・「中国との暫定合意は私が署名、司教任命は近い将来、教皇の”専管事項”に」‐教皇が機中会見で

(2018.9.27 「カトリック・あい」)

教皇フランシスコは25日、バルト三国訪問を終えて帰国する機内で記者会見し、中国との暫定合意をはじめ、聖職者による性的虐待問題などについて質問に応えた。

(2018.9.26 VaticanNews  Alessandro De Carolis)

中国との暫定合意についての教皇の見解が、機中会見で記者団が最も関心の高いテーマだったが、教皇は、このほかに、訪問されたバルト三国のアイデンティティの守り、軍備への批判、そして聖職者による性的虐待についても答え、特に聖職者の性的虐待については「まったく醜いとしか言いようがない」と改めて慨嘆した。

 機中会見で、教皇は、今回の訪問先となったバルト三国について、もっと質問をしてくれるように促した。現地の記者団の質問に対する答えでは、ご自身の考えが十分に表現できていないと考えたからだ。リトアニア、ラトビア、エストニアの「三姉妹」は、過去において大きな傷を負い、現在は西欧を向いているが、東欧にルーツを持ち、そして教皇の望む未来を希望をもって見ているのだ。

国のアイデンティティーを守るために、攻撃的でない”守りの集団”を

 それは、教皇フランシスコがモザイクを組み立てているようだった。まず、教皇は、三国訪問中に毎日、実際に言われていたように、バルト三国のそれぞれのアイデンティティー-侵略者たちによって、余りにもしばしば踏みつけにされてきたもの-を持ち続けるように、と強調した。そして、国もアイデンティティーは、過去には、独裁者に対する盾として使った人々によって守られたが、今日では、文化、信仰、芸術の伝統すべてを若者たちに伝える義務を負った年配者たちが守っている、と語った。
 関連して、暴力と武器取引による犠牲者に捧げられたビルニウスの博物館にある拷問室を見学した時のことを思い起こし、「自分の国を守ることは”法に適ったこと”であり、大切なこと」としつつ、「国家は、道理をわきまえ、攻撃的でない、defensive army(守りの集団、軍)を心掛けるべきです」と強調した。また、バルトの国々もその出入りに関わっている移民問題について、「忍耐」の原則を指摘し、新たに選ばれた国の指導者たちが「歓迎」の価値をどの様に認識しているかについて言及した。

中国との暫定合意ー合意には常に苦痛が伴うが、中国の信徒は教皇を支持

 先日発表されたバチカンと中国の司教任命に関する暫定合意に関しては、様々な批判の声が出ており、「バチカンは教会を中国に『売り渡そうとしている』のだ」という非難もある。これについて教皇は、暫定合意は「私自身が署名しました。私にその責任があります」と語り、「何年もの間、隠れるように」して生きてきた人々、今回の合意の重要性を理解しない人々のために、祈るよう求めた。
 また、これまで中国との交渉に当たってきたパロリン国務長官など担当者の「忍耐」と「知恵」を称え、教皇の承認を得ずに司教になっていた人々を(司教として追認できるかどうかの)評価は教皇自身が行ったこと、さらに、(中国における)司教の任命は、それほど遠くない将来に、教皇の exclusive concern(専管事項)となるだろう、との見方を示した。
 さらに、教皇は、長い間、試練の中を生きてきた中国のカトリック信徒たちの「偉大な信仰」を称えるとともに、「合意というものには常に苦痛が伴います」と述べ、あるバチカン外交官の有名な言葉が、多くの司教たちに教皇との親密さを示すようにさせた、という逸話を引き合いに出して、中国の信徒たちも、伝統的な教会であるなしにかかわらず、自分たちの教皇への連帯を示す書簡に署名(サイン)したことを明らかにし、「それは、私にとっての印(サイン)でした」と語った。

性的虐待は、どうしようもなく醜いが、今の基準で測るべきでないことも

 聖職者の性的虐待について、記者から、訪問中にエストニアで教皇が若者たちに語られたことに関連した質問がされたが、教皇は「それが、たとえ、たった1人の司祭がそのような犯罪を犯したとしても、『とてつもなく醜い』ことです」としたうえで、「性的虐待はどこにでも起こり得ますが、教会で起こった場合、『子供たちを神のところに届ける』べき責務を負った司祭によるものだけに、(一般社会の場合よりも)ずっと悪い」と述べた。ただ、私たちは過去の世代とは異なった感覚を持っており、今の正義の基準や”解釈学的”な尺度で、過去のことを測る過ちを犯すべきではない、とも指摘。こうした犯罪は「隠ぺい」されたが、「教会はそれを知るようになった時」(適切に)対応した、と述べた。(「カトリック・あい」が翻訳・編集)

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2018年9月27日