・信徒としての悩み、自覚、教会への注文ー若者によるシノドス準備会合始まる(CRUX)

(2018.3.20 Crux Contributing Editor  Claire Giangravè)Youth to bishops: Yes to guidance, no to clericalism, questions on secularism

Pope Francis sits among youths for a group photo during the opening session of the pre-synod of the youths meeting, at the Mater Ecclesiae college in Rome, Monday, March 19, 2018. (Credit: AP Photo/Alessandra Tarantino.)

ローマ発―若者たちのシノドス準備会合の第一印象は、バチカンが不可能な試みをしている、ということだった-世界中の様々な背景を持つ若者たち300人をローマに集め、彼らの対照的ともいえる経験、見解、価値観をまとめて、秋の全世界の司教たちの会議に役立てたい・・。

 会合が始まる前から、バチカンのさまざまな呼びかけの努力に対して若者たちから、懐疑的な声が上がっていた。いわく、参加対象が限られている、一方的だ、表面的だ、事前検閲的だ、欧州中心主義だ、などなど。そして、会合初日の教皇フランシスコとの質疑は、入れ墨の問題から売春の問題まで、すべてに教皇が応答するという、焦点を欠いたものになったようだ。

 それでも、24日まで続くこの会合の初日の結果を見る限り、カトリック教会は現代の世界の若者たちが直面している多種多様な断面を把握することに成功しただけでなく、若者たちが感じている現実的な指針の必要性、世俗主義との効果的な関わりの必要性、聖職者主義の有害性への対処、などの課題が提起され始める、という成果が生まれつつあるようだ。

 この日の教皇との質疑で発言した約20人の参加者たちは、教会組織に疑いを持たせるような現実の問題から目をそむけることなく、現代世界の汚染された状態の中で教会の指導や助言の必要を一様に訴えた。

 米国のサンアントニオに住み、ダラス大学でキリスト教教育担当を務めるニック・ロペスは「教会の若者への指導はこれまで以上に必要となっています」と述べ、米国では「若者たちが宗教指導者たちに不信感を抱いており、宗教一般について懐疑的」で、若者たちの3分の1が宗教と全く関わりを持っていない、と実情を説明した。

 ベルギーのアネリエン・ブーンは、欧州の現状から、「信仰を証しし、進んで若者たちと接し、指導するキリスト教徒がいることが重要だと思います。そうした指導は学校でも、若者たちの運動でも行われ、彼らに人生の意味を教える必要があります」と語り、欧州の35か国以上の18歳から34歳のミレニアル世代を対象にした調査分析結果を示した。それによると、欧州では全体の半分近くの若者が宗教組織に不信感を持ち、94%もの若者が幸福になるために宗教を信じることは必要でない、と考えている、ベルギーでは、一か月に何回かでもミサに出る若者の割合は、34歳以下の人口のたった2%しかいなくなっている、と深刻な教会離れ、宗教離れが進んでいる。

  ベトナムからの参加者、カオウー・ミン・トリは、第四の産業革命を迎えているアジアでは、拡大する無神論と敵対的な政府が若者たちを「神を信じないように、さもなければ神を単なる哲学者を考えるように」と仕向けている、子供を産む権利、結婚、離婚と性についての考え方の変化が宗教と若者の間に深い溝を作っている、と指摘した、他の地域から来た多くの参加者の共感を得た。

 また、カトリック教会と協調する23の東方教会の一つでイラクとシリアに信徒が多いカルデア派のアンジェラ・マーカスは「若者たちは、教会と切り離されたように感じています。世代が上の聖職者と意見が合わず、異なった考えや信仰は歓迎されず、自分たちのことを親身になって聞いてもらえない、と感じている。教会に自分の場があるとは、いつも感じられないのです」と訴え、「若者たちは深さを求めています。私たちはその複雑さを分かりたいし、分かることができるし、声をあげることもできます。それなのに、教会の中には話すことが容易でない問題を避けようとする傾向がある。同性の結婚、性の問題、そして教会での女性の役割などです」指摘。さらに、中東に祖先をもつ若い女性として、自分が”無視”されていると感じたことがあり、若者が教会から幻滅させられているという問題が理解できる、と述べた。

