・「”愛の世界的な大感染”で新型ウイルスに打ち勝とう!」タグレ福音宣教省長官が訴え

(2020.3.26 VaticanNews)

 新型コロナウイルスの世界的な大伝染の危機に、どう対応するか。今月、マニラ大司教からバチカンの福音宣教省長官に就任したアントニオ・タグレ枢機卿(カリタス・インターナショナル会長)が26日、バチカン放送のインタビューに応じ、以下のメッセージを世界の信徒たちに向けて発出した。

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親愛なる姉妹、兄弟の皆さん

 私たちは、新型コロナウイルスによる emergency(緊急事態)に直面しています。 emergencyとは、ラテン語の「emergere」からきた言葉で、「私たちの前で発生し、注意を要する、予期せぬ事態」を意味します。緊急事態そのものは私たちにとって新しいものではありません。私たちは毎年のように、地震、台風、洪水、干ばつ、疾病を経験していますが、多くの場合、特定の場所と人に限定されています。

 しかし、今回の新型コロナウイルスの緊急事態は pandemic(世界的な大感染)です。ギリシャ語の「pan」は「すべて」を意味し、「demo」は「人々または人口」を意味します。 pandemiaは、すべて、あるいは、ほとんどすべての人に影響を与えます。 新型コロナウイルスは全般的、あるいは普遍的な緊急事態だと言えます。私たちのほぼすべてに影響を与えます。私たち全員がこれに対応することが求められているのです。

 緊急事態が発生している時、私たちは本能的に、まず、自分自身、家族、身近な人を考えます。私たちは彼らを守るために、出来ることは何でもしようとします。このような対応は、基本的に良いことですが、自分たちのことだけを考えてしまうことのないように、注意する必要があります。

 私たちは、他の人々が必要としていることに、私たちと同じことを必要としている人々に、目をつぶらないようにせねばなりません。私たちの不安が、隣人への真の思いやりを消すことのないようにすべきです。緊急事態に、人の本心が現れます。すべての人々(パンデミア)に影響を与える緊急事態から、思いやり、同情、そして愛の世界的な大感染が起きることを、私たちは願います。

 突然噴出する緊急事態の危機は、同じように、希望の”噴出”によってのみ対処することができます。ウイルスの世界的な大伝染は、キリスト教的な慈愛の世界的な”伝染”を生み出さねばなりません。後世の歴史は、私たち今生きている世代を、無私の愛の力を基準に判断するでしょう-人類に共通したこの緊急事態が、無私の愛を作り出し広げるのか、それとも失敗するのか。私たちは、新型コロナウイルスの感染と戦う英雄的な人々に感謝します。彼らの愛と勇気は、ここ数週間の癒しと希望の源になってきています。

 「ウイルスに汚染されないように、そしてウイルスが広がらないように、手を洗うべきだ」と専門家たちは言います。イエスの裁判で、総督ピラトは水を取り、群衆の前で手を洗って言いました。「この人の血について、私には責任が無い。お前たちの問題だ」(マタイ福音書27章24節)と。

 私たちは手を洗うべきですが、ピラトのような意味で洗うべきではありません。貧しい人々、高齢者、失業者、難民、ホームレス、医療提供者、そしてあらゆる人々、神の被造物、将来の世代に対して、私たちは自分の手から、自分の責任を拭い去ることはできないのです。

 私たちは聖霊の力を通して祈ります-皆に共通する緊急事態に直面して、全ての人への真の愛が全での人間の心に湧き上がりますように。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2020年3月26日