・教皇基金が”サイバーいじめ”防止の国際的運動開始に協力

(2018.11.9 カトリック・あい)

 ツイッターやラインによるトラブルやいじめで自殺に追い込まれる若者が増加を続けており、9月にも、女子中学生が上級生からインターネット交流サイト(SNS)上で非難を受けたのが原因で、不登校になり、電車に飛び込んで命を落とすという痛ましい事件が起きた。文部科学省の調査によると14年度の小・中・高・特別支援学校におけるいじめの認知件数は18万8057件。うちパソコンや携帯電話等を使ったいじめは7898件にのぼっている。

 こうしたスマホいじめ、サイバーいじめは日本に限ったことではないようだが、具体的な取り組みも出てきている。イタリアではいじめの犠牲となった少女の父親が、サーバーいじめ防止の基金を作り、これに教皇フランシスコが創設した世界の学校問題対策の基金などと連携して、国際的な運動を視野に、具体的な取り組みを始めた。手をこまねいているばかりに見える日本の関係者、教会関係者もこうした動きから学ぶことがありそうだ。

以下、Cruxの報道より。

(2018.11.8 Crux Senior Correspondent Elise Harris)

 これは、自宅三階の寝室から飛び降りて命を絶った当時14歳のイタリアの少女、カロリーナ・ピッキオが残した言葉だ。彼女は、”サイバー”いじめの悪の連鎖の犠牲者だ。

 そして、これにショックを受けたカロリーナは翌年1月4日の夜に自らの命を絶ったのだった。彼女の死後、イタリア議会は2017年5月、オンライン上での未成年保護のため、スマホいじめを犯罪として取り締まる法律を成立させた。

 カロリーナの父、パオロは8日、ローマで会見し、スマホいじめ防止に役立てるため、彼女の名を冠した「カロリーナ基金」を設け、教皇フランシスコが設立した世界の学校のネットワーク構築のための「Scholas Occurentes」基金と連携、iDea Congressとも協力して、「サイバーいじめ防止の国際監視所」を開設することになった、と発表した。今後4,5か月以内に、サイバーいじめについて、徹底した調査をし、来年4月をめどに開く大会で結果を明らかにする予定だ。

 カロリーナ基金のイバノ・ゾッピ事務局長によると、調査は、サイバーいじめの実態把握、サイバーいじめのもたらしている影響と取締法令の現状、そして防止効果が証明された規制の手法の3項目に分けて行われる。

 また、「Scholas Occurentes」基金のホセ・マリア・コラール会長は、基金は世界中の若者たちの声を聴いており、実際に現地訪問した国々で、「若者たちが問題を抱え、答えを持っていない」ことが分かった、としたうえで、「もし世界を変えたければ、教育を変えなけばなりません」と、設立者の教皇フランシスコの言葉を繰り返した。

 また、十代の若者たちの間にある憔悴と自殺志向について、「彼らの多くは孤独を感じている」として、勉強するために米国にやってきた十代のメキシコ人少女が、米国滞在中に酷いいじめを受け、それを許すことを学んだものの、消えない心の傷が残った、という実例を挙げ、「こうしたことが繰り返されないために、監視所は、現在は得られない情報、具体的な提案に結び付く情報を提供したい」と述べた。

 コラール会長は、教皇が「いじめの第一の責任は、私たち、一般の人々にある、それは、いじめの背後に、”物言わぬ集団”がいるからです」と言われたことを取り上げ、「黙っていることが、いじめを悪化させ、力づけてしまう。いじめをしている者たちに、喝さいを受けている、と思わせてしまうのです」とし、「もはや黙っていることはできません。立場を明確にし、いじめと戦うのです…”空席”ができないように」と訴えた。

 また、今回の「監視所」創設のきっかけとなったカロリーナの父、パオロ・ピッキオはこの会見で、これまでにイタリア国内の300以上の学校を訪問し、3万人以上の若者たちにサイバーいじめの問題について話したことを明らかにし、その結果として、「単に話をするだけでなく、学校、礼拝施設、スポーツ・センターにサイバーいじめ防止の拠点を置き、指導資格を持った人を配置する必要がある」という思いを強く持った、と述べた。

 さらに、「若者の多くが、問題を抱えた時、親や先生には話せない、と感じている。それは、何か言いたいことがあっても、「話さなければよかった」と彼らを後悔させるような対応を、家族や先生がするからなのです」と指摘し、「この問題の専門家、若者たち、そして家族が一緒になって、問題を適切なやり方で考え、現実的で具体的な解決方法を求める必要がある」と力説した。

 そして、最後に、娘の遺書に強く心を動かされたのは、彼女が仲間たちに「お互いを尊敬するように、お互いと話をするように」と求める言葉を残していたこと、そして、彼女をからかった者たちに対して「もう一度、ハグを交わし、本当の友達、手を握っていると感じる友達になって」と切望していたこと、だった、と語り、「私たちが今日、ここで会見したのは、壮大な計画を実施しようとするからです。私たちは、国際的なレベルでこの問題を理解したい、若者たちと連絡を取り、問題を知ることで、完全にサイバーいじめを防ぐことができなくても、せめていじめを減らすようにしたいのです」と訴えた。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2018年11月9日