・「聖職者による性的虐待はアフリカでも深刻、女性は既に貢献」と女子修道会指導者が記者団に語る(Crux)

(2019.2.23 Crux Editor John L. Allen Jr.

 ローマ発ーナイジェリアの修道女が23日、現地で”性的虐待サミット”を取材中の記者団に対して、聖職者による性的虐待の犠牲者の相談相手としての直接の経験をもとに「この問題はアフリカや途上国の問題ではない」とする一部の司教などの主張を全面否定、「この問題がこれまでとても深刻だった。そしてそれは、いまだに続いています」と訴えた。

 語ったのは、ナイジェリアのシスター、ベロニカ・オペニボ。Society of the Holy Child Jesusの初のアフリカ人指導者であり、世界の女子修道会の指導者たちの傘下にあってローマに本部を持つ国際修道会総長連盟(UISG)の一員だ。

 「おそらく、あなた方の多くと同じように、沢山のアフリカとアジアの人々がこのように言うのを私は聞いていますー『アフリカとアジアの国ではこれは問題になっていない。ヨーロッパと米国、カナダ、オーストラリアの問題だ』と。それは事実に反します。私は九年間、性教育の分野でナイジェリア中で働き、多くの人々から話を聴き、相談を受けました。その経験から言えるのは、貧困、病気、戦争、暴力が南の国々のいくつかで問題になっていることが、性的虐待について過小評価したり、無視したりしていい、ということにはならない、ということです」とシスターは語った。

 米国のボストン・カレッジで教会司牧と社会福祉で修士号をとった彼女は、性的虐待スキャンダルの深刻さを強調するのに躊躇することはなかった。「イエス・キリストに倣う者として透明性がその使命の保証であるべき時に、聖職者による性的虐待は、教会の信頼性を貶めています… どうやって聖職者の教会が沈黙を続け、残虐な行為を隠蔽し続けてきたのでしょう?」と問いかけ、「沈黙し、加害者たちの心の秘密を持ち運び、虐待を引き延ばし、加害者を常に転任させるというのは、考え難いことです」と無視、隠ぺいを続けて来た関係者を強く批判。

 さらに「自分自身の凡庸さ、偽善、そして自己満足が、このような不名誉で恥ずべき場所ー教会としての自分自身に至らしめたことを、私たちは認識せねばなりません」と自省したうえで、司教たちが“zero tolerance(一切の妥協を認めない厳しい措置)政策をとるよう強く求め、「必要な措置をとり、性的虐待に関してzero tolerance を堅持することで、私たちは虐げられた人々を解放できる」とその必要性を強調した。

 そして、問題の一つとして、聖職権主義を指摘し、それが「ローマでも、どこにいる時でも、私を心配させるのは、最も若い神学生たちが訓練を受ける最初の時から、他の誰よりも特別な存在として扱われ、その地位を喜ばせるようにしていること」と警告。問題の一部として「犠牲者に対する加害者の立場を優先するような聖職権的な心理」を指摘し、「若い時に、今になって明らかにされるような過ちを犯した彼らのことを悲しく思います… しかしそれよりも、何年も繰り返された違反行為について場違いの恥辱と罪の意識をもって過ごしてきた数多くの犠牲者たちを思って、私の心は張り裂けそうです」と悲しみを訴えた。

 この関連で、彼女は、教皇フランシスコが性的虐待がもたらした危機に対する気持ちをはっきりと改めたことを称賛し、「チリの司教団が性的虐待で大きな問題を起こしたことへの教皇の対応について書かれた多くの記事を、大きな関心をもって読みました-訴えの否定から、罪を犯し、それを隠蔽したことへの怒り、司教たちの辞表の受理にいたるまで、です… 真のイエズス会士として、識別し、考えを変えるに十分な謙虚さをもって、謝罪し、行動を起こされた兄弟であるフランシスコに対して、深く敬意を表します。これは、私たち全員が模範とすべき行為です」と力説した。

 彼女の報告の後で、ドイツのミュンヘン教区長で同国司教協議会会長であり、教皇の主要な顧問でもあるラインハルト・マルクス枢機卿の意見陳述が予定されていたが、枢機卿はそれに先立って、性的虐待の被害者団体「Ending Clergy Abuse」を代表する16人と会談し、90分に及ぶその内容について、教皇に報告した。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年2月23日