・シノドス第3週:アフリカの移民・難民-欧州のキリスト教徒の良心はどうなった

(2018.10.18 VaticanNews Russell Pollitt, SJ)

*バチカンに「若者」専門の部署の設置、「女性シノドス」の開催の提案も

 「若者シノドス」第三週の18日の定例会見では、ゲスト発言者としてエチオピアの枢機卿が移民・難民問題について語った。

  会見冒頭のバチカン広報部門のパオロ・ルッフィーニ長官の説明では、シノドスが若者たちあての手紙をまとめることになり、司教や若者などの代表による起草委員会が設置されたことなどが発表された。

 また18日の全体会議で議論された主な内容として、次のような説明があった。

 若者たちが聖書を読むのを助けることの重要性、信仰を行動で示すことと共同体社会の重要性、欧米で断食の意味を改めて認識する必要性など。女性の役割についても再び議論され、一般社会と教会で同等の役割が与えられるために、教会が文化的な変容を遂げる必要があること、さらに、「女性」に関するシノドスを開くべきこと、さらに、バチカンに若者たちのため評議会ないしは部署を設置し、トップは既存の部署と同等の権限をもち、女性も重用される必要があること、なども指摘された、との説明があった。

 アフリカも大きく取り上げられ、持続的な発展が特に強調された。持続的発展の欠如が移民・難民の発生につながる。教会は常にこの問題に対処したり、全体的な問題に対処できないとしても、発展の形に注意を払い、この地域の人々に役立つものを捜す必要があるとする意見が出た。現代の”奴隷”の問題も、世界のすべての国々に関わる問題として議論された。

*移民・難民の原因は、若者たちを巻き込む戦争、武器取引、資源の搾取

  ゲスト発言者としてこの日の会見に出たエチオピアのBerhaneyesus Demerew Souraphiel枢機卿は、アフリカにおける移民・難民の問題を取り上げ、若者たちがとくに影響を受けている、と指摘したほか、国際的な武器取引の問題がシノドスで話されていないことに不満を示した。「悲しいことですが、現在の移民・難民発生の原因は戦争にある。子供たちも武器取引に使われています。アフリカの多くの若者たちにとって、シノドスで皆さんが多くの時間をさいて科学技術や他の事を心配する前に、どうやって生き残るか、が問題なのです」と訴えた。

 また枢機卿は、アフリカに豊富にある鉱物資源-特に、コンゴで産出する貴重な鉱石であるコロンバイト-タンタライト-の搾取についても言及し、この採掘のために村々や住民たちが立ち退きを強制されている実態を説明。「若者たちもその犠牲となっているのです」と語った。

 そして、アフリカの人々の欧州での扱われ方を嘆き、「欧州の人々がアフリカに気安く行けますが、アフリカの人々は欧州でそのようには扱われない。欧州のキリスト教のルーツはどこに行ったのでしょう?キリスト教がもとになった生き方はどこにあるのですか?」と問いかけ、「よその人々を受け入れるのが、キリスト教的価値観、キリスト教徒の義務でしょう」と強調。移民・難民の受け入れを拒否する政府の政策に関しても「キリスト教徒の良心が問われている」と指摘した。

*霊的交わりの重要さ

 会見で、イタリアのマッテオ・マリア・ズッピ大司教は、今シノドスの印象を、霊的な交わりの素晴らしい体験、聴くことの重要さ、と表現し、それが議論の足並みをそろえ、考えを絞るのに役立っている、と述べた。また、教会が前進しようとすれば、教皇フランシスコが提唱されている霊的交わりが成功のカギとなること、聖職者主義、民族主義から脱することを希望するなら、霊的交わりを求めることだ、と語り、教会はすべての人に手を差し伸べるのを希望しているから、すべての人に話しかけ、すべての人と話す。霊的交わりは、教会の真のあり方だ、と述べた。

*預言的な教会・・全教会挙げて、環境回勅の実行を

 教皇庁の教育科学部門で経済を教えているシスター・アレッサンドラ・スメリーリは会見で、司教たちが話をよく聴いており、それは決して形だけでないことを会議の印象として語り、「若い人たちへの本当の愛を感じました」と述べた。また、自分が預言的な教会を理想に描いている、とし、経済と環境は同じ値を持っていること、地球の叫びを聴かずに若者たちや貧しい人たちの叫びを聴くことはできないこと、を指摘。さらに、「私たちが環境に配慮しないなら、新たな貧困を作り出すことになり、貧困の犠牲になるのは若い人たちです」と訴えた。そして、全教会が環境回勅「ラウダ―・ト・シ」を実行するなら、世界は今と違ったものになるでしょう。回勅は、貧困と人間の苦しみに関わる多くの課題を扱っています」と強調した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2018年10月19日