  アフリカからの参加者、ジンバブエのカトリック青年会議議長を務めるテンダイ・カロンボは「若者たちのための、信仰形成のための継続的で総合的なプログラムは教会にはありません」「教会が、若者たちが宗教とつながるための適当な基礎を提供していない」と現状を説明し、「アフリカの教会は、多くの場合、秘跡、経験を全部備え、何もかも知っている”習熟信者”によって動かされています」と訴えた。

  聖職者主義 (clericalism)(「カトリック・あい」注:宗教的権威や聖職者による支配を、肯定・容認・推奨・支持・支援する立場のこと)の問題では、この日の冒頭で教皇の「取り除かねばならない”ひどい病”」との指摘が満場の拍手で支持された。

 この質疑の中で、ウクライナの東方教会の神学生、ジュリアン・ベンジロビッチの「聖職者はどのようにして若者たちが必要としている指導や人格形成の助けをすることができるでしょうか」の問いかけに対して、教皇は「共同体社会は父、兄を必要としています。そして、実際にそこにいるのは医者、教授・・王子なのです」と答えた。会合のあと、彼はCruxに対して「自分たちの教会が変わることを、私たちは希望しています」「教会には、変わらねばならないものがあります。なぜなら、私たちは多くの変化を経験しており、若者たちは教会の一歩先を歩いているからです。私たちは若者たちとともにいる必要があります。変わる世界とともに歩む必要があります」と語っている。

 また、ベンジロビッチが「入れ墨のように社会の主流とは言えない慣習や流行に、どう対応すればいいのでしょう」と質問したのに対して、教皇は「入れ墨を怖がらないで。入れ墨は持ち物。入れ墨をしている人に『それで何を期待しているのですか』と聞くべきです」「 若者たちのことを、絶対に怖がらないでください。さほど良くないことの裏に、よく理解する助けとなるものがいつも隠れているのです」と答えた。

 参加者が基調発言で頻繁に指摘したのは、現象の表面にとらわれず、現実に目を凝らすことだった。ダラス大学のロペスは、自分たちの世代は、現状改革と権利擁護に特に熱心になる傾向があるが、確信しているものの中には、キリスト教的な価値観と対立するものもある、とし、「熱心さは、時として方向を間違うことがあるが、私たち若者の気高い特長。その熱情も、望みも否定することはできません。真実を求め、生きる目的を満たそうとしているのです。私たちは、皆が求めているのがキリストだ、ということを皆に示さねばなりません」と訴えた。

 また、ロペスはそれに関連して「若い教会の活気」を示す場としての「ワールド・ユース・デイ」の重要性を強調。ベルギーのブーンもこれを受けて、「教会にとって、若者たちの経験を提供することが重要です」と述べ、世界的な集まりと巡礼の旅は「たくさんの若者たちにとって転機になります。自分は一人でないということ、仲間がいるということを経験するから」と期待を語った。さらに、若者の宗教離れが進んでいる問題について彼女は「それを機会、とみるべきです」とし、「ベルギーは、私の見方では、”平和な、宗教に無関心な社会”になっています。キリスト教の信仰を知らない社会。でも、キリスト教の信仰が皆を驚かすことができるようにする、という、やりがいのある課題があるのです」と強調した。

 ベトナムのトリは、Cruxに対して、多様性と一致の今回の会合の意義について、教会との対話を始めるための、挑戦ではなく、機会を参加者に提供している、とし「これは、私たちにとって、若く、いつも若くあり続けるための機会なのです」と語っている。

(翻訳「カトリック・アイ」南條俊二)

⇒日本の”代表”は参加しているのか。”顔”が見えない。バチカンはずっと前から、この日程を発表し、世界の教会に若者たちの派遣を呼び掛けていたが。どのような意見をまとめて、誰が選ばれ、参加しているのかも明らかになっていない。せっかくの機会に発言をしているとも報道されていない。残念なことである。それが日本の教会の”実態”なのだろうか。(「カトリック・あい」)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

 

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2018年3月21日