・「シノドスは”店じまい”するか”現実的になるか”いずれかを選んで」‐被害者グループ訴え(Crux)

  (写真は、「若者シノドス」が開会した3日、バチカンの聖ペトロ広場前で抗議する女性たち=Credit: Claire Giangravè)

Groups feeling excluded tell Synod of Bishops to ‘close shop or get real’

 ローマ発=1か月にわたる「若者シノドス」が3日始まり、会場の扉が締められると、会議から排除されたように感じている女性や性的虐待被害者の複数のグループが、会場外の聖ぺトロ広場で集会を開き、店じまいするか、それとも現実的になるのか」と声を上げて訴えた。

 「この役に立たないシノドスを閉めるか、さもなければ現実に合わせて変えてもらいたい。性的虐待を隠ぺいしている司教たち。私たちはそれが誰だか知っています。辞任すべきだ」。2011年に司祭に性的虐待を受けたというアレッサンドロ・バッタグリアはCruxにこう語った。

 彼は、シノドスの会場となっている聖ペトロ大聖堂から石を投げれば届く距離にあるサンタンジェロ城で開かれたイタリアの性的虐待被害者ネットワーク「Rete L’Abuso」の座り込み集会に参加していた。集会は、世界中から高位聖職者たちが集まるシノドスの開催日の3日に会わせて開かれた。

 この日はシノドスの会場の外でも、別のグループが集会を開いたが、こちらは教会における女性の地位向上を求める女性たちの集まり。司教たちや教皇の名指しで、女性の声に扉を開くように、と求め、「ノック、ノック!そこには誰がいるの?教会の(信徒の)半分以上(は女性なのに)!」と繰り返し歌った。

 シノドスに出席する全アイルランド代表のイーモン・マーチン=アーマー大司教と北アイルランドのドナル・マッケオウン=デリー司教は、会場に入る前に、彼女たちに挨拶して、短時間、集会に加わった。

 シノドスは総じて、会場の内外での喧騒の中で始まった、と言っていいだろう。

 バッタグリアによると、彼は15歳の時に、ミラノ郊外のロザーノの教会でマウロ・ガリ神父から性的虐待を受けた。彼の家族と教会の司祭たちがミラノ教区事務総長だったマリオ・デルピニ師(現ミラノ大司教)にこのことを知らせたが、ガリはわずか12マイル離れた教会に異動させられ、そこでも自由に若者たちに接することができた。「これが犯罪行為でないなら、そう言ってもらいたい。僕は性的虐待の犠牲者なのです」と訴える。

 結局、ガリはイタリアの裁判所で禁固6年4か月の有罪判決を受け、服役することになったが、バッタグリアの怒りは収まらない。ガリの性的虐待を事実上、隠蔽し、他の教会へ移動させることで済まそうとしたデルピニ師は、責任を取ることもせずにミラノ大司教に昇進している。「僕にしてみれば、これは全く馬鹿げた話です。どのような勇気があって、このようなことをしているのでしょう?」「僕たちが今日、ここに来たのは、『言ったことは守ってください、zero tolerance(違反は厳正に裁く)と言われたことを実行してください』と教皇フランシスコにお願いするためなのです」。

 現在22歳のバッタグリアは毎日曜にミサに出て育ち、性的虐待に遭うまで、侍者を務め、聖歌隊に属し、教会と密接に関係を持つボーイ・スカウトの隊員としても活動していた。だが「彼らは僕をひどく傷つけました。司祭など誰も信じない」「このようなカトリック教会を信じません。教会はあまりにも長い間、変わることがない。僕が目にしているのは犯罪的でマフィアのような結束の固い集団でしかないのです」と嘆いた。「僕たちの命は大切ではないのでしょうか?はっきり言って僕の命は大切ではありません」。彼は4回も自殺しようとした、という。

 もう一人の性的虐待の被害者、アルトゥーロ・ボレリは、被害者たちが連帯しで声を上げるように呼びかけている。正義が”万能の薬”だーと。彼は、ナポリのシルベリオ・ムラ神父から他の子どもたちとともに性的虐待を受けた。「この運動を僕たちは教会のためにやっているのです。教会に逆らっているのではない」とCruxに語り、シノドスに集まった司教たちに、行動する、と言ってくれるよう、強く求めている。

 イタリアの性的虐待被害者ネットワーク「Rete L’Abuso」は3日朝、ローマの Radical Party 本部で会議を開き、イタリア政府に、聖職者による性的虐待で政府も共犯関係にあると訴えるとともに、性的虐待と隠ぺいについて徹底的に捜査するよう要求することを決めた。同ネットワークの代表は「これは最終段階です。イタリア政府が土壌を作った犯罪を検証するのは裁判官の判断に掛かっているのです」「私たちは、その対象に、小児性愛者、司祭、司祭以外すべてを含むよう求めます」と訴えた。

 イタリアと異動先のアルゼンチンで聾学校生たち性的虐待をしたとして告訴されているニコラ・コラッディ神父の被害者たちも、イタリア以外の性的被害者のグループの代表と共に、この会議に参加した。会議の主宰者は、教皇フランシスコに口先だけではなく、現実の事態を改めるよう主張した。「教皇のプロパガンダは、単なるプロパガンダです」とイタリアでの性的虐待被害者に強い関心を持つ弁護士のマルコ・ベラジーニは語っている。「教皇は一方で約束をし、また一方で他のことをしている」。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

 

 

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2018年10月5日