・教皇、アイルランド訪問で「おぞましい犯罪に、教会は正しく対応できなかった」と率直に反省

(2018.8.25 バチカン放送)

 教皇フランシスコは25日、「世界家庭大会」出席のため、アイルランドを訪問。ダブリン城で、レオ・バラッカー首相をはじめとする政府関係者、および各界の要人、同国駐在の外交団と会見された。

 ダブリン城でバラッカー首相の出迎えを受けた教皇は、城内の「サン・パトリック・ホール」で挨拶された。その中で、教皇は、訪問の目的をダブリンで開催中の「世界家庭大会」への出席、と説明したうえ、教会は「いくつもの家族で構成された一つの家族」であり、そのために、「家族が神から与えられた召命を社会の中で喜びをもって果たしながら、家庭内の教育を通して、健全な社会の発展に寄与できるように、支える必要があります」と話された。

 さらに、「変遷の激しい今日の社会の中で、家族は多くの困難に直面し、結婚や家庭生活の混乱が、様々なレベルで私たちの共同体の未来にも影響を及ぼそうとしている」とし、「社会における家庭の役割を軽視せず、あらゆる手段をもって支え、守らなければならなりません」と語られた。そして「私たちは家庭において、人生の最初の一歩をしるし、調和のうちに生活しつつ、利己主義を抑え、それぞれの違いを和解させ、何よりも人生の真の意味を悟ることを学びました」。「ですから、私たちは全世界という唯一の家族においても、最も弱い立場の人々をはじめ兄弟姉妹たちとの一致や連帯が求められているのです」と強調。

 そして、「人種や民族の違いから起こされる憎悪や紛争・暴力、人間の尊厳や権利の軽視、貧富の差の拡大などを前に、私たちは無力に感じることがあるかもしれません。それでも、民の集まりとしての唯一、真の家族としての『人類』の意味を、政治や社会などあらゆる面において、取り戻さなければなりません」と訴えられた。

 教皇は、北アイルランド和平をめぐり、アイルランド共和国政府と英国政府が1998年結んだベルファスト合意(聖金曜日協定)から、今年で20年を迎えることに言及し、「この歴史的合意によって、多大な苦しみを生んだ紛争に平和の構図が生まれたこと」を神に感謝されるとともに、「平和プロセスを通し、残る障害を乗り越え、調和と和解、相互信頼に満ちた未来を推進する」ことを希望された。

 また「真の平和は神の賜物です」として、「この霊的な基礎を欠くと、国家が集まる地球家族は単なる空の場所となってしまうでしょう」と話され、さらに「今日の経済発展は、正しく平等な社会をもたらしているでしょうか」と問いつつ、物質主義的な「切り捨ての文化」によって、「生まれてくる前の命をはじめ、人類家族の最も弱い立場にある人々が、生きる権利を取り上げられています」と批判。深刻な移民危機の解決のためにも「短期的、政治的な視点を超えた、賢明で人道的な広い視野を持つことが必要です」と述べられた。

 教皇は、アイルランドの教会関係者による性的虐待の問題も取り上げられ、過去に特別困難な状況に苦しんだ女性たちに思いを寄せるとともに、性的虐待の被害者となった未成年者たちを思い起こされた。そして、「子どもたちを守り、教育する役割にある人々が引き起こした、このおぞましい犯罪」に対し、『教会が正しく対応できなかったことが、人々の怒りを生み、カトリック共同体の苦しみと恥の源となった」のは当然のことであり、「私もまったくその通りと思う」と述べた。

 前教皇ベネディクト16世が、当時、教会関係者による人々への信頼の裏切りを厳しく非難し、決然と介入することで、過ちを繰り返さないための、現在の関係者の取り組みがなされるようになった、という経過を語られる一方、「すべての子どもは神の貴重な贈り物」であるにもかかわらず、それを軽んじ、侮辱するような「人々の怠慢と過ちを明るみに出したこのスキャンダルの重大さ」を改めて認識しつつ、「社会全体に、未成年者と無防備な成人の保護へ関心が高まる」ことを強く希望された。

 最後に、アイルランドとカトリック教会について、教皇庁は90年前、アイルランド自由国を最初に認めた国・国際機関の一つとなり、以来、「両国は長きにわたって友好と協力関係を築いてきました」と述べ、「一時的に両国関係に曇りが見られたこともありましたが、最近、再び双方の合意と善意のもとに、友好関係復活の努力が行われるようになったことを喜ばしく思います」とさた。そして、「昔も今も、アイルランド国民は、信仰から生まれた叡智をもって社会生活を豊かにする努力を行い、同国の歴史の最も暗い時も、人々は信仰の中に勇気の源を見出してこられました」とし、「アイルランドが今日の社会・政治的議論の合唱のさなかにある時も、キリスト教のメッセージのメロディーに耳を傾けることができるように」と祈られた。

(「カトリック・あい」が編集)

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2018年8月25日