・聖職者による性的虐待隠ぺいで、司教が米国で3人目の辞任(Crux)

(2019.12.4 Crux  national correspondent Christopher White)

 教皇フランシスコは4日、米ニューヨーク州のバッファロー教区長、リチャード・マローン司教の辞表を受理した。バチカン広報が発表したもので、後任の教区長が決まるまでアルバニー教区長のエドワードシャーフェンバーガー司教が教区管理者となる。

 マローンは、これまで一年にわたって、未成年性的虐待が疑われていた司祭たちを故意に隠ぺいしたとの訴えを受けていた。疑いのある司祭たちの1人、退職司祭のノーバートF.オルソリット神父は、自分が1970年代から80年代にかけて「おそらく数十人」の10代の少年を虐待したことを認めた。それをきっかけに、司教の隠ぺいについての調べが始まり、教区内の司祭、神学生、一般信徒から辞任を求める声が上がっていたが、司教はそれに抵抗を続けていた。

 彼は、11月に、ニューヨーク州の司教団の一員として、バチカンで教皇フランシスコおよび教皇庁の幹部たちとの定期協議に参加、同月12日には「城壁外の聖パウロ大聖堂」でミサを捧げ、その際の説教で教皇の言葉を引用して、「私たちを取り巻く悪や暴力、時には非常に多くの兄弟姉妹の苦悩によって混乱を感じることがありますが、私たちには希望が必要です!」と語っていた。

 帰国後、彼は「教皇が自分と教区の両方が直面している困難な状況を認識しておられる」との声明を発表し、「教皇は私に個人的に語られました。ここバッファローで私たちが経験している困難と苦痛を理解されているのは明白でした。教皇はとてもよく理解され、親切でした」と述べていた。

 ブルックリンのニコラス・ディマルツィオ司教はこれより先の10月から、マローンによる虐待事件への対応について1年以上調べた後、現地バッファロー教区へ頻繁に赴き、バチカンに報告するために約80人の教区司祭たちと一般信徒から事情聴取をしていた。

 バッファロー教区内の問題が発覚したのは、マローンの前秘書が昨年、司教が問題司祭が司祭職を続けるのを認め、性的虐待問題に積極的に関わっていた、として、数百ページにわたる教区報告書の内容を明らかにしたことによる。

 マローンは、今年初めに地元バッファローの放送局とのインタビューで、ニューヨーク州での聖職者性的虐待の見直し措置が発効して以来、バッファロー教区は138件の訴訟を性的虐待被害者から起こされているとしていたが、司教の顧問団によると、訴訟は250-275件に上っており、(注:損害賠償負担が多額に上る恐れがあるため)教区として破産を申し立てるかどうか、「非常に深刻」な検討をしている、という。

 米国では過去一年の間に、聖職者による性的虐待問題で責任を取って辞任に追い込まれた司教はマローンで3人になる。1人目は、金銭問題と性的虐待への対処で不適切な行為があったとして訴えられたウェストバージニア州のマイケル・ブランズフィールド司教。2人目は、ワシントンDC大司教区長のドナルド・ワール枢機卿で、 1980年代にピッツバーグ教区長をしていた時に性的虐待について不適切な対応をした責任を問われた。ただし、この二人はともに年齢が司教定年の75歳を超えているが、マローンは73歳だ。

 米国のカトリック教会は昨年、テオドール・マカリック元枢機卿の問題で、いったん収束するかに聖職者による性的虐待スキャンダルにまた火がついていた。かつて米国教会の最も著名な指導者の1人とされていたマカリックは、未成年者と神学生の両方を虐待したとして非難され、昨年2月、教皇フランシスは稀にみる厳しい判断を下した。

 さらに昨年5月、バチカンは、聖職者の性的虐待、あるいは隠蔽について、司教が報告する際の基準と手順を義務付ける新しい規範を導入し、米国の司教たちは昨年6月にこれらの規範を採択。この夏までに全国的な第三者報告システムを作り上げることとした。

 バッファロー教区長となる前に、マローンは2001年から2004年までバーナード・ロー枢機卿の下で、ボストン大司教区の補助司教を務め、2012年にメイン州ポートランド教区長となっていた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年12月7日