで処刑し、死刑制度の導入も言明しており、これを同国のカトリック司教団が強く非難し、険悪な関係にあるからだ。カトリック教会も、大統領から、「1950年代にある司祭がセ的虐待を行った」とする批判を受けている。今年3月に大統領は「我が国の司教たちは“穀つぶし”の”愚か者”だ」と言い、別の機会には、性的虐待をした司祭たちを「いけ好かない奴ら」と口を極めて非難し、「本当に殺すぞ…その方がいい」とまで言い切っている。

 だが、こうした緊張関係にあるにもかかわらず、司教協議会の幹部たちは、教皇が招待を受ける”いくらかの可能性”に希望を残している。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年8月11日