・シノドス*全体会議で司教たちが3部12章60ページの最終文書採択

(2018.10.27 VaticanNews)

 3日から開かれていた若者をテーマとするシノドス(全世界代表司教会議)第15回通常総会は27日午後の全体会議で、約一か月にわたる討議の結果をまとめた3部12章60ページの最終文書を採択した。

 採択後の記者会見で、シノドスの運営の責任者、セルジオ・ダ・ホーシャ枢機卿は「最終文書は大きな拍手の下に採択されました。これは、参加した司教たち、他の参加者たち、そして”特別な形での若者たち”の真のチームワークの結果です」と語った。最終文書は、そのようなチームワークで草案をもとに364か所の修正、追加がなされ、原案として全体会議に出され、詳細に、建設的に検討されたうえ、採択に必要な3分の2の支持を得て、正式文書となった。

 今回のシノドス最終文書の着想は、福音書記者ルカが記したエマオでの2人の弟子へのイエスの出現の出来事(ルカ福音書24章13∼32節)によっている。

(注:エマオはエルサレムから11㌔のところにある村。エルサレムでキリストが十字架上で亡くなった後、まだ復活を知らない二人の弟子がエマオに向かって、これまでの出来事を論じ合って歩いていた時、復活したイエスが近づいて来て、ともに歩いた。そして、先へ行こうとするイエスを彼らが引き留め、宿で食事の席に着き、イエスが賛美の祈りを唱え、パンを裂いてお渡しになったとき、2人の目が開け、イエスだと分かった=絵画は、カラヴァッジオ作『エマオの晩餐』)

 最終文書は、ホーシャ枢機卿と特別秘書のジャコモ・コスタ神父、ロッサノ・サラ神父、および最終文書起草委員会のブルーノ・フォルテ司教から説明された。事前に発表された討議要綱をもとにし、3部構成で、主な内容は以下の通り。

第1部「”彼”は”彼ら”とともに歩んだ」

 最終文書の第1部では、若い人々の生活の具体的な諸側面を考察している。

 学校と小教区の重要性を強調し、多くの司祭と司教がオーバーワークとなっていることから、一般信徒が若者に寄り添う訓練を受ける必要があることを確認した。またカトリックの教育機関のかけがえのない役割にも言及。また、課題として、効果的でなく、生き生きとしていないことが多い召命への取り組み、とくに要理教育に関して、小教区の役割を再考する必要が指摘された。

 移民、性的虐待、”使い捨て文化”に関する若者の現実に関する記述も盛り込まれた。とくに、性的虐待に関しては次のように呼びかけた-「そうした虐待が繰り返されることのない、厳格な予防策の実施を固く約束する。まず、指導と教育の役割を担う人物の選定と編成から始める」。

 第1部では、このほか、芸術、音楽、スポーツについても、司牧の手段としての観点から言及されている。

第2部「”彼ら”の目は開かれた」

 第2部ではまず、若者たちを、主が自らを現わされる「聖書に基礎を置いた(神学的な)場」である、というシノドスの認識を示したうえ、若者たちのおかげで、教会は「鈍重さと対応の遅さ」を振り払い、自らを刷新することができる、としている。

 さらに、「(宣教の)使命」は、確実な、持続する幸せをもたらす賜物であるがゆえに、若者たちにとっての「確かな羅針盤」であること、「使命」の概念は「召命」と密接につながっており、洗礼による召命は聖性への呼びかけであること、を指摘している。

 また、別の二つの側面-「使命」の発展における助けと若者たちの召命は、寄り添いと識別の二つの側面をもっていることにも触れている。

第3部「”彼ら”は遅滞なく、発つ」

 シノドスの司教たちが示した人物は、復活したイエスに最初に出会ったマグダラのマリア。すべての若者たちは、様々に異なる人生の展望を持つ者も含めて、神の心の内にある、とした。

 「ともに歩む」ことは、司教たちが第3部で強調した教会会議の推進力だ。司教たちは、世界各国・各地域の司教協議会に対して、具体的に司牧面での課題解決を進める目的を持って、識別の手順を踏み続けるように促した。 “Synodality”の定義として示されたのは、(宣教の)使命を果たすための一つのスタイル-「私」から「私たち」に進むように、そして私たちの顔、感受性、素性、文化の多様性を考えるように、私たちを強く促すことだ。

 会議で繰り返された要望として、司教区と小教区の指導者たちが若者たちと若者たちのためにする訓練と実行を適切なものとするのを助ける各国レベルの「召命の要点についての若者司牧の指針」の取りまとめ、があったことも示された。

 また、若者たちが性の賜物を見出すために、彼らと歩みをともにする、家庭とキリスト教共同体の重要性も指摘され、現在の文化的な状況の中で「性に関するキリスト教的洞察のすばらしさ」を彼らに伝えることの難しさも、同時に示された。そして、「新たな人格形成の道の開発に具体的につながるような適切な方法」を見出すことが緊急の課題だ、としている。

 最後に、最終文書は、このシノドスで出された様々な課題は召命の推進力、聖性への招きとなったとし、「召命の様々な相違は、聖性への唯一の、普遍的な招きに集合される」と述べた。迫害に遭っても、福音への信仰を守るために命を捨てることもいとわない若者たちの聖性を通して、教会はその霊的熱情と使徒的活力を新たにすることができる、と強調している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2018年10月28日