・(解説)使徒憲章・シノドス”一般信徒参加”で試される司教たちの”聴く能力”(Tablet)

(2018.9.18 Tablet  Christopher Lamb)

 10月3日からの「若者シノドス」を前に、教皇フランシスコが使徒憲章”Episcopalis Communio”したが、これはシノドス(全世界代表司教会議)の開催過程で一般信徒の寄与を促す新たなルールを示し、シノドスを「神の民の声に耳を傾ける道具」とするのが狙いだ。

 この使徒憲章は、各国・各地域の司教たちが「シノドスの会議で扱うべき問題」について一般信徒たちとどのようにして相談せねばならないか、について示し、「教える」立場にある者は「聞かねばならない」と強調している。

 シノドスの準備の段階で司教たちが一般信徒と相談する場を持つことは、「家庭」をテーマに2014年に開かれたシノドスでもされているが、今回の使徒憲章で、それをシノドスの教義の公式の一部と定めた。

  教皇が示した新たな規約は、自身がシノドスに対してとってきたこと-”会議する”教会の重要な部分をなすもの-を成文化するものだ。教皇は、シノドスが単なる司教たちの集まりではなく、すべてのカトリック信徒にとっての集団的な識別の手順であることを、繰り返し強調している。そのために、新規約は、シノドス閉会中に議論の準備が進むように、シノドス事務局長と事務局を強化することも定めた。

 だが、2014年と2015年に相次いで開かれた「家庭」をテーマとするシノドスについて論評する者は、81歳のイエズス会士の教皇とその盟友たちがシノドスを前進するように作った、と批判した。教皇は、司祭叙階されていない修道士・修道女もシノドスで完全な議決権をもつ道を開く一方で、会議の結論をまとめる起草委員会のメンバーは自身が決めるというルールを堅持した。

 教皇にとってシノドスの目的は、教会の使命について集団的な識別を促すことにあり、実際、彼は司教や他の出席者たちに会議で自由に話をするように奨励した。シノドスは、”本質的に、司教たちの機関として構成”されているにもかかわらず、教皇は、この憲章で、こう説明している-シノドスは「会議に参加しない信徒たち」と離れて存在するものではなく、「むしろ、神の民すべてに対して意見を述べるのに適した手段」だ、と。

 「若者たち、信仰、そして召命の識別」をテーマとする10月のシノドスには、二人の修道士が完全な議決権を持った形で参加する。だが、修道女たちには同じ特権は与えられない。18日の憲章発表の記者会見で、このような矛盾する扱いについて記者団から質問が出たが、シノドス事務局のファビオ・ファベーネ次長は、女性たちは「専門家」と「オブザーバー」として参加できる、とだけ説明した。10月のシノドスには、32人の女性が顧問の資格で参加する予定だが、この憲章は、女性たちにさらに実質的な役割を与えるように書かれている。

 第二バチカン公会議(1962年-1965年)を受けて再開されたシノドスは、全世界の高位聖職者たちが、カトリック教会が直面する重要課題について取り組むことを構想していたが、ヨハネ・パウロ2世とベネディクト16世の下で開かれたシノドスは、教皇庁が厳しく取り仕切り、事前に作られたシナリオ通りに事を運ぶ会議になった、と批判された。

 これに対して、二人の跡を継いだ、司教たちの集団的な協議の伝統をもつラテン・アメリカ出身の教皇は、教皇就任前に、(ブエノスアイレス大司教として)この地域の全教会のための宣言「the Aparecida document」の取りまとめに(その伝統的な手法によって)主導的な役割を果たした経験があった。だから、新規約は、こうした教皇の経験をもとに「シノドスの最終文書は『教皇の明示的な同意があれば』、聖ペトロの後継者の通常の教導職の一部となる」と明記し、シノドスそのものに、従来よりも、バチカン官僚に左右されない、権限の強化を図っている。

 教皇フランシスコのシノドスについてのこのような考え方が成功するために重要なのは、教皇が”信仰において全く誤りがない”とする、一般信徒の声を聴く司教たちの能力だ。

 そして、聴いたことを行動に移す取り組みの一環として、18日に発表されたのは、教皇が、シノドス開催中の10月6日にバチカンのパウロ6世ホールで若者たちとの公開会議を持つ、ということだ。

(翻訳・「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

 

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2018年9月20日