・「既婚男性の司祭叙階、アマゾン・シノドスで司教たちが求めれば、教皇はお認めに」と独有力枢機卿(Crux)

( 2019.6.5 Crux  

 ローマ発-教皇フランシスコの神学面での助言者とされているドイツのワルター・カスペル枢機卿がこのほど、既婚男性の司祭叙階問題に触れ、今年10月にローマで予定されるアマゾン地域の国々の教会代表による司教会議(アマゾン・シノドス)で出席者たちが教皇に要請すれば、教皇はお認めになるだろう、との見通しを明らかにした。ドイツの新聞 Frankfurter Rundschauのインタビューで語り、その内容はドイツ司教団のウエブサイトにも掲載されたものだ。

 その一方で枢機卿はインタビューで、女性の叙階については、これまでの千年にわたる教会の伝統を覆すものであり、「助祭叙階も含めて問題外」としながら、「カトリック教会は、女性なしでは崩壊してしまうだろう」と述べ、教会における女性の役割について重視する姿勢を示した。

 枢機卿は「司教たちが既婚者-viri probati(相応しい男性)を叙階することに、互いに合意することで賛成すれば、教皇が受諾されるだろう、というのが私の判断です」とし、「司祭の独身制は、協議ではありません。変更不能な慣行でもない」と明言した。そして、「私は個人的には、イエス・キリストの理念を守る約束を果たす生き方として独身制を守ることを強く支持しますが、既婚男性が特別な状況において司祭職を担うことを排除するものではありません」と述べた。

 アマゾン・シノドスでは既婚男性の叙階の問題が話し合われるものとされており、教皇は、今年1月にパナマから帰国途上の機内会見で、この問題について「私は、任意的な独身制を認めることには賛同しません。絶対に」とする一方で、南アフリカのフリッツ・ロビンガー司教の著書を引用して、神学者たちは「太平洋の島々のような遠隔地で、ミサを司式し、告解を聴き、病者に塗油をすることに役割を限って、年配の既婚者を司祭に叙階する」可能性について研究すべき、と思うとし、「この問題は祈り、神学者たちによって議論される問題であり、個人的にはまだ十分に熟考してはいない」とも語っていた。

 この機内会見ではさらに、司祭になる前にまず助祭として叙階される必要があることを取り上げて、「私の判断は、助祭職の前に任意の独身制はいけない、ということです。それは認めません。この判断で神の前に立っているとは感じません」とも述べていた。

 カスペル枢機卿は、女性の叙階に関しては、「今日の女性たちは、聖書に書かれている女性助祭がした事の十倍以上の事をしています」と語った。教皇は2016年に、初代教会で女性助祭が果たした歴史的役割について研究する委員会を設置したが、教皇によれば、研究結果はまだ出ていないという。枢機卿は「新約聖書に基づけば、キリスト教が始まってから最初の千年においてカトリック教会だけでなくすべての教会で途切れることのない伝統がありました。それによれば、叙階と聖別は男性のみに任すこととなっています」と説明した。

 また枢機卿は、現在のところ女性の助祭叙階の問題に関しては「ほとんど動きがない」が、女性は教会で多くの事をしており、彼女たちの働きなくしては、どの司教区も、小教区も、「明日にはつぶれてしまう」ことを認識して事に当たるべきだ、との考えを述べ、「私にとって、現在では、女性が司牧支援、教師、慈善活動、教理指導、神学の研究、教会の管理運営など、女性助祭(注:するであろう)仕事の十倍の仕事をこなしていることの方が、ずっと重要だ、と思われます」と強調した。

 そして、教会は、もっと指導的な役割を与えてもらいたい、という女性たちの「正当」な要求に応えるべきであり、可能な限り速やかに具体的な措置をとる必要がある、としつつ、ドイツの教会で5月に行われた女性の役割拡大を求めて一週間にわたって教会を離れるよう呼びかける“Maria 2.0”運動のようなものでは、解決されない、との指摘した。

翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2019年6月7日