・教皇、さらにチリの司教2人を事実上解任-性的虐待隠ぺいで(CRUX)

 

Pope removes two Chilean bishops accused of abuse cover-ups

Chilean Bishop Alejandro Goić Karmelić. (Credit: Diocese of Rancagua.)

(2018.6.28 Inés San Martín)ローマ発―チリにおける聖職者による隠蔽を含む広範な性的虐待のスキャンダルに対処する一環として、教皇フランシスコは6月27日、先日の二名に続いて、さらに二名の司教を事実上解任した。

 チリの司教団は、多くの信徒、とくに児童を性的に虐待し、隠蔽した責任を取って、全員が教皇に辞表を出していたが、教皇庁の27日の発表によると、新たに教皇が辞表を受理したのは、ランカグア教区の Alejandro Goić Karmelić司教とタルカ教区のHoracio del Carmen Valenzuela Abarca司教。後者は、幼児性愛で悪名高いフェルナンド・カラディマ神父の取りまきの4人の司教の1人。4人の司教のうち、解任されたのはこれで2人となった。

 Goićは、チリの教会でもっとも影響力のある司教の1人。2004年から2010年にかけて同国司教協議会の議長を務めていた、また、この数週間前まで、チリの教会全体の性的虐待防止委員会の委員長だったが、司教の事実上の定年である75歳を越えてことが、辞表提出の理由だった。

 チリの司教団は今春、同国内での組織的な幼児性的虐待と隠ぺい、さらに権力の乱用による危機的状況をバチカンが聴取するために、召喚され、教皇ご自身が司教たちと話し合いを持たれた。その内容は、公表されていないが、関係筋が明らかにしたところによると、教皇は、チリの教会で過去数十年にわたり、数々の犯罪が行われ、証拠の隠滅もされてきた、として、司教団に厳しい反省と、信頼回復への番本的な対応を求めた、という。

 Goić は、本人も含む司教団がバチカンから帰国してまもなく、性的虐待防止委員会の長を辞任したが、その際、自身の教区で14人の司祭が幼児性的虐待を含む過ちを犯している、との信徒たちからの訴えを無視していたことを認めた Goić は二年前に司祭たちについての訴えを受けていたが、テレビ報道で明らかにされるまで、何らの措置も取らず、報道後になって、司祭としての職務停止の処分をしている。

 教皇は、Goićの後任司教に、首都サンチャゴのルイス・フェルナンド・ラモス・ぺレス補佐司教を選任した。だが、サンチャゴのリカルド・エザチ大司教も、虐待の被害者から、本人は否定しているが、性的虐待の事実を隠蔽し、訴えを無視したとして糾弾されている。

 今回、Goićとともに司教を解任されたValenzuelaは、64歳。長い間、カラディマ神父による性的虐待の犠牲者たちに、虐待を隠ぺいしたとして訴えられてきた。

 カラディマ神父から性的虐待を受けた犠牲者の1人、ホアン・カルロス・クルス氏は4月下旬に、他の被害者3人と共に教皇と会見し、その後の報道機関とのインタビューで、4人の司教たちは「カラディマがどのように、若者たちに触れ、性的虐待したかを知っており、その場にいた」ことを明らかにし、「そのことを教皇もご存知になった」と語っていたが、クルス氏は、今回の司教解任について、「教皇は、チリの教会の浄化に”ゆっくりだが、確実”に取り組んでくださっている」と評価した。

 チリの教会の性的虐待スキャンダルは2015年に発覚し、その年に教皇は、先に解任したバロスをオソルノ司教に任命した。教皇は今年1月中旬まで、彼を公けに弁護し、南米諸国訪問の際も、彼に対する批判は「中傷」だ、としていた。だが、1月下旬になって、事態が一変。教皇が大司教をトップとする現地調査団をチリに派遣して、バロス問題を調べる、とバチカンが発表。調査団は帰国後、2300ページに上る報告書を教皇に提出。さらに6月初めに、二度目の現地調査が行われた。その間、教皇はチリの司教全員をバチカンに召喚し、全員が辞表を提出する一方、教皇はカラディマの犠牲者の信徒たち、犠牲者5人と彼らを支援した司祭二人と一般信徒二人を個別にバチカンに呼んで話を聞いている。

(「カトリック・あい」南條俊二)

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2018年7月3日